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嬉しい誘い
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磯山先生たちの部屋には今回衣装の提供をしてくださった蓮見さんと浅香さんが挨拶に来られていた。
浅香さんにはともかく、蓮見さんの姿に尚孝さんは緊張しているようだったけれど、それ以上に磯山先生の隣に座る和服美人を見て目を丸くしていた。
隣にいるのが絢斗さんなのかと恐る恐る聞いたのは、万が一間違っていた場合のためだろう。尚孝さんらしい。でも磯山先生が絢斗さん以外の人とあんなにピッタリと寄り添うわけがないから、絢斗さんでしかありえない。
「そう! 私だよ」
磯山先生が答える前に絢斗さんが元気よく返事をした。そのことにホッとしつつ、尚孝さんは
「あの、じゃあ昇くんの隣にいるのは直くんですか?」
続けて質問した。
「せいかーい! 周平くんと敬介くんが綺麗なドレスとお着物を用意してくれたから着替えたんだよ」
絢斗さんの嬉しそうな声に直純くんは少し恥じらいながらも笑顔を見せる。
色柔らかなピンクベージュのドレスは、色白の直純くんによく似合っている。
きっとこれは昇くんが選んだものだろう。
そして、絢斗さんが着ている着物も磯山先生が選んだものに間違いない。
いいなぁ、本当に羨ましい。
もし、尚孝さんのドレスか着物姿を見られたら……。
綺麗にドレスアップした二人を見ているからこそ、少し期待してしまう。
「絢斗さんも直くんもすごく良く似合ってます。磯山先生も昇くんもお二人の可愛い姿を見られて幸せですね」
二人が女性の姿に着替えをした理由を聞いて、笑顔を浮かべた尚孝さんは磯山先生に言葉をかけた。
「ああ、本当にそう思っているよ。だから、谷垣くんも志摩くんを幸せにしてはどうかな?」
磯山先生の口から、まさかの言葉が出てきて驚いて先生に視線を向けると、ニコッと優しい笑顔を向けられる。
まさか磯山先生が私の援護をしてくれるとは……。さすが多くの教え子を持つ優秀な弁護士だ。
追加で絢斗さんからも浅香さんも着替えをするから一緒に行こうと援護射撃が入った。
「えっ? でも、僕が着替えなんて……」
不安そうに私に意見を求めるが、私の意見は一択だ。
「尚孝さんが着替えをされるなら、私も見てみたいです。きっとドレスでも着物でも似合うと思いますよ」
私の言葉に照れたように笑い、そっと腕を掴んでくる。
ああ、もう本当に可愛い。
「もう……唯人さんにそんなこと言われたら、断れないじゃないですか……」
「じゃあ、断らないでください。楽しみにしてますよ」
そうして、尚孝さんは着替えを了承してくれて、絢斗さんと浅香さん、そして直純くんと共に部屋を出ていった。
「志摩くん、嬉しそうだな」
「ええ。まさか、尚孝さんまで着替えてくださるとは思っていなかったものですから」
「ははっ。最初から君が頼めば着替えていたと思うよ。なぁ、周平くん」
「ええ。そうですね。志摩さん、期待しててください。ドレスと着物、どちらを選んでも素晴らしい姿が見られますよ」
「ありがとうございます。蓮見さんと浅香さんのおかげで今日の結婚式が華やかなものになりますよ。でも、この分だと、絢斗さんが次々に着替えにスカウトしてしまうんじゃないですか?」
「大丈夫ですよ。どれだけスカウトしても余るほど用意していますから」
確かに搬入されたドレスと着物の数はとんでもない量だったな。
「伯父さん……あの、この人は……」
私たちの話が落ち着くのを待って昇くんが磯山先生に声をかけた。
そうか、昇くんはまだ蓮見さんには会ったことがなかったのか。
蓮見さんが志良堂教授のゼミ出身で今はオートクチュールデザイナーをしていて、直純くんのドレスを作った人だと、磯山先生が説明すると、目を丸くして驚いていた。
あの繊細で美しいドレスを作っているのが、この強面の男性とは想像つかないもの無理はないかもしれないな。
磯山先生からちゃんとお礼を言うようにと言われて、昇くんは素直に丁寧なお礼を告げる。
そんな昇くんを蓮見さんは気に入ったようだ。
「いや、可愛い子に私のドレスを着こなしてもらって嬉しいよ。あの子くらいの年の子がドレスを着ている姿はあまり間近では見られないからね。私にとってもいい経験になったよ。あの子くらいのサイズの服も最近増やしているから、ぜひ店舗にも遊びに来てくれ」
これが社交辞令でない証に、蓮見さんはちゃんと昇くんに名刺を渡していた。
まだまだ彼には高い買い物かもしれないが、将来的はかなりV.I.Pな顧客になることは間違いない。
なんせ、磯山家のサラブレッドだからな。
そんな光景を微笑ましく見ていると、私のスマホに連絡が入った。
浅香さんにはともかく、蓮見さんの姿に尚孝さんは緊張しているようだったけれど、それ以上に磯山先生の隣に座る和服美人を見て目を丸くしていた。
隣にいるのが絢斗さんなのかと恐る恐る聞いたのは、万が一間違っていた場合のためだろう。尚孝さんらしい。でも磯山先生が絢斗さん以外の人とあんなにピッタリと寄り添うわけがないから、絢斗さんでしかありえない。
「そう! 私だよ」
磯山先生が答える前に絢斗さんが元気よく返事をした。そのことにホッとしつつ、尚孝さんは
「あの、じゃあ昇くんの隣にいるのは直くんですか?」
続けて質問した。
「せいかーい! 周平くんと敬介くんが綺麗なドレスとお着物を用意してくれたから着替えたんだよ」
絢斗さんの嬉しそうな声に直純くんは少し恥じらいながらも笑顔を見せる。
色柔らかなピンクベージュのドレスは、色白の直純くんによく似合っている。
きっとこれは昇くんが選んだものだろう。
そして、絢斗さんが着ている着物も磯山先生が選んだものに間違いない。
いいなぁ、本当に羨ましい。
もし、尚孝さんのドレスか着物姿を見られたら……。
綺麗にドレスアップした二人を見ているからこそ、少し期待してしまう。
「絢斗さんも直くんもすごく良く似合ってます。磯山先生も昇くんもお二人の可愛い姿を見られて幸せですね」
二人が女性の姿に着替えをした理由を聞いて、笑顔を浮かべた尚孝さんは磯山先生に言葉をかけた。
「ああ、本当にそう思っているよ。だから、谷垣くんも志摩くんを幸せにしてはどうかな?」
磯山先生の口から、まさかの言葉が出てきて驚いて先生に視線を向けると、ニコッと優しい笑顔を向けられる。
まさか磯山先生が私の援護をしてくれるとは……。さすが多くの教え子を持つ優秀な弁護士だ。
追加で絢斗さんからも浅香さんも着替えをするから一緒に行こうと援護射撃が入った。
「えっ? でも、僕が着替えなんて……」
不安そうに私に意見を求めるが、私の意見は一択だ。
「尚孝さんが着替えをされるなら、私も見てみたいです。きっとドレスでも着物でも似合うと思いますよ」
私の言葉に照れたように笑い、そっと腕を掴んでくる。
ああ、もう本当に可愛い。
「もう……唯人さんにそんなこと言われたら、断れないじゃないですか……」
「じゃあ、断らないでください。楽しみにしてますよ」
そうして、尚孝さんは着替えを了承してくれて、絢斗さんと浅香さん、そして直純くんと共に部屋を出ていった。
「志摩くん、嬉しそうだな」
「ええ。まさか、尚孝さんまで着替えてくださるとは思っていなかったものですから」
「ははっ。最初から君が頼めば着替えていたと思うよ。なぁ、周平くん」
「ええ。そうですね。志摩さん、期待しててください。ドレスと着物、どちらを選んでも素晴らしい姿が見られますよ」
「ありがとうございます。蓮見さんと浅香さんのおかげで今日の結婚式が華やかなものになりますよ。でも、この分だと、絢斗さんが次々に着替えにスカウトしてしまうんじゃないですか?」
「大丈夫ですよ。どれだけスカウトしても余るほど用意していますから」
確かに搬入されたドレスと着物の数はとんでもない量だったな。
「伯父さん……あの、この人は……」
私たちの話が落ち着くのを待って昇くんが磯山先生に声をかけた。
そうか、昇くんはまだ蓮見さんには会ったことがなかったのか。
蓮見さんが志良堂教授のゼミ出身で今はオートクチュールデザイナーをしていて、直純くんのドレスを作った人だと、磯山先生が説明すると、目を丸くして驚いていた。
あの繊細で美しいドレスを作っているのが、この強面の男性とは想像つかないもの無理はないかもしれないな。
磯山先生からちゃんとお礼を言うようにと言われて、昇くんは素直に丁寧なお礼を告げる。
そんな昇くんを蓮見さんは気に入ったようだ。
「いや、可愛い子に私のドレスを着こなしてもらって嬉しいよ。あの子くらいの年の子がドレスを着ている姿はあまり間近では見られないからね。私にとってもいい経験になったよ。あの子くらいのサイズの服も最近増やしているから、ぜひ店舗にも遊びに来てくれ」
これが社交辞令でない証に、蓮見さんはちゃんと昇くんに名刺を渡していた。
まだまだ彼には高い買い物かもしれないが、将来的はかなりV.I.Pな顧客になることは間違いない。
なんせ、磯山家のサラブレッドだからな。
そんな光景を微笑ましく見ていると、私のスマホに連絡が入った。
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