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新たなサプライズ
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「それで、どうしてここに? しかも離れた場所に……」
僕の質問に伊月くんと甲斐さんは顔を見合わせて笑うとゆっくりと口を開いた。
「今日の新郎である貴船さんに頼まれたんだよ。一花さんの願いを全て叶えてやりたいって。それで一花さんが可愛がっているウサギのグリちゃんと、櫻葉邸で飼われているフランとでサプライズを仕掛けようと思って来たんだ」
「グリちゃんとフランくんでサプライズ? それって、貴船さん以外誰も知らないんですか?」
「貴船さん以外知らないよ。私たちが来ていることもね。そのためにものすごく早く来たんだ。なぁ、伊月」
「うん。僕たちは招待客のリストを貴船さんから教えてもらっていたから、尚孝くんが来るのわかってたんだ。だから久しぶりに会えるって楽しみで本当はメッセージを送ろうと思ってたんだよ」
「あ。そうだったんだ」
「だけど、僕たちが来るのを内緒にしてもらわないといけないから、隠し事するのは大変だろうって。慎一さんが」
さすが甲斐さん。すっかり僕のことも理解されちゃってる。
でも実際に、伊月くんたちがサプライズでやってくることを聞かされていたら、一花くんとの内緒の約束もあるし、隠し事だらけで普通ではいられなかったかもしれないな。
一花くんの約束を守るだけで精一杯なんだから、これ以上唯人さんに隠し通せる気がしない。
「ありがとう。気遣ってくれてよかったよ」
「そうかなって僕も思ってたんだ。とりあえず結婚式が全て無事に終わるまでは僕たち近づかないようにしていた方がいいかもね。近くにいたらつい尚孝くんって呼びかけちゃいそうだし」
「ははっ。確かに。じゃあ、今日は初対面ってことで……」
「うん! でも、本当会えてよかった。尚孝くんの元気な姿見られてホッとしたよ」
「ありがとう。心配させちゃったよね」
「でも、あの後すぐに尚孝くんが一花さんの専属の理学療法士になって頑張ってるって慎一さんが教えてくれたからホッとしてたんだよ」
「えっ?」
なんで? どこから知ったんだろう?
びっくりして甲斐さんに視線を向けると、僕の聞きたいことに気づいたのか悪戯な笑みを浮かべた。
「まぁ、これでもいろんなところに顔が利くからね。そういう情報は入ってくるものなんだよ」
「そう、なんですね」
なんか唯人さんと似てるかもな、甲斐さんって。
「ねぇねぇ、そういえば尚孝くん。恋人できたんだよね?」
「あ、うん。そうなんだ。いつか紹介したいって話したっきり、そのままになってたよね。今日一緒に来てるから後で紹介するね」
「楽しみにしてる!」
「あ、そろそろ部屋に戻らないと! 伊月くんたちのことは内緒にしておくね! あと、可愛いフランくんとグリちゃんがどんなふうに出てくるのか楽しみにしてるね」
招待客の皆さんへの誘導が終わったら一度帰ってくるって言ってたし、急がないと!
僕は急いで伊月くんたちの部屋を出て、そっとさっきの部屋に戻った。
多分唯人さんはまだ来てない。
だって部屋に僕がいなかったら絶対にスマホにも連絡があるはずだ。だけどスマホには何の連絡もない。
外で僕を探すような声もなかった。
よかった、間に合ったみたいだ。
すると持っていたスマホに振動がきた。
見ると伊月くんからだ。
<尚孝くんと久しぶりに話せて楽しかった。結婚式が終わったらまたゆっくり話そうね>
優しいメッセージと一緒に一緒に連れて来ていたフランくんとの写真が送られてきた。
可愛いな。さっきは寝てたのかな。それとも大事な話みたいだったから大人しくしてたんだろうか?
いずれにしても伊月くんと甲斐さんが育てた子ならきっと賢い子に決まってる。
ああ、ますます結婚式が楽しみになってきたな。
しばらくして唯人さんが戻ってきた。
「尚孝さん、長い時間待たせてしまってすみません」
「いえ。もう落ち着いたんですか?」
「ええ。しばらくはのんびりできそうです。磯山先生とご家族が到着されたので、一緒に挨拶に行きましょうか」
唯人さんに手を取られて廊下に出て一花くんたちの部屋とも伊月くんたちの部屋とも離れた部屋に向かい、外から声をかけ中に入ると、磯山先生ご家族と、浅香さんと蓮見さんの姿があった。
浅香さんと蓮見さんとはグリを譲り受ける話をしに銀座で会った以来だ。
相変わらず浅香さんはすごく綺麗だし、蓮見さんはやっぱり少し緊張する。
お二人と挨拶を交わしていると、磯山先生が私たちに声をかける。
自然と磯山先生に視線を向けると、なぜか磯山先生の隣に和服美人が寄り添っているのが見えた。
えっ? この人……誰?
しかもその隣にはドレス姿の美少女がいる。
えっ? まさか……。
私が言葉も出せずにその美人と美少女に見惚れていると、磯山先生から何か聞きたいことがあるかと尋ねられた。
だから恐る恐る尋ねてみた。
「あの……お隣にいらっしゃるのは絢斗さん?」
その質問に元気よく答えたのは磯山先生ではなく、その和服美人だった。
僕の質問に伊月くんと甲斐さんは顔を見合わせて笑うとゆっくりと口を開いた。
「今日の新郎である貴船さんに頼まれたんだよ。一花さんの願いを全て叶えてやりたいって。それで一花さんが可愛がっているウサギのグリちゃんと、櫻葉邸で飼われているフランとでサプライズを仕掛けようと思って来たんだ」
「グリちゃんとフランくんでサプライズ? それって、貴船さん以外誰も知らないんですか?」
「貴船さん以外知らないよ。私たちが来ていることもね。そのためにものすごく早く来たんだ。なぁ、伊月」
「うん。僕たちは招待客のリストを貴船さんから教えてもらっていたから、尚孝くんが来るのわかってたんだ。だから久しぶりに会えるって楽しみで本当はメッセージを送ろうと思ってたんだよ」
「あ。そうだったんだ」
「だけど、僕たちが来るのを内緒にしてもらわないといけないから、隠し事するのは大変だろうって。慎一さんが」
さすが甲斐さん。すっかり僕のことも理解されちゃってる。
でも実際に、伊月くんたちがサプライズでやってくることを聞かされていたら、一花くんとの内緒の約束もあるし、隠し事だらけで普通ではいられなかったかもしれないな。
一花くんの約束を守るだけで精一杯なんだから、これ以上唯人さんに隠し通せる気がしない。
「ありがとう。気遣ってくれてよかったよ」
「そうかなって僕も思ってたんだ。とりあえず結婚式が全て無事に終わるまでは僕たち近づかないようにしていた方がいいかもね。近くにいたらつい尚孝くんって呼びかけちゃいそうだし」
「ははっ。確かに。じゃあ、今日は初対面ってことで……」
「うん! でも、本当会えてよかった。尚孝くんの元気な姿見られてホッとしたよ」
「ありがとう。心配させちゃったよね」
「でも、あの後すぐに尚孝くんが一花さんの専属の理学療法士になって頑張ってるって慎一さんが教えてくれたからホッとしてたんだよ」
「えっ?」
なんで? どこから知ったんだろう?
びっくりして甲斐さんに視線を向けると、僕の聞きたいことに気づいたのか悪戯な笑みを浮かべた。
「まぁ、これでもいろんなところに顔が利くからね。そういう情報は入ってくるものなんだよ」
「そう、なんですね」
なんか唯人さんと似てるかもな、甲斐さんって。
「ねぇねぇ、そういえば尚孝くん。恋人できたんだよね?」
「あ、うん。そうなんだ。いつか紹介したいって話したっきり、そのままになってたよね。今日一緒に来てるから後で紹介するね」
「楽しみにしてる!」
「あ、そろそろ部屋に戻らないと! 伊月くんたちのことは内緒にしておくね! あと、可愛いフランくんとグリちゃんがどんなふうに出てくるのか楽しみにしてるね」
招待客の皆さんへの誘導が終わったら一度帰ってくるって言ってたし、急がないと!
僕は急いで伊月くんたちの部屋を出て、そっとさっきの部屋に戻った。
多分唯人さんはまだ来てない。
だって部屋に僕がいなかったら絶対にスマホにも連絡があるはずだ。だけどスマホには何の連絡もない。
外で僕を探すような声もなかった。
よかった、間に合ったみたいだ。
すると持っていたスマホに振動がきた。
見ると伊月くんからだ。
<尚孝くんと久しぶりに話せて楽しかった。結婚式が終わったらまたゆっくり話そうね>
優しいメッセージと一緒に一緒に連れて来ていたフランくんとの写真が送られてきた。
可愛いな。さっきは寝てたのかな。それとも大事な話みたいだったから大人しくしてたんだろうか?
いずれにしても伊月くんと甲斐さんが育てた子ならきっと賢い子に決まってる。
ああ、ますます結婚式が楽しみになってきたな。
しばらくして唯人さんが戻ってきた。
「尚孝さん、長い時間待たせてしまってすみません」
「いえ。もう落ち着いたんですか?」
「ええ。しばらくはのんびりできそうです。磯山先生とご家族が到着されたので、一緒に挨拶に行きましょうか」
唯人さんに手を取られて廊下に出て一花くんたちの部屋とも伊月くんたちの部屋とも離れた部屋に向かい、外から声をかけ中に入ると、磯山先生ご家族と、浅香さんと蓮見さんの姿があった。
浅香さんと蓮見さんとはグリを譲り受ける話をしに銀座で会った以来だ。
相変わらず浅香さんはすごく綺麗だし、蓮見さんはやっぱり少し緊張する。
お二人と挨拶を交わしていると、磯山先生が私たちに声をかける。
自然と磯山先生に視線を向けると、なぜか磯山先生の隣に和服美人が寄り添っているのが見えた。
えっ? この人……誰?
しかもその隣にはドレス姿の美少女がいる。
えっ? まさか……。
私が言葉も出せずにその美人と美少女に見惚れていると、磯山先生から何か聞きたいことがあるかと尋ねられた。
だから恐る恐る尋ねてみた。
「あの……お隣にいらっしゃるのは絢斗さん?」
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