37 / 52
おまけのおはなし2 ロマン君のおたんじょうび
10 痕 ※
しおりを挟む
「あっ……んあ、んんんっ……」
前を彼の口で愛され、後ろをその指で慣らされながら、ロマンはもう変な声で啼きながら身をよじり、涙をこぼしているしかできない。
男の指は最初さすがに違和感があったけれども、何度も抜き挿しされているうちに次第に慣れてきた。黒鳶の指はどこまでも優しい。彼だって体はロマンを求めてくれているのだから、つらくなかろうはずがないのに。それでもどこまでもゆっくりと、ロマンを慣らすことだけを考えて進めてくれているのがわかった。
その間、前を舐められ、袋のところまで唇だけでやわやわと食まれてしまって、また我慢ができなくなりそうになる。
「っだめ……くろ、とび、どのっ……!」
そんなにされたら、また達してしまう。黒鳶だけを放って自分が二回もそうなるなんて絶対にいやだった。
黒鳶が心配そうにこちらを見た瞳を見返して、ロマンは必死に伝えようと頑張った。
「まえ……だめっ。また、いっちゃう……から」
「左様ですか」
黒鳶は言われたとおりそこから唇を放すと、ロマンの最奥を指で慣らすことはやめないまま、上体を伸びあがらせてロマンの唇にキスをした。
「んっ……」
今やなんのためらいもなくその舌を受け入れながら、ロマンは男の背中に手を回す。
男の唇は再びロマンの耳朶を食み、項を舌先でくすぐり、首筋から乳首へと遠征してゆく。
「はう……っ、あ……あん」
ロマンはもう夢見心地だ。最初はくすぐったさもあった胸の尖りは、今やすっかり女のように感じやすくなってしまった。
と、腹の奥で蠢いていた黒鳶の指が、くん、ととある場所を押し込んだ。
快感が前までまっすぐに貫いてくる。
「ひゃっ!?」
ロマンはびくっと腰を跳ねさせた。
「こちらですね」
男は勝手知ったるような顔をして、そこに触れるのはやめ、また入り口を広げる作業に戻ったようだった。
「あ、……あ、あの──今の」
ロマンは両手で顔を隠しながら恐るおそる訊いた。男は別ににこりともせず、伸びあがってロマンの頬に軽く口づけ、耳に口を寄せて言った。
「楽しみになさってください。……いずれ、お好きなだけ突いて差し上げます」
「え、ええっ……?」
そうか。そこがつまり……アレか。
ロマンは例の性教育プログラムで聞きかじったことを思いだしてまた赤面した。
やがて男はロマンの隣に寝そべると、向き合ってまた互いのそれをロマンと一緒に握りこみ、激しく扱きあげ始めた。
今度こそ、一緒に。
ロマンはこみ上げてくる快感を必死に逃がすことだけ考えて、黒鳶が最高潮に達するのを待った。
「ふ……っ」
さすがの黒鳶も息が荒い。熱い吐息をそのまま互いに封じ込めるようにして、せわしなく口づけを交わす。
閉じられた彼の目は、意外に睫毛が長いようだった。いつも精悍な彼の顔がロマンとともに快楽を貪って、男としての色気を放っている。
「くろとび、どの……くろ、とびどのっ……!」
最後はもう、ひたすらそう叫んでいるだけだった。
そしてようやくロマンの望み通りに、ふたりのものが時を同じくして精を放った。
◇
少し息を落ち着けてから、黒鳶は適当に互いの体を拭いた。そうしてロマンの体を横抱きに抱き上げ、浴室へ向かった。ロマンはまだ半分朦朧としていて、彼にされるがままだった。
食事の前に溜めていた湯はいったん落とされて、浴槽にはまた新たな湯が張られている。アルネリオだったらこんな湯の使い方はもったいなくてできるものではない。だがこちらではそこらの蛇口からふんだんに冷水と温水が出るため、別に大したことではないらしい。こういうところも、慣れるのに随分時間がかかったものだ。
黒鳶は浴室内でロマンを下ろすと、まず互いの体をざっとシャワーで流した。そのまま当然のように腕を引かれ、浴槽へ導かれる。
ロマンが湯舟に浸かると、その背後に黒鳶も入ってきた。彼の足の間にロマンの身体が嵌まる形だ。黒鳶の腕が柔らかくロマンの肩を抱きよせてきて、そのまま彼の胸に体を預ける形になる。
自然、ほうっと息をついた。
こんな風に彼と一緒に風呂に入るなんてはじめてのことだ。
そもそも黒鳶は、普段はあの黒ずくめの姿をほとんど変えない。せいぜい頭部の巻布を外すぐらいのことだ。マスクを外した顔だって、出合ってかなり経ってから見たぐらいである。
それがこうしてお付き合いをするようになり、ロマンの前でだけは頻繁にマスクをはずして──でなければ口づけができないのだから仕方がない──浴衣姿なんていう大変珍しい格好まで見せてもらえるようになり。
(……ああ。本当に、お付き合いをしてるんだな)
なんだか今さらのことをまた考える。
アルネリオで下働きをしていた日々のことが、まるで嘘みたいだ。冷たい水で山ほどの洗濯物を洗い、皸としもやけでひび割れた指の痛みと出血に悩んでいた頃のことなんて。
あの時の自分に教えてやりたい。数年後には自分が海の底の皇国にいることを。そこで大好きな人ができ、お付き合いを始めることも。そしてそれが女性ではないことなんかも。考えてみれば、それが最も驚くべきことだった。
と、ぽちゃりと水音をたてて黒鳶の手がロマンの頭を撫でた。
「何をお考えですか」
「ちょっと、昔のことを。……なんか嘘みたいで」
「嘘、ですか」
「その……しあわせだなあって。今、あなたとこうしてるのが夢みたいで」
ロマンは口に出してしまってから急に恥ずかしくなり、それを紛らわすように目の前のお湯をぱしゃぱしゃと意味なくかき回した。
「……左様ですか」
黒鳶がロマンの体を後ろから抱きしめる。その腕に力がこもり、背後から耳や頬、肩口のところに口づけを落とされた。
と、きゅっと首筋に鋭い痛みが走った。
「あ! えっ……?」
ぱっと手をやったらもう、黒鳶の唇は離れていた。
「おまじないをひとつだけ。『目が覚めたら夢だった』と思われては敵いませぬゆえ」
脱衣所の鏡を見て、ロマンはまたもや茹で上がった。
先ほどの場所にくっきりと、黒鳶の「所有の証」が咲いていた。
前を彼の口で愛され、後ろをその指で慣らされながら、ロマンはもう変な声で啼きながら身をよじり、涙をこぼしているしかできない。
男の指は最初さすがに違和感があったけれども、何度も抜き挿しされているうちに次第に慣れてきた。黒鳶の指はどこまでも優しい。彼だって体はロマンを求めてくれているのだから、つらくなかろうはずがないのに。それでもどこまでもゆっくりと、ロマンを慣らすことだけを考えて進めてくれているのがわかった。
その間、前を舐められ、袋のところまで唇だけでやわやわと食まれてしまって、また我慢ができなくなりそうになる。
「っだめ……くろ、とび、どのっ……!」
そんなにされたら、また達してしまう。黒鳶だけを放って自分が二回もそうなるなんて絶対にいやだった。
黒鳶が心配そうにこちらを見た瞳を見返して、ロマンは必死に伝えようと頑張った。
「まえ……だめっ。また、いっちゃう……から」
「左様ですか」
黒鳶は言われたとおりそこから唇を放すと、ロマンの最奥を指で慣らすことはやめないまま、上体を伸びあがらせてロマンの唇にキスをした。
「んっ……」
今やなんのためらいもなくその舌を受け入れながら、ロマンは男の背中に手を回す。
男の唇は再びロマンの耳朶を食み、項を舌先でくすぐり、首筋から乳首へと遠征してゆく。
「はう……っ、あ……あん」
ロマンはもう夢見心地だ。最初はくすぐったさもあった胸の尖りは、今やすっかり女のように感じやすくなってしまった。
と、腹の奥で蠢いていた黒鳶の指が、くん、ととある場所を押し込んだ。
快感が前までまっすぐに貫いてくる。
「ひゃっ!?」
ロマンはびくっと腰を跳ねさせた。
「こちらですね」
男は勝手知ったるような顔をして、そこに触れるのはやめ、また入り口を広げる作業に戻ったようだった。
「あ、……あ、あの──今の」
ロマンは両手で顔を隠しながら恐るおそる訊いた。男は別ににこりともせず、伸びあがってロマンの頬に軽く口づけ、耳に口を寄せて言った。
「楽しみになさってください。……いずれ、お好きなだけ突いて差し上げます」
「え、ええっ……?」
そうか。そこがつまり……アレか。
ロマンは例の性教育プログラムで聞きかじったことを思いだしてまた赤面した。
やがて男はロマンの隣に寝そべると、向き合ってまた互いのそれをロマンと一緒に握りこみ、激しく扱きあげ始めた。
今度こそ、一緒に。
ロマンはこみ上げてくる快感を必死に逃がすことだけ考えて、黒鳶が最高潮に達するのを待った。
「ふ……っ」
さすがの黒鳶も息が荒い。熱い吐息をそのまま互いに封じ込めるようにして、せわしなく口づけを交わす。
閉じられた彼の目は、意外に睫毛が長いようだった。いつも精悍な彼の顔がロマンとともに快楽を貪って、男としての色気を放っている。
「くろとび、どの……くろ、とびどのっ……!」
最後はもう、ひたすらそう叫んでいるだけだった。
そしてようやくロマンの望み通りに、ふたりのものが時を同じくして精を放った。
◇
少し息を落ち着けてから、黒鳶は適当に互いの体を拭いた。そうしてロマンの体を横抱きに抱き上げ、浴室へ向かった。ロマンはまだ半分朦朧としていて、彼にされるがままだった。
食事の前に溜めていた湯はいったん落とされて、浴槽にはまた新たな湯が張られている。アルネリオだったらこんな湯の使い方はもったいなくてできるものではない。だがこちらではそこらの蛇口からふんだんに冷水と温水が出るため、別に大したことではないらしい。こういうところも、慣れるのに随分時間がかかったものだ。
黒鳶は浴室内でロマンを下ろすと、まず互いの体をざっとシャワーで流した。そのまま当然のように腕を引かれ、浴槽へ導かれる。
ロマンが湯舟に浸かると、その背後に黒鳶も入ってきた。彼の足の間にロマンの身体が嵌まる形だ。黒鳶の腕が柔らかくロマンの肩を抱きよせてきて、そのまま彼の胸に体を預ける形になる。
自然、ほうっと息をついた。
こんな風に彼と一緒に風呂に入るなんてはじめてのことだ。
そもそも黒鳶は、普段はあの黒ずくめの姿をほとんど変えない。せいぜい頭部の巻布を外すぐらいのことだ。マスクを外した顔だって、出合ってかなり経ってから見たぐらいである。
それがこうしてお付き合いをするようになり、ロマンの前でだけは頻繁にマスクをはずして──でなければ口づけができないのだから仕方がない──浴衣姿なんていう大変珍しい格好まで見せてもらえるようになり。
(……ああ。本当に、お付き合いをしてるんだな)
なんだか今さらのことをまた考える。
アルネリオで下働きをしていた日々のことが、まるで嘘みたいだ。冷たい水で山ほどの洗濯物を洗い、皸としもやけでひび割れた指の痛みと出血に悩んでいた頃のことなんて。
あの時の自分に教えてやりたい。数年後には自分が海の底の皇国にいることを。そこで大好きな人ができ、お付き合いを始めることも。そしてそれが女性ではないことなんかも。考えてみれば、それが最も驚くべきことだった。
と、ぽちゃりと水音をたてて黒鳶の手がロマンの頭を撫でた。
「何をお考えですか」
「ちょっと、昔のことを。……なんか嘘みたいで」
「嘘、ですか」
「その……しあわせだなあって。今、あなたとこうしてるのが夢みたいで」
ロマンは口に出してしまってから急に恥ずかしくなり、それを紛らわすように目の前のお湯をぱしゃぱしゃと意味なくかき回した。
「……左様ですか」
黒鳶がロマンの体を後ろから抱きしめる。その腕に力がこもり、背後から耳や頬、肩口のところに口づけを落とされた。
と、きゅっと首筋に鋭い痛みが走った。
「あ! えっ……?」
ぱっと手をやったらもう、黒鳶の唇は離れていた。
「おまじないをひとつだけ。『目が覚めたら夢だった』と思われては敵いませぬゆえ」
脱衣所の鏡を見て、ロマンはまたもや茹で上がった。
先ほどの場所にくっきりと、黒鳶の「所有の証」が咲いていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる