墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第十四章 未来へ向かって

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モニカは街に帰るまで大聖堂に寝泊まりしてジャンヌ大司教の手伝いをするようだ。

役職が上がったとはいえやるべきことはあまり変わらないようで、本人も上がったという事をあまり気にしていないようだ。

王都にいると教会関係者も多いので高い低いに関して色々と関係することがあるようだが、向こうに戻れば基本一人ですべてやっているので役職云々は関係ないらしい。

ジャンヌさん曰く近隣の教会を束ねるような立場になるそうだが、モニカに務まるのかと聞かれると何とも言えないところだ。

押しに弱いところは変わらないし根が優しいだけに何かを切り捨てるとかそういうシビアなことが出来るとは思えないんだけど、まぁその辺は自分で折り合いをつけていくんだろう。

何かあれば俺達が助けてやればいいわけだし。

「なるほど、教会主導で貧民達と住民との交流を増やしたいと。」

「同じ王都に住んでいるとはいえ溝は深く彼らを見下す人が多いのは事実です。ですが奴隷でもなけば貴族でもないただ少し金銭に余裕があるかどうかだけの違いだけですから分かり合うのはさほど難しくないと思っています。」

「確かに身分だけでいえば同じだがかなりの溝があるのは間違いない。正直交流するだけでその溝が埋まるのかと聞かれると難しいとは思うが、何もしないよりかはマシだろう。で、具体的に何をするつもりだ?」

「その知恵をお借りできればとお呼びしたわけです。」

話はまぁわかった。

どの世界どの場所でも金銭的に余裕があるか否かで身分の上下を作ってしまうのは人間の悲しい性というものなのだろうか。

奴隷と貴族、元の世界にはないこの二つがあってなお平民の中に格差がある。

確かに金は素晴らしい。

あればあるだけ困ることはないし、正直金で買える物がほとんどだ。

この世界においては命でさえも金で買えると言っても過言ではないだろう。

っていうかぶっちゃけ買ってるし。

折角買った奴隷を粗末にする人は正直少ないのだが、それでもいないわけじゃない。

奴隷を肉壁のようにしてダンジョンに潜る金持ち冒険者がいるという話も聞いたことがあるので、命を買っているという考えは間違いではないだろう。

金さえあれば何でもできる。

この世界的に言えばワイバーンでも落とせるらしい。

だが所詮は金だ。

あろうがなかろうが身分に違いはなく、出来る事にも大差はない。

むしろ貧民の方が仕事や金に貪欲で仕事を頼んでも真面目にやってくれるイメージがある。

現にダンジョン街で婦人会に仕事を頼むのと住民に仕事を頼むのなら貧しい家庭の多い婦人会の方が良い仕事をしてくれていたのは間違いない。

「モニカはどう思う?」

「え、私ですか?」

「向こうで婦人会と共に貧困者への支援を行ってきただろ?間違いなく王都よりも一般住民との関係は良かったしむしろ協力関係にあったと言ってもいい。何かいい案はないか?」

「そう・・・ですね、向こうではそれぞれが手を取り合って一つの事をたくさんしてきたかなって思います。この時期ですと夏祭りを思い出しますね。」

「あー、そういえばそんなこともしたなぁ。子供向けに出店を出したがなんだかんだ大人も楽しんでいた覚えがある。」

夏といえば夏祭り、子供向けの出店から食べ物の出店まで城壁の外にたくさん並んで街をあげてのお祭り騒ぎになっていた覚えがある。

準備は主に俺達でやったが、婦人会もかなり手伝ってくれたし一般住民も分け隔てなく参加してくれていた。

まぁ、ダンジョン街が元々そういう差別の少ない町だったって言うのもあるから参考になるかは何とも言えないけれど、融和を図るのであれば祭り事は外せないだろう。

何かに夢中になれば自然と手を取り合うものだし、そこからお互いについて知っていくのも悪い事じゃない。

「お祭り、青龍祭みたいな感じでしょうか。」

「いやいやあんな大それたものじゃない、ただ単に店を出してワイワイ楽しむだけだ。飲み食いだけだと市場と何も変わらないから遊び系の出店も多く出してついでに飯を食うって感じだな。」

「遊びですか。」

「それもあまり難しくない感じで。あえて子供向けにする事でそれに合わせて大人も一緒にやってくるだろ?子供ってのは大人ほど身分差を気にしないからなんだかんだ仲よく遊ぶもんだ。そこから交流が生まれれば当初の目的は達成できたというもの、問題は何をするかってところだ。遊びだが金はとるし、やる以上は儲けも出す。俺が関わる以上儲けのない慈善事業をするつもりはさらさらないからな。」

俺がやる以上儲けさせてもらうつもりでいる。

とはいえ相手が相手なのであまり高い金のかかるようなことはしないが、ちりも積もればなんとやら。

加えて裏方の方で儲けを出す手もあるので資材の手配とかで頑張るのもいいかもしれない。

問題は何をするか、ただ単に祭りっていっても街の規模が違うだけに参加する人数もかなり多くなる。

やるからにはそれなりの人数が楽しめるものにしないといけないわけだが、そのノウハウをどうやって手に入れるかが問題だ。

「そこはお任せいたします。あくまでも目的は貧民と住民の関係改善、その為に教会も助力は惜しみません。」

「因みにどのぐらい出せる?」

「あまりたくさんは難しいですが金貨数枚というところでしょうか。」

「ふむ、それぐらいあればそこそこ出来るか。」

もちろん俺一人でそれ全てをせしめようとは思っていない、儲けるのはあくまでも参加者からで主催者からなにかお金を得るつもりはない。

確認したのは催しをするために必要な経費をどのぐらい出せるかなので、金貨を動かせるとなればそこそこの人間や資材を調達できる。

何をするにもマンパワーは必要だからな、いくら貧民の労働力が安いとはいえそれでも人数が増えればそれなりの金額になってしまう。

「では夏祭りで決まりですか?」

「そうだな、時期的に似たようなことをやる感じになるだろうからそれなりに盛り上がるだろう。まずは何をするかの案を出し合って、概要が決まり次第食い物関係の出店希望を取る感じか。あ、俺も何店舗か出すからよろしく。」

「え、食べ物の方ですか?」

「人手は借りるが色々とやりたいこともある、一番儲かるのはやっぱり食い物関係だからな。」

夏祭りといえばやっぱり出店、向こうで出した店の他にこっちで見つけた食材を使って店を出せればと思っていたんだ。

最近は忙しくてなかなかそこまで手が回らなかったけれど、そういうイベントがあれば自分で店をやらなくても誰かにやってもらえるきっかけになるのでいいチャンスだと思う。

反応次第では店を誰かにやらせながら仕入れは俺の所からさせて利益を出すなんて手法も取れる。

店を出すより物を売る方がリスクも少なく時間的拘束もない。

そういう意味では自分で店をやるってかなり非効率なんだよなぁ、残念ながら。

ほら、家を建てるよりも建てる為の足場を組む方が儲かるっていうし。

一軒作る拘束時間のあいだに何件分の足場が作れるのか、それを考えると一件単価は少なくても数をこなせば十分それを上回れるんだよなぁ。

もちろんそれにかかる資材や人員の確保が出来ればの話だけども。

「シロウ様の出す料理はどれも美味しいので今から楽しみです。」

「期待してくれて構わないぞ、定番の他に最近見つけた食材も使うつもりだ。」

「てっきり買い取った物を使って何かお店を出されるのかと思っていましたが、違うんですね。」

「それも考えたんだが、今回は材料提供の方で協力させてもらうとしよう。とりあえずどんな夏祭りにするか方向性を決めるところから始めようじゃないか。ただ単に住民との関係改善ってだけじゃ大きすぎるだろ。」

具体的にどんなやり方で関係を改善するのか。

さっき話したような子供を使うやり方なのか、それとももっと別の何かをやって改善するのか。

やり方は色々あるだろうけど、どちらにせよ俺が金儲けすることに変わりはない。

夏祭りの出店と言えば輪投げや射的、玉投げやくじ引きなんかも人気だ。

輪投げには最近手に入れたコボレートマジシャンの腕輪が使えそうだし、射的はスリングで代用して弾を子供は当てやすい物、大人は当てにくい物と変えてもいいかもしれない。

玉投げにはレッドスライムの核を使えばどこにあたったかもすぐわかるうえに誰でも投げれるので、子供から大人まで楽しめるはずだ。

どれも工夫次第でいくらでも金に化ける、それらの素材を早いうちから手配しておけば後々大儲けできること間違いなしってね。

だがこういうありきたりの奴だけだとすぐに飽きられてしまうので、もっとこう楽しめるやつを考える必要があるだろう。

なんせ規模が違う。

貧民街だけでも住民は数百人単位、王都の住民ともなると数千人規模だ。

流石にその規模の祭りはやったことないだけに、それこそ青龍祭のノウハウなんかを教えてもらう必要があるだろう。

流石に俺達だけでは出来る自信がない。

ま、今日明日やるような話でもないのでしっかり考えようじゃないか。

とりあえずその日決まったのは6月の終わりにそれを行うという事だけ。

あれ、あまり日がない?

なぜか当日まで一カ月を切るというスピード開催に決まり、慌ててしまったのは内緒だ。

とりあえず今はできることをしよう。

会議終了後、急ぎ冒険者ギルドへと駆け込み必要な素材を買い集めたのは言うまでもない。
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