36 / 49
4ー4
しおりを挟む
◇
里奈は無償にハンナお母さんやミイシャに会いたかった。教会を出た後に、洗濯場に行った。
「ミイシャ」
ミイシャは洗濯物を干した後で、殻の洗濯かごを持っていた。
「……」
ミイシャは無言で近づいて来る里奈を無表情見ていた。
「ミイシャ? どうしたの?」
ミイシャの様子が変で不安になり挨拶より先に口から出た。
「……リッ、リーナのせいよ! リーナのせいで私たちは、私たち洗濯場の下女たちは嫌がらせを受けているのよ!」
「えっ!?」
ミイシャは一体なにを言っているの!?
「リーナがどこの誰の子どもを妊娠して、それをレイーシャさまの子どもと嘘をついて王族に取り入ったから! リーナのせいで、私たちはアバズレの非人って意地悪されているのよ!
とくに、お可哀想なメリーナさまをお慕いする人たちのせいで、私たちの住む寮の窓ガラスが割れて怪我をした人もいるのよ!」
「どうして……」
理由を聞いてもミイシャになんて言っていいか分からずに、そんな言葉しか口からしか出なかった。
「どうしてって、どうしてか分かっているでしょ! 私、あれほどリーナに注意したでしょ! なのに、リーナは陛下の愛人になって綺麗なドレスを着て! で、私たちは、リーナのせいで嫌がらせを毎日受けているのよ!
もう私たちに関わらないで! とっとと私たちの前から消えて!」
「ハンナお母さんは!? ハンナお母さんはどこにいるの!? ねえ、お願い教えて」
「うっ、ハンナお母さんは二日前に食堂の下男たちの暴行を受けて部屋で寝てる……。もう私たちのことはほっといていて。ハンナお母さんにも会わないで」
最後までミイシャの言葉を聞かずに走った。
「リーナーー」
ミイシャが里奈を引き止めようとした。コーディーさまは里奈に走らないように、と言いながら後ろからついてくる。
里奈は逃げ足だけ早いから、二人の言葉を聞かずに走った。
「ハンナお母さん!」
ノックもせずに部屋に入った。
「コーディーさまは来ないで!」
部屋の中までコーディーさまが入ろうとしたから大声をあげる。彼は里奈の意志を尊重してくれて部屋の入り口で待機していてくれた。でも扉は開いたままだった。
「リーナ?」
いつものようにハンナお母さんの側に寄って抱きつきたかったけれど、ミイシャみたいに拒否されたらと思って足がすくんだ。
「どうしたの? お母さんに抱擁をしてくれないのかい?」
「ハンナお母さん……うっ、うっ、うっ」
上半身を起こして里奈を待っているハンナお母さんの胸に抱きついた途端に堰が切ったようにん泣きむせぶ。
「リーナ、会いたかったよ」
「……うん」
何度も里奈の髪の毛を梳かすように撫でて、落ち着くの待ってくれていた。
「赤ちゃんができたんだってね。よかったわ。おめでとう。私はおばあちゃんになるのね。
お願い、お母さんにはその子の父親が誰か教えてもらえない?」
ハンナお母さんには本当のことを言いたかった。でもジョンリー陛下のシーオンさまが父親と言うことをしばらく黙っているように言われていたから言えない。
「……赤ちゃんの父親はレイーシャさまなのかい?」
「……違う」
里奈が父親が誰か言わないと気づいたようで、ハンナお母さんが言葉を変えて聞いた。
「そう。ねえ、リーナ、あなたはその人と一緒になるの? なれるの? 妻にしてもらえるの?」
どの質問にも頭をふった。シーオンさまは里奈を妻にすると言ってくれた。でも実際には身分差と言う越えられない壁がある。なにより里奈ももう軟禁生活がこれからずっと続くかもしれないと分かっていて、シーオンさまと結婚する勇気がなかった。
レイーシャさまにしても、みんなに愛されているメリーナさまを悲しませてまで、一緒にいる覚悟ができない。初恋は決して実らない。
なにより最初に裏切ったのは里奈なんだ。
「そう。リーナ、あるお方が、私とリーナが田舎で生活をするための資金援助をしてくれるとおっしゃってくださったの。
私の生まれた村に戻って、一緒に暮らしましょう?」
「赤ちゃん、魔力がいるの……」
もっといろいろなことを聞きたかったけれど、魔力問題が一番重要だった。赤ちゃんが魔力不足になると里奈の命も危なくなる。
「ええ、その方がきちんと魔力回復薬を提供してくださるそうよ。リーナはなにも心配しなくていい生活を保証してくるそうよ。お願い、うんと言って」
ハンナお母さんの顔は青く痣ができていて、暴行された時についた傷があっちこっちあって痛々しい。
「……うん」
「よ、よかった」
ハンナお母さんが里奈の小さな体を抱きしめた。ハンナお母さんは里奈の返事を聞いて安心したようで声を出さずに泣いていた。
しばらくして落ち着いてから、小声で今夜こっそりお城を出る手順を教えてくれた。
二人はずっと小声で話していたからコーディーさまにはなにも聞こえていないはずだ。
里奈は無償にハンナお母さんやミイシャに会いたかった。教会を出た後に、洗濯場に行った。
「ミイシャ」
ミイシャは洗濯物を干した後で、殻の洗濯かごを持っていた。
「……」
ミイシャは無言で近づいて来る里奈を無表情見ていた。
「ミイシャ? どうしたの?」
ミイシャの様子が変で不安になり挨拶より先に口から出た。
「……リッ、リーナのせいよ! リーナのせいで私たちは、私たち洗濯場の下女たちは嫌がらせを受けているのよ!」
「えっ!?」
ミイシャは一体なにを言っているの!?
「リーナがどこの誰の子どもを妊娠して、それをレイーシャさまの子どもと嘘をついて王族に取り入ったから! リーナのせいで、私たちはアバズレの非人って意地悪されているのよ!
とくに、お可哀想なメリーナさまをお慕いする人たちのせいで、私たちの住む寮の窓ガラスが割れて怪我をした人もいるのよ!」
「どうして……」
理由を聞いてもミイシャになんて言っていいか分からずに、そんな言葉しか口からしか出なかった。
「どうしてって、どうしてか分かっているでしょ! 私、あれほどリーナに注意したでしょ! なのに、リーナは陛下の愛人になって綺麗なドレスを着て! で、私たちは、リーナのせいで嫌がらせを毎日受けているのよ!
もう私たちに関わらないで! とっとと私たちの前から消えて!」
「ハンナお母さんは!? ハンナお母さんはどこにいるの!? ねえ、お願い教えて」
「うっ、ハンナお母さんは二日前に食堂の下男たちの暴行を受けて部屋で寝てる……。もう私たちのことはほっといていて。ハンナお母さんにも会わないで」
最後までミイシャの言葉を聞かずに走った。
「リーナーー」
ミイシャが里奈を引き止めようとした。コーディーさまは里奈に走らないように、と言いながら後ろからついてくる。
里奈は逃げ足だけ早いから、二人の言葉を聞かずに走った。
「ハンナお母さん!」
ノックもせずに部屋に入った。
「コーディーさまは来ないで!」
部屋の中までコーディーさまが入ろうとしたから大声をあげる。彼は里奈の意志を尊重してくれて部屋の入り口で待機していてくれた。でも扉は開いたままだった。
「リーナ?」
いつものようにハンナお母さんの側に寄って抱きつきたかったけれど、ミイシャみたいに拒否されたらと思って足がすくんだ。
「どうしたの? お母さんに抱擁をしてくれないのかい?」
「ハンナお母さん……うっ、うっ、うっ」
上半身を起こして里奈を待っているハンナお母さんの胸に抱きついた途端に堰が切ったようにん泣きむせぶ。
「リーナ、会いたかったよ」
「……うん」
何度も里奈の髪の毛を梳かすように撫でて、落ち着くの待ってくれていた。
「赤ちゃんができたんだってね。よかったわ。おめでとう。私はおばあちゃんになるのね。
お願い、お母さんにはその子の父親が誰か教えてもらえない?」
ハンナお母さんには本当のことを言いたかった。でもジョンリー陛下のシーオンさまが父親と言うことをしばらく黙っているように言われていたから言えない。
「……赤ちゃんの父親はレイーシャさまなのかい?」
「……違う」
里奈が父親が誰か言わないと気づいたようで、ハンナお母さんが言葉を変えて聞いた。
「そう。ねえ、リーナ、あなたはその人と一緒になるの? なれるの? 妻にしてもらえるの?」
どの質問にも頭をふった。シーオンさまは里奈を妻にすると言ってくれた。でも実際には身分差と言う越えられない壁がある。なにより里奈ももう軟禁生活がこれからずっと続くかもしれないと分かっていて、シーオンさまと結婚する勇気がなかった。
レイーシャさまにしても、みんなに愛されているメリーナさまを悲しませてまで、一緒にいる覚悟ができない。初恋は決して実らない。
なにより最初に裏切ったのは里奈なんだ。
「そう。リーナ、あるお方が、私とリーナが田舎で生活をするための資金援助をしてくれるとおっしゃってくださったの。
私の生まれた村に戻って、一緒に暮らしましょう?」
「赤ちゃん、魔力がいるの……」
もっといろいろなことを聞きたかったけれど、魔力問題が一番重要だった。赤ちゃんが魔力不足になると里奈の命も危なくなる。
「ええ、その方がきちんと魔力回復薬を提供してくださるそうよ。リーナはなにも心配しなくていい生活を保証してくるそうよ。お願い、うんと言って」
ハンナお母さんの顔は青く痣ができていて、暴行された時についた傷があっちこっちあって痛々しい。
「……うん」
「よ、よかった」
ハンナお母さんが里奈の小さな体を抱きしめた。ハンナお母さんは里奈の返事を聞いて安心したようで声を出さずに泣いていた。
しばらくして落ち着いてから、小声で今夜こっそりお城を出る手順を教えてくれた。
二人はずっと小声で話していたからコーディーさまにはなにも聞こえていないはずだ。
0
お気に入りに追加
1,805
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる