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大事な計画を伝えよう

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<side唯人>

待ちに待った結婚式当日。
今日は大きなサプライズも控えているし気が抜けないが、今日さえ無事に終えればあとは尚孝さんとの長期休暇が待っている。土日を含めれば八日間も尚孝さんのことだけを考えていられるなんてこれ以上嬉しいことはない。

「唯人さん、どうですか?」

「とてもよくお似合いですよ。皆さんに見せるのが勿体無いくらいです」

「そんな……っ」

尚孝さんはお世辞だと思って照れているが、尚孝さんの体型に合わせて作ったオーダーメイドの礼服は、細部まで尚孝さんの美しさを引き出していて本当によく似合う。
普通の結婚式なら新婦の友人などの目を惹いて群がってくるに違いないから危険すぎて外には出せないが、今日の招待客は全員最愛持ちだから安心して連れて行ける。堂々と尚孝さんの美しさを見せびらかすことができるのは楽しい。

「今日は控え室で一人で待たせる時間も多々あると思いますが、仕事が終わったらすぐに戻ってきますから」

「いいんですよ。今日はなんと言っても貴船さんと一花くんの大事な結婚式ですから唯人さんが忙しいのはわかってます。だから僕のことは気にしないでください」

「尚孝さん……」

「でも、終わったら僕だけの唯人さんに戻ってくださいね」

「――っ!! ええ、もちろんです!」

本人には全くその気はないだろうが、尚孝さんの言葉に煽られる。
本当に私は尚孝さんには勝てないな。

会長のご自宅の駐車場に到着すると、まだお二人は来ていない様子。
その間にキャンピングカーの中に必要な荷物を詰め込んでおいた。

「旅行用の荷物は私たちの車に置いておいて、明日の昼前にこちらに戻ってきてから空港に出発しましょう」

「わかりました。唯人さんに任せていたら安心ですね」

私に全幅の信頼を寄せてくれていることに喜びを感じながら、すべての準備を整えた後で会長が一花さんを連れて駐車場にやってきた。

「志摩くん、今日も長距離の運転になるが頼むよ」

会長は少し申し訳なさそうに声をかけてくる。
確かにここから三時間ほどの道のりは普通に考えたら気疲れするし結構大変だろう。だが、隣に尚孝さんがいるだけで私にとっては快適で楽しいドライブになるのだから何も問題はない。

途中いくつかの休憩所で休むことを伝えて私たちは運転席と助手席にそれぞれ乗り込んだ。

「唯人さん。なんでも言ってくださいね。僕、喜んでサポートしますから」

「尚孝さんがそばにいてくれるだけでもうサポートになってますよ。でも運転前に少しチャージさせてもらおうかな」

「チャージ、ですか?」

「ええ」

身を乗り出し、可愛い尚孝さんに軽くキスをすると尚孝さんはほんのりと頬を染めながらも嬉しそうに笑っていた。

途中二度ほど休憩所に止まったが、一花さんは眠っているようで二人とも降りてはこなかった。

そうして、ようやく今日の会場である旧天沢家別邸に到着した。

天沢さんとの打ち合わせ通り建物に一番近い正面側の駐車場に車を止め、建物の中に案内する。

会長が一花さんを抱き抱えながら中に入ると、天沢さんがやってきた。

「天沢、今日はいい天気でよかったな」

「ああ、本当に。貴船、一花さんも今日は引き受けてくれてありがとう! 本当に助かるよ」

庭での挙式で一番の敵は雨。
完璧な計画の中でそれだけが心配で気にしていたが、雲ひとつない快晴で気温もよく、最高のコンディションと言える。

あとは一花さんに気づかれずに招待客の皆さんの準備を整えて、庭に案内するだけ。
それが一番重要だが、なんとしてでも成功してみせる。

天沢さんと一緒に一花さんと会長の支度部屋に案内すると、

「志摩くん、谷垣くんも支度が終わるまではのんびりしていてくれ。隣に待機部屋を用意してもらっているから」

と言われた。
私は尚孝さんを連れて部屋の外に出たが、尚孝さんの待機場所は隣ではない。
あれは一花さんに不審に思われないための言葉だ。

「尚孝さん、こちらです」

少し驚いた様子の尚孝さんを連れて、会長たちの部屋から少し離れた部屋に案内した。

「ここ、ですか? 一花くんたちの部屋から少し離れてませんか?」

「ええ。尚孝さんに大事なお話があるので待機場所をこちらにしていただいたんです」

「大事な話、ですか?」

「はい。実は、今日の結婚式には招待客が来られるんです」

「えっ? 招待客? で、でも二人だけって……」

驚くのも無理はない。私はこの計画の全てを尚孝さんに告げた。

「――というわけで、一花さんと会長の幸せを願ってくださる方々が集まってくださるんです」

「すごい……それは、一花くん喜びますよ! 僕もそれに立ち会えるなんて最高です!!」

涙を潤ませて自分のことのように喜ぶ尚孝さんを見て、私も胸が熱くなった。
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