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おまけのおはなし4 黒鳶・夜の独白
黒鳶・夜の独白 ※
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「あ、……あ、あん……」
彼がいつものように背中をしならせて甘い声を上げる。
黒鳶は彼の足の間のものを口に含んで、秘奥を指で広げてやりながら丁寧にその肌を愛撫する。
婚礼と書類上の手続きが終わってから、自分たちは同じ部屋で過ごすようになった。新居というほどのことではないが、お互いこれまで住んでいた独身者のための部屋を引き払い、玻璃殿下から家族用の別の部屋をあてがってもらったのだ。もちろん、東宮御所のごく近くである。
日中の仕事が終わり、不寝番の者たちと交代すれば、あとは早朝まで私的な時間だ。最近ではロマンとともにユーリ殿下のもとを辞し、一緒に部屋に戻る毎日である。
夕食はいっしょにとる。滄海ではAIによる便利なクッキングマシンが存在するので、これまではあまり料理をすることがなかった。が、ロマンは時々、手ずから料理をすることもある。特にアルネリオでよく食べた家庭料理などは、こちらのAIのメニューに載っていないからだ。
彼にばかり頼るのも申し訳ないので、自分も滄海式の料理のために包丁をふるうこともある。
夜には日課である鍛錬をこなす。その後簡単に湯を使ってから就寝。御所で働くようになるずっと前から、黒鳶は基本的にこのサイクルを崩すことなく長い年月を過ごしてきた。
……が、ここへ来て少しばかり、それを変更せねばならなくなっている。
「あ……あ、あふっん、も、もういっ……い……!」
理由はもちろんこれだ。
一般人より遅い就寝時間であるにも関わらず、自分たちにはもう少し夜の時間が必要になることになった。
その場所を柔らかくする潤滑剤を使って、ロマンの入り口をゆっくりと拡げていく。毎夜挿入したのでは彼の負担が大きすぎるので、事前に相談して頻度を決めた。今夜は「その日」に当たっている。そうでない日でも、互いの体を愛撫するなどして欲望を鎮める行為はしているが。
秘奥のやや入り口に近いその場所を、意図をもってぐっと指で押し込むと、彼の唇からまた甘い声が迸る。
「ひゃあうっ! ん……も、いいからあっ……」
尻を揺すって、腰をこちらの熱に押し付け「はやくちょうだい」とねだる。
もっと奥に、もっと大きな質量を欲しがって。
勃ちあがった彼の先端から、とろりとろりと欲の先走りが染み出している。
とろりと蕩けた可愛い瞳でじっとこちらを見上げてくる。
そうして、黒鳶の真の名をそっと囁く。
「…………」
乞われるまま、彼の両膝を持ち上げる。
ぴたりと先端をそこに添わせると、男のものを受け入れることにすっかり慣れたその場所が、物欲しげに蠢くのを明瞭に感じる。
そこはひどく欲しがって、ひくひくと淫靡な口を蠢かせている。
「ふあっ……あ」
ぐっと腰を進めると、彼の熱い襞が自分を呑み込んでくれる。
何度もつながった彼の内部は、もうすっかり黒鳶の形を覚えている。押し進められ、拡げられていながらも、次々に襞を黒鳶に添わせ、ぴたりとその形に変化して吸い付いてくる。
……ひどく、悦い。
最初のころは全部を呑みこむのにかなり時間がかかったものだが、最近ではさほどのこともない。むしろ彼の内部は「もっと、もっと」とばかり奥へ奥へと黒鳶を導くようだ。
「ああ……ん」
全部をしっかりと咥えこんで、広げた膝とともに全身を震わせる。
先端からとぷとぷと彼自身の欲望を滴らせる。
それが彼の下腹を濡らし、そのまま尻の方へと流れている。
ひどく淫靡な姿だ。この自分にだけ、見せる姿。
「ぜんぶ……う。あ、熱い……ね」
すっかり呑み込んで、両足をこちらの腰に絡めてきながら、浅い息で笑っている。
「おな、か……溶けちゃい、そ……」
両腕を上げて求められるまま、彼の唇を吸い、額に、頬に口づけを落とす。首筋も、うなじも、鎖骨のあたりも。胸の可愛らしいふたつの飾りも。それを愛するごと、その唇から飛び出る高い嬌声も。
全部全部、いまは自分のものなのだ。着物で隠れる場所にはすべて、自分の痕をつけてしまいたい。
異国ではじめて姿を見たときにはまだいかにも子供こどもした少年だったこの人は、近頃すっくりと背も伸びて、次第に男としての色気を放ち始めている。この人はまだ気づいていないが、御所に務める女官たちがちらちらと彼を見つめる熱い視線が日々増えてきているのだ。
……この人は、すでに自分のものだというのに。
すべて、何もかも。
「愛してる」などという浮ついた言葉を囁くのは性に合わぬ。合わぬが「慕う」という言葉なら己が地金にしっくりくるような気がしている。
恋い慕う。
側にいたい。守りたい。
できるものなら、ずっとこの腕の中に閉じ込めておきたい。
誰の目にも触れさせたくない。
愛おしみたい。
互いの命の果てるまで。
「あっ、ああっ、あ……! あ、……あっ!」
喘ぐ声の間に、時おり挟まる自分の真名。それにまた煽られる。
「ひあっ! い、いっしょ、がいいっ……!」
激しく揺さぶられながらも自分の意思を伝えようと、蕩け切った顔で強請られる。ともに果てようと、誘われる。
黒鳶に否やはない。
承諾の意を伝えるために彼にもう一度口づけをし、腰の動きを一気に早める。
「ひいっ、い、ああっ、ああああ……っ」
もう目の焦点も定まらず、口の端からよだれを零し、ひたすらに快感だけを追うようになった彼の表情を堪能する。感度のあがった体じゅうがぴりぴりと反応するのをじっくりと目に焼き付ける。
そのまま細い腰をがっちりと掴み、細い体が宙に浮くほどに突き上げた。
「だめ、んあっ、らめ、ええっ……!」
彼の欲望が堰を切って噴き出すのに合わせて、自分も戒めを解放させる。
彼の身体の奥の奥にまで、己の一部を注ぎ込む。
「あ……ああ、あ……」
彼が、腹の中に注がれる熱い液体を蕩けた顔で受け止める。
これをやってしまうと後始末が大変なので、彼がどんなに懇願してもごくたまにしか応じない。彼があまりの快感で気を失う場合もあって、そうなると浴室での仕事が倍増するのだ。それはそれで、黒鳶にとっては楽しみでもあるけれど。
たとえ気を失っていても、秘めた場所に指を突きこまれて猫の子のような鳴き声を上げる姿すら可愛くてたまらない。
「ロマン……」
彼の中にとどまったまま、くたりと果てた慕わしい人の体を抱きしめる。
偽りの月明かりが、ふたりの裸の肢体を照らす。
限りあるこの夜を、この人とずっと過ごすのだ。
大切に、口にふくむようにして。
……この命、果てるまで。
了
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2020.7.21.Tue.~2020.9.20.Sun.
これにて「外伝《ちいさな恋のものがたり》」完結です。
ここまでのお付き合い、まことにありがとうございました。
いつかまた、どこかで。
るなかふぇ
彼がいつものように背中をしならせて甘い声を上げる。
黒鳶は彼の足の間のものを口に含んで、秘奥を指で広げてやりながら丁寧にその肌を愛撫する。
婚礼と書類上の手続きが終わってから、自分たちは同じ部屋で過ごすようになった。新居というほどのことではないが、お互いこれまで住んでいた独身者のための部屋を引き払い、玻璃殿下から家族用の別の部屋をあてがってもらったのだ。もちろん、東宮御所のごく近くである。
日中の仕事が終わり、不寝番の者たちと交代すれば、あとは早朝まで私的な時間だ。最近ではロマンとともにユーリ殿下のもとを辞し、一緒に部屋に戻る毎日である。
夕食はいっしょにとる。滄海ではAIによる便利なクッキングマシンが存在するので、これまではあまり料理をすることがなかった。が、ロマンは時々、手ずから料理をすることもある。特にアルネリオでよく食べた家庭料理などは、こちらのAIのメニューに載っていないからだ。
彼にばかり頼るのも申し訳ないので、自分も滄海式の料理のために包丁をふるうこともある。
夜には日課である鍛錬をこなす。その後簡単に湯を使ってから就寝。御所で働くようになるずっと前から、黒鳶は基本的にこのサイクルを崩すことなく長い年月を過ごしてきた。
……が、ここへ来て少しばかり、それを変更せねばならなくなっている。
「あ……あ、あふっん、も、もういっ……い……!」
理由はもちろんこれだ。
一般人より遅い就寝時間であるにも関わらず、自分たちにはもう少し夜の時間が必要になることになった。
その場所を柔らかくする潤滑剤を使って、ロマンの入り口をゆっくりと拡げていく。毎夜挿入したのでは彼の負担が大きすぎるので、事前に相談して頻度を決めた。今夜は「その日」に当たっている。そうでない日でも、互いの体を愛撫するなどして欲望を鎮める行為はしているが。
秘奥のやや入り口に近いその場所を、意図をもってぐっと指で押し込むと、彼の唇からまた甘い声が迸る。
「ひゃあうっ! ん……も、いいからあっ……」
尻を揺すって、腰をこちらの熱に押し付け「はやくちょうだい」とねだる。
もっと奥に、もっと大きな質量を欲しがって。
勃ちあがった彼の先端から、とろりとろりと欲の先走りが染み出している。
とろりと蕩けた可愛い瞳でじっとこちらを見上げてくる。
そうして、黒鳶の真の名をそっと囁く。
「…………」
乞われるまま、彼の両膝を持ち上げる。
ぴたりと先端をそこに添わせると、男のものを受け入れることにすっかり慣れたその場所が、物欲しげに蠢くのを明瞭に感じる。
そこはひどく欲しがって、ひくひくと淫靡な口を蠢かせている。
「ふあっ……あ」
ぐっと腰を進めると、彼の熱い襞が自分を呑み込んでくれる。
何度もつながった彼の内部は、もうすっかり黒鳶の形を覚えている。押し進められ、拡げられていながらも、次々に襞を黒鳶に添わせ、ぴたりとその形に変化して吸い付いてくる。
……ひどく、悦い。
最初のころは全部を呑みこむのにかなり時間がかかったものだが、最近ではさほどのこともない。むしろ彼の内部は「もっと、もっと」とばかり奥へ奥へと黒鳶を導くようだ。
「ああ……ん」
全部をしっかりと咥えこんで、広げた膝とともに全身を震わせる。
先端からとぷとぷと彼自身の欲望を滴らせる。
それが彼の下腹を濡らし、そのまま尻の方へと流れている。
ひどく淫靡な姿だ。この自分にだけ、見せる姿。
「ぜんぶ……う。あ、熱い……ね」
すっかり呑み込んで、両足をこちらの腰に絡めてきながら、浅い息で笑っている。
「おな、か……溶けちゃい、そ……」
両腕を上げて求められるまま、彼の唇を吸い、額に、頬に口づけを落とす。首筋も、うなじも、鎖骨のあたりも。胸の可愛らしいふたつの飾りも。それを愛するごと、その唇から飛び出る高い嬌声も。
全部全部、いまは自分のものなのだ。着物で隠れる場所にはすべて、自分の痕をつけてしまいたい。
異国ではじめて姿を見たときにはまだいかにも子供こどもした少年だったこの人は、近頃すっくりと背も伸びて、次第に男としての色気を放ち始めている。この人はまだ気づいていないが、御所に務める女官たちがちらちらと彼を見つめる熱い視線が日々増えてきているのだ。
……この人は、すでに自分のものだというのに。
すべて、何もかも。
「愛してる」などという浮ついた言葉を囁くのは性に合わぬ。合わぬが「慕う」という言葉なら己が地金にしっくりくるような気がしている。
恋い慕う。
側にいたい。守りたい。
できるものなら、ずっとこの腕の中に閉じ込めておきたい。
誰の目にも触れさせたくない。
愛おしみたい。
互いの命の果てるまで。
「あっ、ああっ、あ……! あ、……あっ!」
喘ぐ声の間に、時おり挟まる自分の真名。それにまた煽られる。
「ひあっ! い、いっしょ、がいいっ……!」
激しく揺さぶられながらも自分の意思を伝えようと、蕩け切った顔で強請られる。ともに果てようと、誘われる。
黒鳶に否やはない。
承諾の意を伝えるために彼にもう一度口づけをし、腰の動きを一気に早める。
「ひいっ、い、ああっ、ああああ……っ」
もう目の焦点も定まらず、口の端からよだれを零し、ひたすらに快感だけを追うようになった彼の表情を堪能する。感度のあがった体じゅうがぴりぴりと反応するのをじっくりと目に焼き付ける。
そのまま細い腰をがっちりと掴み、細い体が宙に浮くほどに突き上げた。
「だめ、んあっ、らめ、ええっ……!」
彼の欲望が堰を切って噴き出すのに合わせて、自分も戒めを解放させる。
彼の身体の奥の奥にまで、己の一部を注ぎ込む。
「あ……ああ、あ……」
彼が、腹の中に注がれる熱い液体を蕩けた顔で受け止める。
これをやってしまうと後始末が大変なので、彼がどんなに懇願してもごくたまにしか応じない。彼があまりの快感で気を失う場合もあって、そうなると浴室での仕事が倍増するのだ。それはそれで、黒鳶にとっては楽しみでもあるけれど。
たとえ気を失っていても、秘めた場所に指を突きこまれて猫の子のような鳴き声を上げる姿すら可愛くてたまらない。
「ロマン……」
彼の中にとどまったまま、くたりと果てた慕わしい人の体を抱きしめる。
偽りの月明かりが、ふたりの裸の肢体を照らす。
限りあるこの夜を、この人とずっと過ごすのだ。
大切に、口にふくむようにして。
……この命、果てるまで。
了
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2020.7.21.Tue.~2020.9.20.Sun.
これにて「外伝《ちいさな恋のものがたり》」完結です。
ここまでのお付き合い、まことにありがとうございました。
いつかまた、どこかで。
るなかふぇ
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