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第七章 共闘
14 仲間
しおりを挟むケントがまたもやしばし沈黙した。
《じゃあ、お前も……本気なのか》
「ん?」
《つまりさ……。本気で、あの魔王のこと》
「ん? んん~~~~……えっと」
急にものを言うのがこっ恥ずかしくなって口ごもる。
ちらっと扉の方に視線をやって、ダンパがまだ戻らないことを確かめ、口元を手で覆った。
「……えっと。ここだけの話な?」
《ああ》
「正直、最初は『うぜェ』としか思ってなかったのよ。俺だってよ」
《うん》
「だって、魔王と《レンジャー》だぜ? ありえねーだろ? 何回もそう言ってんのに、めちゃめちゃ迫ってくるしよー。好きだの惚れたのって言いまくるし。信じらんねーほど優しいし。ときどき言うことゲロ甘すぎて、どーしていいかわかんねーし。めっちゃ細かいことまで気を遣ってくれるしな。あの魔王がだぜ? 信じられねえだろ」
《……うん》
「気が付いたら、もう、その……そーゆー感じになっちゃってた。俺の方の気持ちもな。なんか、うまいこと押し切られちゃったような気がして微妙な感じもするけど」
《…………》
「ごめんな、ケント。お前の気持ちを知らなかったのも、結婚の約束のこと忘れちまってたのも。子どもの頃のこととはいえ、ほんと悪かったと思ってる。でも、今の俺は──」
《いい。わかったよ》
「ケント?」
《もうわかった。それ以上のことは聞かないよ》
「ケント……」
《そういうセリフは、本人に言うために残しておくもんだろ。俺がここで聞いちゃったらダメなやつだろ》
「……そ、そっか」
言われてみれば確かにそうだ。
《っていうか、ゴメンな》
「ん? なんでケントが謝るんだよ」
《俺だってわかってたんだよ、ほんとはさ。子どもの頃の結婚の約束なんて、生きてるわけないって》
「ケント」
《でも……ゴメン。俺、本当にお前のこと……好きだったから。『もしかして』って、ついつい思って……ずっとさ》
「……うん」
ごめん、ともう一度心の中だけで思う。ケントが頑張って明るい声を出しているときの声で話しているのが、リョウマにははっきりとわかったからだ。
《とにかく。今はあの彗星のことを頑張ろうな、お互いに》
「うん」
《それで、お前はちゃんと魔王と幸せになるんだ。あいつがお前を泣かしたりしたら俺、ゆるさねえし》
「うん。……あんがとな、ケント」
《いや。じゃ、しっかり準備してしっかり寝ろよ》
「えっ」
《わかってないだろ。お前いま、すっごく眠そうな声してる。しっかり休んでおかないと、いざというとき使いもんにならないって前から言ってるじゃないか。それだって仕事のうちだぞ。しっかりしろよ、リーダー》
「う、うん……ごめん」
そして最後に「ありがと、ケント」ともう一度、心から言った。
指輪の通信が切れてしばらく、リョウマは横になったまま、ぼうっと宙を見つめて考えていた。が、やがてうとうとと睡魔が襲ってきて、ダンパが戻ってきたときにはもう、深い夢の世界へと旅立っていた。
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