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◇
ワグナーさんがいい人と思っていたが、里奈が次に絵を持って行った時に彼の本性を知った。
里奈の絵はそこそこ褒められた。まあ一般家庭の人たちが買ってくれるのでは、と言うことだった。里奈の絵は画材分の価値ほどは売れないそうだった。
案に画材代がもったいないから、もう描くのを辞めた方がいいよと丁寧だが遠回しに言っている。
この世界の絵画文化が遅れているから、里奈の絵の良さが伝わらないのよ。画商に飾っているある絵は全部、「写実主義」だった。印象派は一枚もなかった。別に里奈はモネのような偉大な絵を描いたわけじゃないけれど、画材がもったいないと批判されるような絵でもないと思う。
この世界にもきっと印象派もいいと言う人がいると思うのに。
ワグナーさんにそんなことを言うだけの言語力もなく、ただその場を離れようとした。前に来た時はここにずっといたいと思ったのに、今は早く離れたかった。
ワグナーさんに見せたキャンバスを急いで布カバンにいれようとするのに、悲しさで手がふるえて上手に入れることができない。早くここを離れたい、と言う気持ちが大きくて焦っていた。「あっ」カバンの中に入れていた他のイラストが床に落ちた。
「あっ!」
(ヤバい!)
と思って落ちた紙を床から急いで拾うとしたけれど、ワグナーさんに先を越された。
「こ、これは……?」
(エロ漫画の萌画です……。春画です……。って、そんなピーピー十八禁用語なんて知らないわ!)
なんと返事をすればいいか分からない上に、恥ずかしく床を見た。
確かに里奈はエロ漫画のアシスタントしていたよ。アシスタント仲間はみんな同じようにエロい絵を描いていたから全然恥ずかしくなかった。
たまにネットで自画作品のエロ萌画を投稿していたよ。それは描いている里奈の素顔が出ないから全然平気だった。
それが、今こうしてダンディーな執事が里奈のエロ画を目をまん丸にして見ている。で、その後里奈の顔を穴が開きそうなくらい見ている、と思う。下を向いているから彼の表情は知らない。
(死にたい)
多分、いま羞恥で死ねそうだ。
「こ、こ、これは君が描いたのか?」
「……」
咄嗟に頭を横にふる。
「しかし、この絵は君の絵だ」
『ぎょっ!!』
ま、まさか筆のタッチが同じとか言うんじゃないでしょうね! って、さっきワイナーさんに見せた絵は、卵と顔料を混ぜたテンペラ画だ。そして、エロ画は画用紙にインクで描いたものだ。全然筆のタッチとか関係ないよ。
「し、知りません。わ、分かりません」
ここぞと言う時に使おう、「私、サーラン語なんて知りましぇん!」技。
ちなみにこの国は、サーラン国と言う。この大陸にはサーラン国の他にもたくさんの国々がある。それで言語はみんな同じ言葉なのに、それぞれが自国の言語と名乗っている。
それを教えてもらったときに、まあ方便と言う感じかな、と思った。
「これを百テラで買いましょう」
一テラは日本円の百円。百テラは一万円。お城の下女として一ヶ月毎日洗濯と縫い物をして稼ぐ給料と同じだった。
「はい! 売ります!」
里奈の返事をした後、ワイナリーさんがニヤリとまた怪しい顔をしたのはきっと気のせいだろう。
「他になにかこのような絵はありませんか?」
ちょうど三枚、春画を持っていたからそれもそれぞれ売った。里奈はいっきに四百テラ、日本円で四万円を稼いだ。
さらに画材をただでもらった。「ぜひ『このような絵』をどんどん描いて、私に売ってください」と真剣な顔で言われた。
さすがにテンペラ画で『このような絵』は描けないと伝えると、インクと真っ白な厚紙もくれた。里奈の描い印象画はいらないそうだが、画材はただでくれるみたい。
その時はワイナーさんがとてもいい人だとまた思った。
でも次に他の絵を見せに行った時に、やっぱりこいつは守銭奴だと認識を改めないといけなくなった。
ワグナーさんは貴族と絵の交渉していていると他の店員に言われた。
里奈が画商に入ろうとした時に貴族の護衛たちがおしゃべりを偶然聞いてしまった。
「この画商ですごい淫らな性の絡みの絵を売っているらしいぜ?」
「ま、まじか? すごい淫らな絡みってなんだ?」
「女が男の上にまたがって犯るんだってよ」
「うっ、うそだろ?」
「ああ、本当だ。いま、王都のジェントルマンクラブではその絵の噂が耐えないらしいぞ」
「女が上にいるなんて考えられない」
「その絵を見たヤローたちは娼婦館でその体系を試して至上の快楽だったと言っていたぞ」
「ま、まじかーー。俺も奥さんに試してもらおうかな。それよりその絵を見てみてー」
「今その絵を手にいれようと、金持ちや貴族の男性たちが画商を血眼になって探しているらしい。なによりその絵は千テラで購入したが、今じゃあその倍の値段がついているらしい」
多分、こんな内容だったと思う。ようするにワグナーさんは里奈から百テラで買って千テラで売ったらしい。日本円で一万で購入して十万円で売ったことになる。
なるほど里奈に画材をただで譲っても、十分収入があったんだ。
その日はさらに二枚の春画を売って、たっくさんの画材をもらったがなんか納得できないままお店を出た。
「またすぐに次の絵を持ってきてくださいね」
と、最初に出会った時のように柔和な顔で言われたけれど、真実を知った里奈の目にはワグナーさんの顔はすべて胡散臭かった。
だから画材が全部なくなるまでワグナーさんのところへに行かないと決めた。
でも、いざと言う時のためにせっせとエロ画を描いている。
ワグナーさんがいい人と思っていたが、里奈が次に絵を持って行った時に彼の本性を知った。
里奈の絵はそこそこ褒められた。まあ一般家庭の人たちが買ってくれるのでは、と言うことだった。里奈の絵は画材分の価値ほどは売れないそうだった。
案に画材代がもったいないから、もう描くのを辞めた方がいいよと丁寧だが遠回しに言っている。
この世界の絵画文化が遅れているから、里奈の絵の良さが伝わらないのよ。画商に飾っているある絵は全部、「写実主義」だった。印象派は一枚もなかった。別に里奈はモネのような偉大な絵を描いたわけじゃないけれど、画材がもったいないと批判されるような絵でもないと思う。
この世界にもきっと印象派もいいと言う人がいると思うのに。
ワグナーさんにそんなことを言うだけの言語力もなく、ただその場を離れようとした。前に来た時はここにずっといたいと思ったのに、今は早く離れたかった。
ワグナーさんに見せたキャンバスを急いで布カバンにいれようとするのに、悲しさで手がふるえて上手に入れることができない。早くここを離れたい、と言う気持ちが大きくて焦っていた。「あっ」カバンの中に入れていた他のイラストが床に落ちた。
「あっ!」
(ヤバい!)
と思って落ちた紙を床から急いで拾うとしたけれど、ワグナーさんに先を越された。
「こ、これは……?」
(エロ漫画の萌画です……。春画です……。って、そんなピーピー十八禁用語なんて知らないわ!)
なんと返事をすればいいか分からない上に、恥ずかしく床を見た。
確かに里奈はエロ漫画のアシスタントしていたよ。アシスタント仲間はみんな同じようにエロい絵を描いていたから全然恥ずかしくなかった。
たまにネットで自画作品のエロ萌画を投稿していたよ。それは描いている里奈の素顔が出ないから全然平気だった。
それが、今こうしてダンディーな執事が里奈のエロ画を目をまん丸にして見ている。で、その後里奈の顔を穴が開きそうなくらい見ている、と思う。下を向いているから彼の表情は知らない。
(死にたい)
多分、いま羞恥で死ねそうだ。
「こ、こ、これは君が描いたのか?」
「……」
咄嗟に頭を横にふる。
「しかし、この絵は君の絵だ」
『ぎょっ!!』
ま、まさか筆のタッチが同じとか言うんじゃないでしょうね! って、さっきワイナーさんに見せた絵は、卵と顔料を混ぜたテンペラ画だ。そして、エロ画は画用紙にインクで描いたものだ。全然筆のタッチとか関係ないよ。
「し、知りません。わ、分かりません」
ここぞと言う時に使おう、「私、サーラン語なんて知りましぇん!」技。
ちなみにこの国は、サーラン国と言う。この大陸にはサーラン国の他にもたくさんの国々がある。それで言語はみんな同じ言葉なのに、それぞれが自国の言語と名乗っている。
それを教えてもらったときに、まあ方便と言う感じかな、と思った。
「これを百テラで買いましょう」
一テラは日本円の百円。百テラは一万円。お城の下女として一ヶ月毎日洗濯と縫い物をして稼ぐ給料と同じだった。
「はい! 売ります!」
里奈の返事をした後、ワイナリーさんがニヤリとまた怪しい顔をしたのはきっと気のせいだろう。
「他になにかこのような絵はありませんか?」
ちょうど三枚、春画を持っていたからそれもそれぞれ売った。里奈はいっきに四百テラ、日本円で四万円を稼いだ。
さらに画材をただでもらった。「ぜひ『このような絵』をどんどん描いて、私に売ってください」と真剣な顔で言われた。
さすがにテンペラ画で『このような絵』は描けないと伝えると、インクと真っ白な厚紙もくれた。里奈の描い印象画はいらないそうだが、画材はただでくれるみたい。
その時はワイナーさんがとてもいい人だとまた思った。
でも次に他の絵を見せに行った時に、やっぱりこいつは守銭奴だと認識を改めないといけなくなった。
ワグナーさんは貴族と絵の交渉していていると他の店員に言われた。
里奈が画商に入ろうとした時に貴族の護衛たちがおしゃべりを偶然聞いてしまった。
「この画商ですごい淫らな性の絡みの絵を売っているらしいぜ?」
「ま、まじか? すごい淫らな絡みってなんだ?」
「女が男の上にまたがって犯るんだってよ」
「うっ、うそだろ?」
「ああ、本当だ。いま、王都のジェントルマンクラブではその絵の噂が耐えないらしいぞ」
「女が上にいるなんて考えられない」
「その絵を見たヤローたちは娼婦館でその体系を試して至上の快楽だったと言っていたぞ」
「ま、まじかーー。俺も奥さんに試してもらおうかな。それよりその絵を見てみてー」
「今その絵を手にいれようと、金持ちや貴族の男性たちが画商を血眼になって探しているらしい。なによりその絵は千テラで購入したが、今じゃあその倍の値段がついているらしい」
多分、こんな内容だったと思う。ようするにワグナーさんは里奈から百テラで買って千テラで売ったらしい。日本円で一万で購入して十万円で売ったことになる。
なるほど里奈に画材をただで譲っても、十分収入があったんだ。
その日はさらに二枚の春画を売って、たっくさんの画材をもらったがなんか納得できないままお店を出た。
「またすぐに次の絵を持ってきてくださいね」
と、最初に出会った時のように柔和な顔で言われたけれど、真実を知った里奈の目にはワグナーさんの顔はすべて胡散臭かった。
だから画材が全部なくなるまでワグナーさんのところへに行かないと決めた。
でも、いざと言う時のためにせっせとエロ画を描いている。
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