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恋の騙し合い 2
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「どうぞお客様へお茶をお出しして下さい」
「そんなの自分ですれば」
「そ、それは……」
「あんた未だに令嬢気取ってんの? 王太子に捨てられた女のくせに。この屋敷には、屋敷の規則があるの。あんたは、子どもさえ生めばいい只の牝馬なんさ」
「な、なんですか!? 旦那様に言いますよ」
「言ったらいいさ。旦那様も子どもの出来ない金のかかる妻より、わしらのような長年使えた使用人達を庇うさ。前のくそ奥さんも、その前の奥さんも何を血迷ったのかはじめの頃は威張っていたくせに、すぐに自分の立場って言うもんを悟ったがな。まあ、悟ったがすぐに死んでしまった。あんたも、せいぜい気をつけな。まあ、わしらも龍姫と言うものと龍騎士と言うものを見たいから茶くらい出してやろう。この貸しは貸したからな」
私はその会話を信じられない気持ちで聞いている。私はつい隣に座っているダニーの手を握った。周りに座っている男爵や準男爵の家族もメリエッシが使用人にあんなことを言われていると知っているのに何も言わない。
「失礼します」
メリエッシが何気ない顔をして中へ入って来て、私達の席に座った。
「メリエッシ。お茶くらい自分でいれろ。それが令嬢としてのたしなみなんだろう。お茶を入れるか、子どもを生むしか出来ない生き物のくせに、やたらと金がかかる」
男爵がメリエッシに文句を言った。
「すみません。でも、王都では、お客様へのお茶はメイドが用意するものです」
メリエッシが小さい声で言った。
「だまれ! 私が王都の習慣を知らないと言うのか?」
男爵が大きな声で怒鳴った。男爵が怒鳴った時に、口からツバがテーブルへ飛び散る。私とダニーは男爵からかなり離れている反対側に座っていたからよかったけど。旅の前に、ダニーに男爵の腐臭のことをきちんと注意をした。
私が扇をいつでも持参しているので、ダニーが不思議がって聞いたから、あの舞踊会のことを話したら、お腹をかかえて笑い出した。ダニーがそんなに笑うなんて始めて見たの。「女の武器は、扇」と言ったら、もうダニーったら「息が出来ないー」と言ってずっと笑っていた。
やっと笑いが落ち着いた後に、「ぜひ今度は、その武器を私めに送らせて下さい」と言った。
私は左手に扇を持って、右手でダニーの手を強く握った。
「いいえ。決してそんなつもりで言ったのではありません。すみませんでした」
メリエッシが謝った。
「これだから王太子もこの女を妾にしなかったのかもしれない。私も早まった選択をしてしまったのかもしれない。私が一体どれだけの資金をこいつの親にしたと思うか?」
男爵が言った。
「さあ、分かりませんがかなりの高額と言う噂を聞きます。ところで、メリエッシ様の両親は結婚式へいらっしゃられないのですか?」
準男爵が聞いた。
「あ、えと、」
「こいつの親は、旅費がないから来れないだとさ。私は婚約資金であれだけの金額を払ったと言うのに、自分の娘の結婚式に参加する資金がないそうだ。私に、王都で式をあげろと言ったぞ。結婚式は我が家の仕来りで、ここの教会であげる。そしたら、旅費を出せと言って来た。これ以上の資金援助は、最初の取り決め通りあげない。次にあいつらに金を渡すのは、こいつが後取りを生んだ時と決めている」
メリエッシの言葉を遮って、男爵が話す。もう男爵は、私達がいるのに世間体とか関係ないみたい。
その後もずっと最悪だった。男爵の話は自慢話か、メリエッシと彼女の両親の悪口のオンパレード。準男爵も自慢話か娘をダニーの妾にする話か自分の屋敷への招待とうるさかった。なんでも私達が来ると箔が付くみたい。私達と言うのは、龍姫と龍騎士と言うことだけが重要。私達を人と見ていない。決して、私自身やダニー自身じゃない。ダニーが貴族じゃないと知っているみたいで、それについてはダニーをバカにする感じがよく目につく。準男爵は自分の娘のような貴族の娘を娶るなんて、とても名誉なことだと言っていた。
私は何度も、怒りそうになったけど隣にいるダニーがその度に私の手をさすってくれる。
「私達は長旅でしたので、そろそろ部屋に行って休みたいので、これで失礼します」
ダニーが言った。
「ああ。そうだな。夕食までゆっくりして下さい。今夜はこの地域の有志達を何人か招いておるからのう。メリエッシ、二人を部屋へ案内しなさい」
私達が部屋から退出した時も男爵は私達に挨拶もしなかった。
「そんなの自分ですれば」
「そ、それは……」
「あんた未だに令嬢気取ってんの? 王太子に捨てられた女のくせに。この屋敷には、屋敷の規則があるの。あんたは、子どもさえ生めばいい只の牝馬なんさ」
「な、なんですか!? 旦那様に言いますよ」
「言ったらいいさ。旦那様も子どもの出来ない金のかかる妻より、わしらのような長年使えた使用人達を庇うさ。前のくそ奥さんも、その前の奥さんも何を血迷ったのかはじめの頃は威張っていたくせに、すぐに自分の立場って言うもんを悟ったがな。まあ、悟ったがすぐに死んでしまった。あんたも、せいぜい気をつけな。まあ、わしらも龍姫と言うものと龍騎士と言うものを見たいから茶くらい出してやろう。この貸しは貸したからな」
私はその会話を信じられない気持ちで聞いている。私はつい隣に座っているダニーの手を握った。周りに座っている男爵や準男爵の家族もメリエッシが使用人にあんなことを言われていると知っているのに何も言わない。
「失礼します」
メリエッシが何気ない顔をして中へ入って来て、私達の席に座った。
「メリエッシ。お茶くらい自分でいれろ。それが令嬢としてのたしなみなんだろう。お茶を入れるか、子どもを生むしか出来ない生き物のくせに、やたらと金がかかる」
男爵がメリエッシに文句を言った。
「すみません。でも、王都では、お客様へのお茶はメイドが用意するものです」
メリエッシが小さい声で言った。
「だまれ! 私が王都の習慣を知らないと言うのか?」
男爵が大きな声で怒鳴った。男爵が怒鳴った時に、口からツバがテーブルへ飛び散る。私とダニーは男爵からかなり離れている反対側に座っていたからよかったけど。旅の前に、ダニーに男爵の腐臭のことをきちんと注意をした。
私が扇をいつでも持参しているので、ダニーが不思議がって聞いたから、あの舞踊会のことを話したら、お腹をかかえて笑い出した。ダニーがそんなに笑うなんて始めて見たの。「女の武器は、扇」と言ったら、もうダニーったら「息が出来ないー」と言ってずっと笑っていた。
やっと笑いが落ち着いた後に、「ぜひ今度は、その武器を私めに送らせて下さい」と言った。
私は左手に扇を持って、右手でダニーの手を強く握った。
「いいえ。決してそんなつもりで言ったのではありません。すみませんでした」
メリエッシが謝った。
「これだから王太子もこの女を妾にしなかったのかもしれない。私も早まった選択をしてしまったのかもしれない。私が一体どれだけの資金をこいつの親にしたと思うか?」
男爵が言った。
「さあ、分かりませんがかなりの高額と言う噂を聞きます。ところで、メリエッシ様の両親は結婚式へいらっしゃられないのですか?」
準男爵が聞いた。
「あ、えと、」
「こいつの親は、旅費がないから来れないだとさ。私は婚約資金であれだけの金額を払ったと言うのに、自分の娘の結婚式に参加する資金がないそうだ。私に、王都で式をあげろと言ったぞ。結婚式は我が家の仕来りで、ここの教会であげる。そしたら、旅費を出せと言って来た。これ以上の資金援助は、最初の取り決め通りあげない。次にあいつらに金を渡すのは、こいつが後取りを生んだ時と決めている」
メリエッシの言葉を遮って、男爵が話す。もう男爵は、私達がいるのに世間体とか関係ないみたい。
その後もずっと最悪だった。男爵の話は自慢話か、メリエッシと彼女の両親の悪口のオンパレード。準男爵も自慢話か娘をダニーの妾にする話か自分の屋敷への招待とうるさかった。なんでも私達が来ると箔が付くみたい。私達と言うのは、龍姫と龍騎士と言うことだけが重要。私達を人と見ていない。決して、私自身やダニー自身じゃない。ダニーが貴族じゃないと知っているみたいで、それについてはダニーをバカにする感じがよく目につく。準男爵は自分の娘のような貴族の娘を娶るなんて、とても名誉なことだと言っていた。
私は何度も、怒りそうになったけど隣にいるダニーがその度に私の手をさすってくれる。
「私達は長旅でしたので、そろそろ部屋に行って休みたいので、これで失礼します」
ダニーが言った。
「ああ。そうだな。夕食までゆっくりして下さい。今夜はこの地域の有志達を何人か招いておるからのう。メリエッシ、二人を部屋へ案内しなさい」
私達が部屋から退出した時も男爵は私達に挨拶もしなかった。
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