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愛する人のために <side智>
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すっかり更新を忘れてしまっていたこのお話。
千鶴のことを書こうとして思い出しました(汗)
もうすぐ日本に戻るのであちらの話とも繋がるかな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side智>
「みんなでお弁当を食べると言っていたな」
「はい。そのつもりで私も少し多めに作っておきました」
「ああ。私もだ。だが、この分だとおそらく透也くんも祥也くんも弁当を持たせているだろう。そしてあの二人も多めに作っているとしたら……それだけの量をあの子たち、四人で食べ切れるとは思えないな」
「確かに……。あっ、でも日下部さん……透也さんの方ですが、今朝早くに発たれたのならお弁当は作ってないのではありませんか?」
「ふふっ。小田切ならどうする? 弁当は作らないか?」
「いや……つく、りますね、絶対に」
離れるからこそ、絶対に作る。
間違いない。あの日下部さんが作っていないわけがないな。
「だろう? ということは確実に今、あの部屋には多めに作られた弁当が四つあるということだな」
「確かに……。なら、昼食時間が終わりそうな時にでも弁当をもらいにいきましょうか」
「そうだな。きっと残したくないと言って無理をしそうだからな」
それから少し経って、私と上田先生は四人が集まっている部屋に向かった。
場所を聞いていなくても、暁につけているGPSを見ればすぐにわかる。
アメリカにいるからこそ、余計にこのGPSのありがたみを感じるというものだ。
上田先生が扉を叩き声をかけるとすぐに宇佐美さんが飛び出してきた。
「誉さん!」
「もう昼食は終わったのか?」
「はい。でもお腹いっぱいでどうしようかなって話していたところでした」
「ふふっ。だろうと思って、私たちが残りを食べにきたんだ」
「えっ? いいんですか?」
「ああ、仕事をしていたら昼食を食べ損ねたからちょうどよかったんだ」
「誉さん……」
きっと宇佐美さんは上田先生の優しさに気づいている。
そんなところにまた惚れ直しただろうな。
「このままここで食べさせてもらうよ。小田切、いいだろう?」
「はい。ここでいただきましょう」
私たちが席に座ると、宇佐美さんと暁が私たちのためにお茶を運んでくれた。
「暁、ありがとう」
「智さんのお弁当、すごく美味しかったです」
「そうか、それはよかった。他のおかずもみんなで分けたんだろう?」
「はい。田辺のも、上田先生のも田辺のお兄さんのもいろいろ食べさせてもらって、すっごく美味しかったんですけど……」
「けど?」
「あの卵焼きは智さんのが美味しかったです」
「暁……っ、そんなに気に入ってくれたなら弁当には毎日入れよう」
「わぁー!! 嬉しいです!!」
その言葉が嘘やお世辞ではないことがわかるから、何よりも嬉しいんだ。
暁たちが午後の仕事に向かうのを見送って、私は先生と二人で弁当で昼食をとる。
「ふふっ。私もだが、みんな張り切って作ったな」
「そうですね。でも、やっぱり日下部さんはどちらも料理が上手ですね」
「ああ、確かに。これなんてみてみろ! こんなところまで手が込んでて味も染みてる」
「なかなか人のお弁当を食べられる機会がないですから、参考になりますね」
「そうだな」
四人の食べ残しだけでは私たちの胃袋を完璧に満足させられる量はなかったが、まぁ夕食を多めに作れば問題ない。
「今夜はそれぞれ部屋で食べるだろう?」
「はい。食材は透也さんの部屋のを好きに使っていいと言われてますし」
「そうか。私たちは買い物をして帰るよ」
「それもまた楽しそうですね」
「ああ。ここで新婚気分を味わうのもいいものだよ」
そんな話をしながら、四つ分の弁当箱を洗い終え、私たちも応接室に戻った。
そして、午後の仕事を終わらせて定時を迎えた頃、暁たちを迎えにいった。
「暁、帰ろうか」
「はい!」
子犬のように駆け寄ってくる暁を可愛いと思いながら見つめていると、
「小田切先生! ちょっといいですか?」
と声をかけられた。
「はい。杉山さん、どうかしましたか?」
「実は夕方から限定で売り出される美味しいお菓子があるんですが、それを千鶴というか、祖母にお土産で持って行って欲しくて……申し訳ないんですが、一緒に買いに行ってもらえませんか? あ、もちろん暁くんも一緒に」
「それは構いませんが……」
「ああ。よかったです。透也から絶対に一人で買いに行かないようにと注意されていたもので」
「ああ、そういうことですか。それなら喜んでお供しますよ」
「よかったです。あまり行列を作らないこっちの人がかなり並ぶほど美味しい焼き菓子なんで、買いに行きたかったんですよ」
「せっかくだから、暁の分も買おうか」
「わぁー。嬉しいです!!」
そういうわけで、私たちは会社の車を今日だけ特別に借り、私の運転でそのお店に向かった。
千鶴のことを書こうとして思い出しました(汗)
もうすぐ日本に戻るのであちらの話とも繋がるかな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
<side智>
「みんなでお弁当を食べると言っていたな」
「はい。そのつもりで私も少し多めに作っておきました」
「ああ。私もだ。だが、この分だとおそらく透也くんも祥也くんも弁当を持たせているだろう。そしてあの二人も多めに作っているとしたら……それだけの量をあの子たち、四人で食べ切れるとは思えないな」
「確かに……。あっ、でも日下部さん……透也さんの方ですが、今朝早くに発たれたのならお弁当は作ってないのではありませんか?」
「ふふっ。小田切ならどうする? 弁当は作らないか?」
「いや……つく、りますね、絶対に」
離れるからこそ、絶対に作る。
間違いない。あの日下部さんが作っていないわけがないな。
「だろう? ということは確実に今、あの部屋には多めに作られた弁当が四つあるということだな」
「確かに……。なら、昼食時間が終わりそうな時にでも弁当をもらいにいきましょうか」
「そうだな。きっと残したくないと言って無理をしそうだからな」
それから少し経って、私と上田先生は四人が集まっている部屋に向かった。
場所を聞いていなくても、暁につけているGPSを見ればすぐにわかる。
アメリカにいるからこそ、余計にこのGPSのありがたみを感じるというものだ。
上田先生が扉を叩き声をかけるとすぐに宇佐美さんが飛び出してきた。
「誉さん!」
「もう昼食は終わったのか?」
「はい。でもお腹いっぱいでどうしようかなって話していたところでした」
「ふふっ。だろうと思って、私たちが残りを食べにきたんだ」
「えっ? いいんですか?」
「ああ、仕事をしていたら昼食を食べ損ねたからちょうどよかったんだ」
「誉さん……」
きっと宇佐美さんは上田先生の優しさに気づいている。
そんなところにまた惚れ直しただろうな。
「このままここで食べさせてもらうよ。小田切、いいだろう?」
「はい。ここでいただきましょう」
私たちが席に座ると、宇佐美さんと暁が私たちのためにお茶を運んでくれた。
「暁、ありがとう」
「智さんのお弁当、すごく美味しかったです」
「そうか、それはよかった。他のおかずもみんなで分けたんだろう?」
「はい。田辺のも、上田先生のも田辺のお兄さんのもいろいろ食べさせてもらって、すっごく美味しかったんですけど……」
「けど?」
「あの卵焼きは智さんのが美味しかったです」
「暁……っ、そんなに気に入ってくれたなら弁当には毎日入れよう」
「わぁー!! 嬉しいです!!」
その言葉が嘘やお世辞ではないことがわかるから、何よりも嬉しいんだ。
暁たちが午後の仕事に向かうのを見送って、私は先生と二人で弁当で昼食をとる。
「ふふっ。私もだが、みんな張り切って作ったな」
「そうですね。でも、やっぱり日下部さんはどちらも料理が上手ですね」
「ああ、確かに。これなんてみてみろ! こんなところまで手が込んでて味も染みてる」
「なかなか人のお弁当を食べられる機会がないですから、参考になりますね」
「そうだな」
四人の食べ残しだけでは私たちの胃袋を完璧に満足させられる量はなかったが、まぁ夕食を多めに作れば問題ない。
「今夜はそれぞれ部屋で食べるだろう?」
「はい。食材は透也さんの部屋のを好きに使っていいと言われてますし」
「そうか。私たちは買い物をして帰るよ」
「それもまた楽しそうですね」
「ああ。ここで新婚気分を味わうのもいいものだよ」
そんな話をしながら、四つ分の弁当箱を洗い終え、私たちも応接室に戻った。
そして、午後の仕事を終わらせて定時を迎えた頃、暁たちを迎えにいった。
「暁、帰ろうか」
「はい!」
子犬のように駆け寄ってくる暁を可愛いと思いながら見つめていると、
「小田切先生! ちょっといいですか?」
と声をかけられた。
「はい。杉山さん、どうかしましたか?」
「実は夕方から限定で売り出される美味しいお菓子があるんですが、それを千鶴というか、祖母にお土産で持って行って欲しくて……申し訳ないんですが、一緒に買いに行ってもらえませんか? あ、もちろん暁くんも一緒に」
「それは構いませんが……」
「ああ。よかったです。透也から絶対に一人で買いに行かないようにと注意されていたもので」
「ああ、そういうことですか。それなら喜んでお供しますよ」
「よかったです。あまり行列を作らないこっちの人がかなり並ぶほど美味しい焼き菓子なんで、買いに行きたかったんですよ」
「せっかくだから、暁の分も買おうか」
「わぁー。嬉しいです!!」
そういうわけで、私たちは会社の車を今日だけ特別に借り、私の運転でそのお店に向かった。
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