ウブで真面目な理学療法士の初恋のお相手はセレブなイケメン敏腕秘書でした

波木真帆

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顔に出ないように

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すぐに蓮見さんと浅香さんに衣装とヘアメイク等の受注をして、残す招待客は一花さんの主治医である榎木先生とその恋人で会長と私の後輩でもある有原くん。

外科医として忙しい榎木先生より有原くんのほうが比較的連絡は取りやすいと判断し、有原くんに電話をかけ二人揃っての参列を約束してくれた。

幸い榎木先生が遅めの夏季休暇をとっていた時期と被っていたようだ。
宿泊所に保養所を打診しようとしたけれど、会場である天沢家別邸から近い場所に榎木先生の別荘があるそうでそちらで宿泊するようだ。

ラブラブな二人のせっかくの休暇の時間を空けてもらうんだ。
無理に保養所を勧めるのはやめておこう。

最重要事項として一花さんに今回の挙式に参列の話は内緒ということだけをしっかりと伝え、電話を切った。

あとは今回のブライダルプロデュース会社『プリムローズ』の方と当日の流れからサプライズまで打ち合わせをしていくだけだ。
突然の新郎新夫変更ということで『プリムローズ』の社長である佐久川氏と天沢さんと当日の流れをしっかりと確認し、一花さんへのサプライズの件も了承してもらうことができた。

会長から今回の話を聞いたその日のうちにあらかたのことは決定し、それを報告すると会長もホッとしているようだった。

「会長。週明けから尚孝さんと二人で一週間の有給休暇をいただきます。もちろんその間仕事に支障がないように今週のうちにしっかりと整えていきますのでご安心ください」

「そうしてもらえれば私も助かるが、週末の結婚式のことも任せているのに志摩くんに負担がかかりすぎないか?」

「ご心配には及びません。一週間の休暇のためなら完璧にこなしてみせます」

「そうか。それなら私は何もいうことはない。楽しんできてくれ。ああ、前にも言った通り旅行費用は全て私に回してもらって構わないよ」

「ありがとうございます。ですが、尚孝さんとの旅行を会長に支払っていただくわけにはいきません。休暇をいただけるだけでありがたいと思っていますからお気になさらず」

「わかった。それなら、二人の冬季賞与を上乗せしよう。それなら構わないだろう」

会長の気持ちは嬉しくてそれはありがたく受けることにした。

土曜日の結婚式が無事に終われば尚孝さんとの休暇か……。

ああ、楽しみでたまらないな。


<side尚孝>

一花くんから突然結婚式を挙げるという話を聞いて驚いたけれど、二人が幸せになるならとても嬉しいことだ。
けれど、そこで一花くんが貴船さんへのサプライズを計画していることを打ち明けられた。

結婚式の最中に、歩けないと言われていた一花くんが歩くのを披露できたら貴船さんはそれは大喜びするだろう。その姿を僕もぜひ見てみたい。

でもそれを当日まで内緒にしてほしいと頼まれてしまった。しかも唯人さんにも。それがドキドキで仕方がない。

元々僕は隠し事が苦手なタイプだ。
もちろん患者さんの秘密等は誰にも話をしたりしないけれど、こういう嬉しいサプライズはつい顔に出てしまう。

だから唯人さんにはすぐに気づかれてしまいそうで怖いんだ。

でも今回はものすごく大きなサプライズ。
貴船さんだけじゃなくて絶対に唯人さんだって驚くはず。

なんとかして顔に出ないように気をつけないとな。

そう思っていたけれど、その日の夕方。
唯人さんと貴船さんがいつものように仕事を終えて一花くんの部屋にきた時、

「谷垣くん。一花から週末の話は聞いたか?」

と尋ねられて、身体がビクッと震えてしまった。

もしかして、僕の顔に出てたわけじゃないよね?

必死にドキドキを抑えながら、尋ね返すと、

「ああ、天沢に頼まれてパンフレットの撮影がてら結婚式を挙げるという話だよ。当日、悪いが志摩くんには運転手兼スケジュール管理として同行してもらうから、谷垣くんにも一緒に来てもらいたい」

という話でホッとする。
よかった。結婚しに参列するという話だった。
心の中でホッと一息ついていると、その日は保養所に宿泊という話が出てきて驚いてしまった。

さすが貴船コンツェルン。今の時代に保養所を持っているなんて……。すごいな。

しかも部屋に露天風呂がついているなんて……。
そこで唯人さんと……。想像するだけで少し顔が赤くなってしまう自分がいた。


「尚孝さん、週明けから先日話をしていた休暇をいただくことにしました」

帰宅の車に乗り込んですぐ唯人さんがそんな嬉しいことを言ってくれた。

「週明けから? そんなに早くいいんですか?」

「ええ。大丈夫です。会長にはもう話をしましたので尚孝さんのリハビリもお休みです。ですから、土曜日に結婚式に参列してその日は保養所に宿泊。翌朝、そのまま空港に向かって旅行に出かけましょう」

「どこにいくんですか?」

「それは当日までのお楽しみです。ですから、保養所の露天風呂ではあまり激しくはしないでおきますね」

「えっ――!! あの、それって……」

「尚孝さん、会長から露天風呂の話を聞いて想像していたでしょう? 私との甘い夜を……」

「――っ!!! ご、ごめんなさい」

僕が妄想してしまっていたことが全てバレていたのが恥ずかしい。

「謝らないでください。私も本当はたっぷりと愛し合いたくてたまらないんです。でも、二人っきりの旅行もありますから頑張って抑えますね」

「唯人さん……じゃあ、その分……今夜、ください……」

「――っ!!」

唯人さんの気持ちが嬉しくて気持ちを告げると、今度は唯人さんが顔を赤くした。

「唯人さん?」

「たっぷり愛しますから覚悟してくださいね」

欲情を孕んだ目で見つめられて、身体の奥がキュンと疼くのがわかった。
もう僕は本当に唯人さんなしじゃ生きていけないな。
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