ルサルカ・プリンツ 外伝《小さな恋のものがたり》

るなかふぇ

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おまけのおはなし2 ロマン君のおたんじょうび

16 涙 ※

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「や……っは、ああ……んっ」

 ぐちゅぐちゅと、浴室に淫靡な水音が響いている。それが自分の股間から響いている音であることに、しばらくロマンは気づいていなかった。
 足の間で屹立しているそれは、昨晩同様男の手で丁寧に愛撫され、先走りですっかり濡れそぼっている。奥まった秘所はそれ専用の洗浄器具に蹂躙され、昨夜よりもずっと物欲しげな音をたてていた。
 浴室の壁に手を突かされ、背後から男に抱きしめられながら、ロマンは涙を零している。ロマンはすでに一糸まとわぬ姿だったが、男は浴衣を着たままだった。

「あっ……あんんっ、は……んうう」
「もう少し、我慢なさいませ。あと少しで綺麗になりまする」
「ふうっ……!」

 すでにかなり奥まで咥えこまされた器具を、さらにぐいと突きこまれて息があがる。ロマンが昨夜自分ひとりで行為の前に準備したことを、今は黒鳶がすべておこなってくれているのだ。
 ただし、やり方は多少乱暴に思われた。
 ロマンのあまりの暴言に、さすがに気分を害したのかもしれない。

「ご、ごめんなさ……っ。あ、ああっ! や……もう、いやあっ」
「何がいやなのです」
 背後から首筋をべろりと舐められ、囁かれた。
「ふあっ!」
「さあ、おっしゃって下さい。何がお嫌ですか」
「もうっ、そこぉ……あっ、あはっ……! じゅんび、やあっ……!」

 敏感な場所に丸くなった器具の先が触れる。そのたびに、ロマンの腰が激しく跳ねた。尻を振りたて、男の腰に擦り付けるように蠢かす。それがどんなに煽情的な姿であるか、想像することはもう放棄していた。
 すでに自分の足で立っていることすら難しい。大して飲んだわけではなかったため、酔いはすでに醒めていた。それなのに、ほとんどものが考えられない。
 器具はその場所を清潔にし、入り口を緩めるためのものである。同性がこうした行為をすることを認めている国ならではの設備だ。
 男の指が、するっとロマンの脇腹を下から撫であげ、胸の突起を弄ぶ。
 男の指先が先端をくにくにと行き来するだけで、ロマンの腰ははしたない熱を積み重ねていく。

「ひいっ……ん、あ、あん……」
「こちらも、すっかり慣れておしまいになった」
「そんっ……な、こと、ないっ……ひあっ!」
 生意気な口をきいた途端、きゅっと小さな粒をねじられる。と同時に、ぬぷっと入り口から器具を引き抜かれた。チューブのつながった器具が軽い音を立てて床に転がる。
「はううっ……!」
 びくっとロマンは反り返った。
 黒鳶がロマンの前の物を握りこみ、ゆるやかに扱きあげはじめたのだ。

「だめっ……あ、あうっ、だめえっ……!」
「なにが『駄目』なのです」
「イッちゃ……いやっあ、あんっ、はあんっ……そんな、したら、やあああっ!」
「そうですか。では」
 と、ぎゅうっと根元を握りこまれた。
「ひいいっ!」

 ぱちぱちっと、目の前に稲光が走ったようだった。
 無理に盛り上げられた欲望の渦が根元ですさまじい熱量をもったまま押しとどめられ、腰を直撃している。それがずくんずくんと背骨を駆けあがって脳を犯していく。

「ひあ……っあ、ああっ……く」
 尻がぷるぷる震えた。
「少し我慢して頂きましょう。確かに、達していないほうが挿れやすいですし」
「ひっ……や、あ、くろ、とびど……っ」
 ロマンはぽろぽろ涙を零して必死に首を横に振った。
 黒鳶の手はロマンの根本を戒めたままだ。もう片方の手がロマンの顎をすくいあげ、後ろを向かせて軽い口づけを施した。
「さあ、いい子ですから」
「やっ……うふ、ううっ……」
 ロマンはもう本気で泣いている。

 ──こわい。

 酔った勢いでずいぶん酷いことを言ってしまった。そういう自覚はあった。
 でも、まさかこの男がこんな風になるなんて。いつもは礼儀正しくて、特にロマンに対しては優しすぎて困ってしまうぐらいなのに。

「ひいっく……ごめ、なさいいっ……。や、やだ……怒るの、やあっ……」

 目元をこすりながら、ぐずぐず泣いて訴える。
 と、黒鳶の手による戒めがふっと解けた。くるりと彼の方を向かされる。

「……悪いことをした、という自覚がおありで?」
 こくこくこく、と何度も必死で頷いて見せる。
「自分があなた様以外の誰かに懸想するにちがいない、とおっしゃったのも?」
 こくこくこく。
「……ならば結構」

 そのまま、ふわっと抱きしめられた。
 まだしゃくりあげながら、恐るおそるその背中を抱きしめ返す。

「もう、二度とおっしゃるな。次はありませぬぞ。……よろしいか」
「うう。……ごめんなさ──」

 首が折れそうなぐらい顎を縦にふってそう言ったら、ひょいと顎を掴まれた。
 そうして今度は打って変わって、優しく深い口づけが降りてきた。 
 ロマンは夢中でそれに応え、男の首にしがみついた。

「怖いの……やだ。やさしく、して……?」

 声は涙と嗚咽にまぎれてひどく聞き取りにくいものだった。だが当然、男は正確に聴きとっていた。

「了解しました」

 そうひと言いうと、男はそのままロマンの体を横抱きに抱え上げ、浴室から出て行った。
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