墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第七章 共闘

13 惚気

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「ぐっは……参った。結構キツかったな」

 「固定ベルトを外してよい」という艦内放送がかかってほっとしたのと同時に、リョウマはぐたりとベッドに倒れこんだ。ひどい吐き気と眩暈が襲ってきていた。

「大事ありませぬか、リョウマ様」

 ごく平気そうなダンパは、さすがは軍人というべきか。こういうことも、とっくに訓練済みなのだろう。
 一応、事前に彼から説明は受けていたのだが、発進時にかかるGは想像以上に重かった。民間船で一般民を運ぶ場合はもっとゆるやかに段階を踏んで宇宙空間へ出るらしいが、これは戦艦だ。まして非常時。とにかく時間をムダにできないということで、地表から一気に宇宙空間へ出たため、かなりのGを感じることになったのである。

「ごめん。ゆうべ、あんま寝てないのもよくなかったんだろな」

 顔を手のひらでゴシゴシこすり、吐き気をこらえながら言うと、ダンパは心配そうに「そうでしたか」とうなずき、また壁を操作して、冷たいタオルを取り出すとリョウマの額にあてがってくれた。すっとして、少しだけ気分がよくなる。

「しばらくご休憩ください。自分はしばし、所要のため外へ出ます。鍵はロックしていきますので、自分以外の誰が来ても出ないようになさってください」
「わかった」

 答えてダンパを見送り、しばらくベッドでうつらうつらとしたときだった。
 紅石の指輪から仲間の声が聞こえてきた。

 《リョウマ。聞こえるか? リョウマ》
「え……。あっ。ケ、ケントか?」
 《大丈夫か? 声が……》

 自分を長年「許嫁だ」と思ってきてくれただけのことはあるのか、ケントは即座にリョウマの声に元気がないことを聞き分けたらしい。素直に凄いが、ちょっと怖い気もする。

「ん……ちょっとGに負けた。カッコわりい……」
 《そんなことはない。民間機に乗っている俺たちより、そっちはキツいと聞いてるし。すまないな、そんなときに連絡して》
「いや。話ぐらいならできるわ、横になってるし。ちょうどダンパさんもいねーし、続けてくれよ」
 《……わ、わかった》

 ケントによると、あれからまず希望する村民をつれて、《勇者の村》避難船の第一陣が出発したのだそうだ。ゲンゴとケントはそれに乗り、残った村民たちはムサシとハルトが担当することになったらしい。最終的には茶などに睡眠薬を混ぜてでも、お年寄りたちをつれて逃げることになったそうだ。

「そっか……。うまくいくといいな」
 《ああ。それから、ムサシおうからお前にもことづけを預かっている。今から言うから、よく覚えておくんだぞ》
「ああ、わかった」

 それからリョウマは、ダンパが戻ってくるまでムサシからの伝言を熱心に聞き、しっかりと記憶に刻んだ。
 それはこれから恐らく非常に重要になる知識、《BLレッド》としての知識だった。話を聞いているうちに、リョウマの体調も次第に回復してきた。

 《ムサシ殿からの託けはここまでだ。……えっと、それでな。リョウマ》
「……うん?」

 返事をしたのに、ケントはしばらく逡巡した様子だった。

 《……その。聞いておきたいことがあったんだ。お前に》
「なんだよ」

 それでもまた沈黙が続く。リョウマは溜息をついた。

「なんだってんだよ。さっさと言わねーと、いい加減ダンパさんが戻ってきちまうんだけど」
 《あ……うん。えっとな。魔王のこと……なんだが》
「エルのこと?」
 《ああ。その……リョウマ、お前な》
「うん」
 《本当に……本気なんだよな?》
「え? どーゆーこったよ」
 《だからっ》

 急にケントの声が悲壮なものになって、リョウマは驚いた。

 《あいつに、俺らや村のみんなのことで、脅されて……それで王配なんかにならされてるとかじゃないんだよな?》
「は? なわけねーじゃん」

 なるほど、そういうことか。
 ケントはケントなりに、リョウマのことを心配してくれていたらしい。

「残念だけど、そういうのは一切ねえよ。魔王の野郎、よくわかんねーけど俺にベタ惚れなんだよちょっと引くぐらいによー」

 こんな風に言うとなんだか惚気ているような気がして、言っているうちに勝手に耳が熱くなってきた。ケントは「そうなのか?」と少し疑るような声で返事をしてきた。

「そうだよー。もし俺が『てめえなんて大嫌だいきれえだ、あっちいけ。一生顔も見たくねえ』とか言ったら泣くんじゃね? 下手すりゃブチ切れて全世界を滅ぼしちゃったりしてな~」

 いや本当にやりそうで、ちょっと怖いが。ケントが向こうで呆気にとられたのがわかる。

 《……マジかよ》
「マジマジ。ほんと、なんか俺のことになると急に判断力がアホみてえに下がるんだよ、ガキみてえにな。笑っちまうわ」

 ケントがまたもやしばし沈黙した。
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