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ドキドキの初日
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<side暁>
ベルンシュトルフホールディングス本社での初日。
僕みたいな人間がベルンシュトルフのような大企業の本社で働けるなんていまだに夢じゃないかと思ってしまうけれど、これは現実。僕の力が必要だと言ってくれた大勢の人の期待に応えられるように頑張らないとな!
でもやっぱりロビーに足を踏み入れると、笹川と違いすぎて一気に緊張してしまう。
隣に智さんがいなかったらこのまま逃げ帰っていたかもしれないと思うほど、緊張してしまっていた。
足が震えて動かなくなりそう……そう思った時、後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声の主は宇佐美さん。
振り返ると笑顔で僕に駆け寄ってくるのが見えた。
「おはようございます」
「おはよう。小田切先生もおはようございます」
「おはようございます。暁のことをよろしくお願いします」
「はい。お任せください。帰りは……」
「私が迎えにきます」
「わかりました。小田切先生が来られるまで僕が一緒に居ますから安心してください」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。暁、頑張っておいで」
「は、はい」
智さんは笑顔でロビーを出て行った。
なんだか僕が口を挟む間もなく智さんと宇佐美さんの間で話がまとまってしまったな。
まぁでも宇佐美さんが一緒に居てくれるなら心強いし、よかったかな。
「小田切先生、暁くんのこと可愛くて仕方がないって感じだね」
「僕が頼りなさすぎるのかもしれないです」
「そんなことないよ。僕だってそこまで誉さんに送ってもらったし、帰りも迎えにきてもらうんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。誉さんと小田切先生は職場も一緒だし、帰りも一緒に来るかもね」
「あ、そうか。そうかも……」
「だから僕たちが一緒にいる方が二人も迎えにきやすくていいんだよ」
そう言われて納得する。
これからは仕事の間中、宇佐美さんと一緒なんだ。
笹川にいるときは田辺がいてくれて安心してたけど、ここでは宇佐美さんが一緒で安心だな。
「じゃあ、オフィスに行こうか。多分、上田がもう来てると思うんだよね」
「あ、一緒にバディを組む人ですよね。上田先生の弟さんってやっぱり顔も似てるんですか?」
「あー、そうだね。うん、似てるかな。優しいし、同期の中でもずば抜けて頼りになるやつだから暁くんも安心していいよ」
宇佐美さんがそんなに信頼する相手か。
大智さんも上田さんはすごく頼りになる、仕事のできる人だって言ってたし、僕の力でやっていけるか少し心配なところはあるけど、頑張ろうって思えるな。
「ここが僕たち営業部のオフィスだよ」
「は、はい」
「緊張しすぎ。肩の力を抜いて、挨拶するよ。おはようございまーす」
「お、おはようございます」
二人で挨拶をしながら中に入ると、僕たちの声が聞こえたのかあちらこちらから声がかかり、その中の一人がこちらに駆け寄ってくる。
「おはよう、宇佐美。この子が新しく入社してきた子?」
「上田、そんなに勢いよく来たら暁くんがびっくりするだろう!」
「ははっ、ごめん。ごめん。驚かせちゃったかな?」
「あ、いいえ。だ、大丈夫です。あの僕……北原暁です。これからバディを組ませていただくことになるのでよろしくお願いします」
なんとか噛まないように挨拶をして頭を下げたけれど、なぜか何の反応もない。
何か間違えちゃったかなと思って恐る恐る頭を上げると、上田さんだけじゃなくて、隣にいた宇佐美さんもポカンと口を開けて僕をみていた。
「えっ、あ、あの……」
「あ、ごめん。あまりにも可愛くて見入っちゃった」
「えっ、可愛いって……そんな……っ」
「いやー、まじ可愛いわ。ほんと、動きも小動物みたいだし、ほんと、可愛いよ」
まじまじと顔を見られながら可愛いと連呼されると照れてしまう。
「上田、この子は小田切先生の恋人だから手を出すなよ」
「わかってるって。流石に親友の恋人に手を出したりしないよ。小田切からもしっかり釘を刺されてるからな」
「えっ? 釘を刺されてる?」
「いや、そこは気にしないでいいよ。デスクに案内するからおいで」
「は、はい」
智さんと上田さんが友だちだとは聞いていたけど、さっきのってどういう意味だったのかな?
よくわからないけど気にしないでいいって言われたから考えない方がいいのかな。
「ここが、北原くんのデスクね。隣が宇佐美のデスクで向かいが俺のデスク。一つ余ってる俺の隣のデスクは書類作りに必要なものを揃えてるから、好きに使って」
「わぁ、ありがとうございます。ここに揃えてあると効率がいいですね。とりあえず一通り目を通してもいいですか?」
「えっ? あ、うん。いいよ」
僕は許可をもらって資料に手を伸ばした。
ベルンシュトルフホールディングス本社での初日。
僕みたいな人間がベルンシュトルフのような大企業の本社で働けるなんていまだに夢じゃないかと思ってしまうけれど、これは現実。僕の力が必要だと言ってくれた大勢の人の期待に応えられるように頑張らないとな!
でもやっぱりロビーに足を踏み入れると、笹川と違いすぎて一気に緊張してしまう。
隣に智さんがいなかったらこのまま逃げ帰っていたかもしれないと思うほど、緊張してしまっていた。
足が震えて動かなくなりそう……そう思った時、後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声の主は宇佐美さん。
振り返ると笑顔で僕に駆け寄ってくるのが見えた。
「おはようございます」
「おはよう。小田切先生もおはようございます」
「おはようございます。暁のことをよろしくお願いします」
「はい。お任せください。帰りは……」
「私が迎えにきます」
「わかりました。小田切先生が来られるまで僕が一緒に居ますから安心してください」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。暁、頑張っておいで」
「は、はい」
智さんは笑顔でロビーを出て行った。
なんだか僕が口を挟む間もなく智さんと宇佐美さんの間で話がまとまってしまったな。
まぁでも宇佐美さんが一緒に居てくれるなら心強いし、よかったかな。
「小田切先生、暁くんのこと可愛くて仕方がないって感じだね」
「僕が頼りなさすぎるのかもしれないです」
「そんなことないよ。僕だってそこまで誉さんに送ってもらったし、帰りも迎えにきてもらうんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。誉さんと小田切先生は職場も一緒だし、帰りも一緒に来るかもね」
「あ、そうか。そうかも……」
「だから僕たちが一緒にいる方が二人も迎えにきやすくていいんだよ」
そう言われて納得する。
これからは仕事の間中、宇佐美さんと一緒なんだ。
笹川にいるときは田辺がいてくれて安心してたけど、ここでは宇佐美さんが一緒で安心だな。
「じゃあ、オフィスに行こうか。多分、上田がもう来てると思うんだよね」
「あ、一緒にバディを組む人ですよね。上田先生の弟さんってやっぱり顔も似てるんですか?」
「あー、そうだね。うん、似てるかな。優しいし、同期の中でもずば抜けて頼りになるやつだから暁くんも安心していいよ」
宇佐美さんがそんなに信頼する相手か。
大智さんも上田さんはすごく頼りになる、仕事のできる人だって言ってたし、僕の力でやっていけるか少し心配なところはあるけど、頑張ろうって思えるな。
「ここが僕たち営業部のオフィスだよ」
「は、はい」
「緊張しすぎ。肩の力を抜いて、挨拶するよ。おはようございまーす」
「お、おはようございます」
二人で挨拶をしながら中に入ると、僕たちの声が聞こえたのかあちらこちらから声がかかり、その中の一人がこちらに駆け寄ってくる。
「おはよう、宇佐美。この子が新しく入社してきた子?」
「上田、そんなに勢いよく来たら暁くんがびっくりするだろう!」
「ははっ、ごめん。ごめん。驚かせちゃったかな?」
「あ、いいえ。だ、大丈夫です。あの僕……北原暁です。これからバディを組ませていただくことになるのでよろしくお願いします」
なんとか噛まないように挨拶をして頭を下げたけれど、なぜか何の反応もない。
何か間違えちゃったかなと思って恐る恐る頭を上げると、上田さんだけじゃなくて、隣にいた宇佐美さんもポカンと口を開けて僕をみていた。
「えっ、あ、あの……」
「あ、ごめん。あまりにも可愛くて見入っちゃった」
「えっ、可愛いって……そんな……っ」
「いやー、まじ可愛いわ。ほんと、動きも小動物みたいだし、ほんと、可愛いよ」
まじまじと顔を見られながら可愛いと連呼されると照れてしまう。
「上田、この子は小田切先生の恋人だから手を出すなよ」
「わかってるって。流石に親友の恋人に手を出したりしないよ。小田切からもしっかり釘を刺されてるからな」
「えっ? 釘を刺されてる?」
「いや、そこは気にしないでいいよ。デスクに案内するからおいで」
「は、はい」
智さんと上田さんが友だちだとは聞いていたけど、さっきのってどういう意味だったのかな?
よくわからないけど気にしないでいいって言われたから考えない方がいいのかな。
「ここが、北原くんのデスクね。隣が宇佐美のデスクで向かいが俺のデスク。一つ余ってる俺の隣のデスクは書類作りに必要なものを揃えてるから、好きに使って」
「わぁ、ありがとうございます。ここに揃えてあると効率がいいですね。とりあえず一通り目を通してもいいですか?」
「えっ? あ、うん。いいよ」
僕は許可をもらって資料に手を伸ばした。
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