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おまけのおはなし2 ロマン君のおたんじょうび
17 蜜夜 ※
しおりを挟む黒鳶は約束を違えなかった。
そこからは先ほどまでの怖いような圧力は嘘のように消え、彼の手はどこまでも優しくなった。寝台に下ろす前に一度全身を拭いてくれ、額に、頬に、唇に口づけをくれながら肌の上の敏感な場所を柔らかく愛撫される。
「ふあ……っあ」
先ほど恐ろしくて萎縮してしまったぶん、安心したロマンの声はわずかなことでも高くあがりやすくなっている。
足の間のそれも、もうすっかり血液が集まりきって痛いほどだ。黒鳶は寝台にロマンを横たえると、すいと足を広げさせてそれを口に含んだ。まるで、それが当然のような仕草だった。
「んはあっ……!」
昨夜と同様、巧みに舌と頬裏で刺激され、あっというまに絶頂まで連れていかれる。
「あっ! ご、ごめんなさい──」
思いきり黒鳶の口に放ってしまってから、慌てて顔を起こす。そのときにはもう、男はロマンのものを飲み下し、力をなくしたそれをぺろぺろと舐めてきれいにしてくれていた。
「はあっ……あ」
すっかり息があがってしまっているロマンを股間からちらりと見やって、黒鳶が目だけで笑った。
「悦かったようで、何よりです」
「も、もうっ……!」
真っ赤になって抗議しかかったが、ロマンはすぐに黙り込んだ。黒鳶がするっと口元を拭って伸びあがって来たからだ。鼻先が触れ合いそうなほど、顔を寄せられる。
「さて。どちらがよろしいですか」
「えっ……?」
質問の意図がわからない。目をぱちくりさせていたら、男はロマンの太腿の内側をさらりと撫でた。それだけで、ぞくっと下腹にまた火が灯る。
男の手は肝心な部分には触れていないのに、さらりさらりと腰のあちこちを撫でられるだけで、堪え性のないそれは震えながらゆるゆるとまた勃ちあがり始めた。なんて物欲しそうな姿だろう。
「最初は、後ろからの方がやりやすいと聞いております。……それでもよろしいか」
「う、うしろ……」
確かにあの《性教育プログラム》でも、そんなことを言っていたようだった。
ちょっと想像する。つまり、それだとどんな体位になるのかを。
(でも……)
なんとなく、最初にそれは。むくりと反発する気持ちが湧きあがった。
どんなきれいごとを言ったところで、結局は獣のように体をつなげる行為だとは分かっていても。
「や……です。さ、最初は見ていたいから。……あ、あなたの、お顔が」
吃りながらもそう言ったら、黒鳶はすぐに「左様ですか」と頷いてくれた。ちゅ、と唇を一度吸われる。
「十分に慣らしているので、大丈夫かとは思いますが。苦しかったり、痛みがあるときはおっしゃって下さい。あなたを傷つけたくはありませぬゆえ。よろしいですか?」
「は……はい」
なんだか胸が爆発しそうだ。
あまりに高鳴っていて、彼の声がちゃんと聞こえないぐらい。
「約束ですぞ。すぐにおっしゃってくださいませ」
うん、とロマンは頷いた。黒鳶が手早く自分のものにスプレー式のゴムを吹き付け、潤滑剤を塗りつける。そのままロマンの両足を持ち上げた。
(うあ……っ)
ひた、とそこに押し当てられてきたものの熱さと質量にびっくりした。
昨夜の行為で見せてもらったし、じかに触らせてもらったけれど。
いざこうなってみると、やっぱり大きいのがよくわかる。
大丈夫だろうか。自分は、ちゃんとできるだろうか──。
と、黒鳶がぐっと腰を進めてきた。
「あ……っ!」
大きい。熱い。
灼けた鉄棒でも突きこまれてきたようだ。先端の太い部分が狭い場所を押し広げて侵入してくる。
……苦しい。
「ふ、く……っ」
「どうか、息を止めないで。できるだけ、ゆっくり吐いてくださいませ」
優しく言ってくれる男の声も、やや苦しげだ。いつのまにか固く閉じていた目を開き、そっと窺う。男の表情に、なんともしれない艶めいた苦悶がわずかに浮かんでいるのが見えた。それが恐ろしいぐらいに色っぽい。
抱かれているのだ。いま、この人に。
(くろとび、どの──)
ロマンは必死で体の力を抜き、息を吐いた。そのタイミングを見計らって、黒鳶がさらに腰を進めてくる。腹の中に、男の熱がどんどん侵入してくる。
最初の太いところが通過して、ぐぐっと内臓を押し広げながら、男のものがさらにロマンの内側を求めて入り込んでくる。
「ああ……あ──」
自分の内側の襞がぜんぶ、男のものを味わい尽くそうとばかり絡みついていくのがわかる。勝手に思いきりきゅうきゅう締め付けて。
黒鳶はさぞや苦しいに違いない。さすがに少し息が荒くなっている。
「大丈夫ですか。痛くは……?」
それでも、心配するのはロマンのことだけなのだった。
「は……いっ。だいじょ……ぶ」
ロマンは切れぎれに答えるのがやっとだ。
本当は大丈夫なんかじゃない。そこがめりめりと音を立てるのではないかと思った。でも、嬉しさが全部を凌駕する。
……だって、二年だ。
こうなることを二年もの間まっていた。
ここで尻をからげて逃げ出す選択だけは、ロマンにだってない。
「だいじょぶ、だからあっ……。きて……、黒とび、どのお──」
息がうまく吸えなくてハクハク言いながら、言葉を絞り出す。両足を黒鳶の腰に絡みつけた。
黒鳶の瞳の奥に、見たこともないような妖しい光が宿った。
「ロマン──」
次の瞬間。
「あ、あああ────っ!」
ロマンは奥の奥まで、しっかりと黒鳶に貫かれていた。
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