墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第七章 共闘

4 移住地にて

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 そこからのリョウマは忙しかった。
 まずは「様子を見にいってくる」と、例の《新・人類保護区》に出向き、移住を決めて《勇者の村》からやってきた人々と面会し、ついてきているサクヤとコジロウに会うことにしたのだ。
 ちなみに護衛の武人ダンパは、リョウマが何をどう言っても同行すると言って聞かないので、仕方なく随行してもらっている。実は彼はトリーフォンとの密談の時もついてきており、扉の外に立っていた。だから話の内容までは聞いていなかったが、賢いこの男のことだ、ある程度は予想がついているだろうと思う。
 いざとなればこの男はリョウマが計画しているもろもろのことを魔王に語ってしまうだろう。だが、そうなるとしても仕方がない。魔王エルケニヒには、理解してもらうしかないと思ったのだ。

 移住を決意した村人は、やはり子どもをつれた若い夫婦が多かった。もちろんそれぞれに悩んだことだろうが、子どもの未来を考えれば、結局は移住を決意せざるを得なかったのだということが、話を聞いているとよくわかった。

 みんなとの顔合わせのあと、住居や環境についての感想や今後の改善点などを聞き取ったり、その後の歓迎会としての食事会に参加したりしていたら、その日はすぐに夜になってしまった。
 だがリョウマの訪問の真の目的はここからだった。

「古老たちと話がしたいって? どういうことよ」

 《BLイエロー》サクヤが不審そうな顔で訊いてくる。
 村人たちがすでにそれぞれの住居に引き取って寝静まったころになってから、リョウマはサクヤとコジロウを村はずれに呼び出したのだ。周囲にはもちろん、ダンパ以外の他の人間たちはいない。
「あっちにはもう連絡してあんだ。コレでよ」そう言って、リョウマはふたりに自分の赤い指輪を見せた。
 《勇者の村》には、こちらから魔王が送った水晶の通信機がある。それを使えば、あちらとこちらで話し合いができるのだ。映像での通信も可能だが、今回は音声のみにする予定だった。そのほうがエネルギーの消費量が格段に少なくて済むからだ。
 約束していた時刻がやってきて、リョウマは自分の指輪にそっと話しかけた。

「長老さまたち。俺です、リョウマです」
 《リョウマっ! 無事か!?》
「って。その声はケントか? 無事に決まってんだろーが、なに言ってんだ」

 ちょっと呆れる。が、いきなりでかい声が聞こえてきて少し慌てた。ダンパが見張りに立ってくれるとはいえ、屋外では、誰かに聞かれないとも限らない。リョウマはサクヤとコジロウに目配せをし、ふたりにあてがわれている宿舎へと場所を移した。
 すでにあちらでは、長老たちと残りの《レンジャー》が集まっているようだった。まず、重々しく口を開いたのはゲンゴだった。

 《彗星の件についてはすでに聞かされておるが、村人はやはり、その事実を知らぬため、全員が移動するのは難しいようじゃ。村を離れたくないと申す者が多くてのう》
「やっぱ、そうッスか……」
 《して、此度はなんの連絡じゃ? リョウマ》

 次に訊ねてきたのはムサシだった。

「あー、はい。今回はちょっと、長老のじっちゃんたちに折り入って相談と、お願いがあって」
 《ふむ。話してみよ》

 そこからリョウマは、これまでの彗星殲滅作戦の流れと今後の流れについておおまかに説明し、トリーフォンとの話し合いについても簡単に説明した。
 隣で聞いているサクヤもコジロウも、あちらで聞いている古老たちやケント、ハルトたちも次第に緊張していくのが聞いているだけでもわかった。
 リョウマが話し終えてからも、しばらくは口を開く者もいなかった。が、ようやくムサシの重苦しい声が聞こえた。

 《いや……そうじゃな。実現できるならば、それ以上のことはないのであろうが。しかし……》
「なんもしねえよりかはいいと思うんスよ。俺らだって《レンジャー》だ。《レンジャー》は、どんなに絶望的な状況になっても絶対に未来を諦めない。そういうヤツでなきゃ《レンジャー》にはなれない。そう教えてくれたのは長老と、先輩のみなさんでしょ」

 ここで言う「先輩」というのはもちろん、《レンジャー》の先代たちのことを指す。その中にはこのムサシが当然含まれていた。ムサシは少し前の《レッド》。つまりリョウマにとって大先輩にあたる人だからだ。

 《……うむ。リョウマの申す通りじゃな》

 言ったのはゲンゴだった。他の長老たちも「うむ」「左様じゃの」とうなずきあっているのが雰囲気から伝わってくる。
 そこからもしばらく込み入った話し合いが続き、最終的な結論が出るまでには日をまたいでしまったが、最後はムサシがこう言って話を締めくくった。

 《よくわかった。ではこちらも、できるだけのことはしよう。すべては我ら人間と、この地球の未来のためじゃ。以降のことはトリーフォン殿ともよくよく相談することと致そう》と。
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