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第七章 共闘
7 痛み
しおりを挟む「ん、あっ……んう……ってえ! てめ、話をさせろってえ!」
「うん。すまぬ」
「にこにこすんなあああ!」
さて、なぜリョウマが激怒しているのかと言えば。
ふたりで主寝室の寝台に倒れ込んだと思ったら、魔王がそのまま再びリョウマの体を愛撫し始めてしまったからだ。少しの間だけは応じていたのだったが、再び体が熱くなりはじめたのを感じてようやく危機感を覚え、慌てて魔王の顔を押しのけたのである。
「話、するっつってんだろーが! なし崩しでまたヤッて、寝かしつけよーとかしてんじゃねえわっ」
「バレたか」
「こ、こんの野郎っ……」
なにを開き直ってるんだ、この男!
「いや私が悪いのか? そなた、あまりにも睡魔に弱すぎないか」
「俺のせいかよっっ」
いやそれは事実だが。なにしろリョウマにとって、睡魔以上の強敵は以下略。
「わかったわかった。話だな。いいぞ、なんでも申してみるがいい」
「ん、それじゃ……っておい! それはすんのかよっ」
「ん?」と魔王はリョウマの胸の所で目を上げる。その舌と指先が、相変わらずちょんちょんとリョウマの乳首を刺激している。
「せっかくそなたがこうして起きて頑張っているのだから。私は私で好きにさせてもらう。というか、この方が眠気に負けなくていいのではないか?」
「ってめえ……」
「いいから、話してみよ。でないとまた眠ってしまうぞ?」
「ん、んん~っ……」
我慢しようと思うのに、袷の夜着の隙間から差し入れた手で脇腹や内腿を撫であげられると、どうしても甘い声が漏れ出てしまう。が、なにがなんでも理性を保つ努力をするしかない、と腹を括った。
「んっ……だから。彗星の……作戦のさ」
「うん」
「いま、ぼっ、防衛線の……あっ。どのへんまで、いってるのかって……あふんっ」
「うんうん」
「だ、ダイダロスのダンナの作戦はうまくいって……ひあんっ」
「ふふ。ずいぶん敏感になったな、そなた」
「ってえ! 話ができねええええっ! いい加減にしろやクソボケえっ」
「ぶっ」
ついにブチ切れ、思い切り枕をブン投げた。枕はきれいに魔王の顔にヒットしてぽろりと落ちる。
大体、まちがっている。体じゅうを魔王の舌やら唇やら手やらで舐められ撫でられ、キスされまくりながら真面目な話をすること自体が大間違いもいいところなのだ。
と、いうわけで。
魔王が不満そうな顔をするのを完全に無視して寝台の上に座らせ──もちろん正座だ──リョウマもその前に胡坐をかいて、改めて話をすることになった。
魔王は「はああ」と大変わざとらしいため息をひとつついたが、それなりに居住まいを正して答えた。
「二十あった防衛ラインのうち、ダイダロスが向かったのは第十防衛ラインだ」
「第十……ってことは、もう半分は突破されたってことか!?」
「そうなるな」
「そうなるなって……大変じゃねーか。もうそろそろ、みんなを避難させなきゃならねーんじゃ──」
「その通り。その判断は、ほかならぬ今回のダイダロスの働き如何にかかっている。いまは御前会議もその結果待ちだ」
「で、その作戦はいつなんだよ」
「おそらくは、明日だ」
「明日……そうか」
ふむ、と顎に手を当てたところで「もうよいか?」と魔王の手が伸びてきた。軽く首を傾けてそれを躱し、じろりと魔王を見据える。
「ウソじゃねーだろーな」
「そなたに嘘など吐いてどうする」
魔王は平然と言ったが、その目がわずかに細められたのをリョウマは見逃さなかった。いや、わかっている。こいつはそれがリョウマのため、あるいは自国民や地球のためと思えばいくらでも平気で嘘ぐらいは吐く。そんなことぐらいは知っているが、なんとも妙な気分になった。
だが、今の自分に彼を詰る資格はない。彼に黙ってあれこれと事を進めているのはリョウマだって同じなのだから。
リョウマはふう、とひとつ息をついた。
「わ~ったよ。もういい」
「では。続きを致しても?」
「ハイハイ。いたそうぜ、いたそうぜ~」
言ってへらっと笑うと、リョウマは自ら正座している魔王の膝の上に跨って首の後ろに腕を回した。
「せっかく起きてんだ。いっぱいしよーぜー」
「……ああ」
ふっと笑った魔王の顔が、ひどく嬉しそうなのにどこか寂しそうに見えて、なぜか胸がずきりと痛んだ。
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