上 下
44 / 52
おまけのおはなし2 ロマン君のおたんじょうび

17 蜜夜 ※

しおりを挟む

 黒鳶は約束をたがえなかった。
 そこからは先ほどまでの怖いような圧力は嘘のように消え、彼の手はどこまでも優しくなった。寝台に下ろす前に一度全身を拭いてくれ、額に、頬に、唇に口づけをくれながら肌の上の敏感な場所を柔らかく愛撫される。

「ふあ……っあ」

 先ほど恐ろしくて萎縮してしまったぶん、安心したロマンの声はわずかなことでも高くあがりやすくなっている。
 足の間のそれも、もうすっかり血液が集まりきって痛いほどだ。黒鳶は寝台にロマンを横たえると、すいと足を広げさせてそれを口に含んだ。まるで、それが当然のような仕草だった。

「んはあっ……!」

 昨夜と同様、巧みに舌と頬裏で刺激され、あっというまに絶頂まで連れていかれる。
「あっ! ご、ごめんなさい──」
 思いきり黒鳶の口に放ってしまってから、慌てて顔を起こす。そのときにはもう、男はロマンのものを飲み下し、力をなくしたそれをぺろぺろと舐めてきれいにしてくれていた。
「はあっ……あ」
 すっかり息があがってしまっているロマンを股間からちらりと見やって、黒鳶が目だけで笑った。
かったようで、何よりです」
「も、もうっ……!」

 真っ赤になって抗議しかかったが、ロマンはすぐに黙り込んだ。黒鳶がするっと口元を拭って伸びあがって来たからだ。鼻先が触れ合いそうなほど、顔を寄せられる。

「さて。どちらがよろしいですか」
「えっ……?」

 質問の意図がわからない。目をぱちくりさせていたら、男はロマンの太腿の内側をさらりと撫でた。それだけで、ぞくっと下腹にまた火が灯る。
 男の手は肝心な部分には触れていないのに、さらりさらりと腰のあちこちを撫でられるだけで、堪え性のないそれは震えながらゆるゆるとまた勃ちあがり始めた。なんて物欲しそうな姿だろう。

「最初は、後ろからの方がやりやすいと聞いております。……それでもよろしいか」
「う、うしろ……」

 確かにあの《性教育プログラム》でも、そんなことを言っていたようだった。
 ちょっと想像する。つまり、それだとどんな体位になるのかを。

(でも……)

 なんとなく、最初にそれは。むくりと反発する気持ちが湧きあがった。
 どんなきれいごとを言ったところで、結局は獣のように体をつなげる行為だとは分かっていても。

「や……です。さ、最初は見ていたいから。……あ、あなたの、お顔が」
 どもりながらもそう言ったら、黒鳶はすぐに「左様ですか」と頷いてくれた。ちゅ、と唇を一度吸われる。
「十分に慣らしているので、大丈夫かとは思いますが。苦しかったり、痛みがあるときはおっしゃって下さい。あなたを傷つけたくはありませぬゆえ。よろしいですか?」
「は……はい」

 なんだか胸が爆発しそうだ。
 あまりに高鳴っていて、彼の声がちゃんと聞こえないぐらい。

「約束ですぞ。すぐにおっしゃってくださいませ」
 
 うん、とロマンは頷いた。黒鳶が手早く自分のものにスプレー式のゴムを吹き付け、潤滑剤を塗りつける。そのままロマンの両足を持ち上げた。

(うあ……っ)

 ひた、とそこに押し当てられてきたものの熱さと質量にびっくりした。
 昨夜の行為で見せてもらったし、じかに触らせてもらったけれど。
 いざこうなってみると、やっぱり大きいのがよくわかる。
 大丈夫だろうか。自分は、ちゃんとできるだろうか──。
 と、黒鳶がぐっと腰を進めてきた。

「あ……っ!」

 大きい。熱い。
 灼けた鉄棒でも突きこまれてきたようだ。先端の太い部分が狭い場所を押し広げて侵入してくる。
 ……苦しい。

「ふ、く……っ」
「どうか、息を止めないで。できるだけ、ゆっくり吐いてくださいませ」

 優しく言ってくれる男の声も、やや苦しげだ。いつのまにか固く閉じていた目を開き、そっと窺う。男の表情に、なんともしれない艶めいた苦悶がわずかに浮かんでいるのが見えた。それが恐ろしいぐらいに色っぽい。
 抱かれているのだ。いま、この人に。

(くろとび、どの──)

 ロマンは必死で体の力を抜き、息を吐いた。そのタイミングを見計らって、黒鳶がさらに腰を進めてくる。腹の中に、男の熱がどんどん侵入してくる。
 最初の太いところが通過して、ぐぐっと内臓を押し広げながら、男のものがさらにロマンの内側を求めて入り込んでくる。

「ああ……あ──」

 自分の内側のひだがぜんぶ、男のものを味わい尽くそうとばかり絡みついていくのがわかる。勝手に思いきりきゅうきゅう締め付けて。
 黒鳶はさぞや苦しいに違いない。さすがに少し息が荒くなっている。
「大丈夫ですか。痛くは……?」
 それでも、心配するのはロマンのことだけなのだった。
「は……いっ。だいじょ……ぶ」
 ロマンは切れぎれに答えるのがやっとだ。
 本当は大丈夫なんかじゃない。そこがめりめりと音を立てるのではないかと思った。でも、嬉しさが全部を凌駕する。

 ……だって、二年だ。
 こうなることを二年もの間まっていた。
 ここで尻をからげて逃げ出す選択だけは、ロマンにだってない。

「だいじょぶ、だからあっ……。きて……、黒とび、どのお──」

 息がうまく吸えなくてハクハク言いながら、言葉を絞り出す。両足を黒鳶の腰に絡みつけた。
 黒鳶の瞳の奥に、見たこともないような妖しい光が宿った。

「ロマン──」

 次の瞬間。
 
「あ、あああ────っ!」

 ロマンは奥の奥まで、しっかりと黒鳶に貫かれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

処理中です...