墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第七章 共闘

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「それで。内密の話というのはなんでございますかな、配殿下」
「あ~、その。敬語とかやめてくれよ。慣れねーし、いつも通りでいいからよ」
「……了解した」

 数日後。
 リョウマは魔王城の外郭の一角にある応接室で、とある人物と内々に会っていた。執事長ガガノフに頼んで内密に呼び出してもらったのだが、もちろん魔王には内緒だった。
 いかめしくクソ真面目な大鷲の顔を崩さないまま応接セットのソファに座っているのは、四天王のひとり、トリーフォンである。もちろんすべて人払い済みだ。

 獅子の顔をもつ大将軍ダイダロスは、すでに昨日、宇宙戦艦のひとつに乗って例の彗星迎撃作戦に出撃していったところだった。
 目の前のテーブルにガガノフが準備してくれた香り高い紅茶をひと口だけ飲んで、リョウマは切り出した。

「あんたも忙しいだろうから、率直に訊く。いま、彗星殲滅作戦ってどーなってんの」
 トリーフォンの厳しい鷲の瞳がぎろりと光った。
「どう、とは」
「小耳に挟んだんだけど、一応防衛ラインがいくつかあるんだろ? それがどこまで突破されててどのぐらいヤベエのかってことだよ、平たくやあな」
「…………」

 疑り深い瞳がじっとこちらを値踏みするように射抜いてくる。ダイダロスほどの人望はないようだが、この男もまた素晴らしい大将軍だ。硬くて真面目な一方で、緻密な作戦と大胆な決断力に富むすばらしい将である。その男の眼力ともなれば、こちらもついつい緊張してしまう。だがリョウマは、敢えてざっくばらんな態度を保つようにした。

「だってエル……魔王ってば、俺にはろくに作戦内容のこととか教えてくれねーんだもんよー。俺らだって、なんか役に立つことができるんじゃねえかって言ったら『なにもするな、人間たちを守って誘導だけしろ』って言うしよー」
「もっともだ。それでよいのではないか?」
「いや、戦況ぐらい教えてくれよ。こっちにだって覚悟っつーもんが要るだろーがよ」
「無用だ。最悪のシナリオになるとしても、ずっと前のフェーズでみなを脱出させる算段は整えてある。貴様が心配する必要などない」
「んなわけにいかねーだろ!……おっと」

 思わずカッとなりそうになったが、リョウマは慌てて声を落とした。外でガガノフたちが聞いていないとも限らない。
 トリーフォンは堂々たる胸板をそらしてこちらを冷たく睥睨へいげいしている。まあ無理もない。この将軍とは戦場で何度か顔を合わせている。そのたびに、自分たち《レンジャー》は彼の旗下にある兵たちを少なからず傷つけてきたのだ。
 魔王が自分を溺愛していればこそ、こうして一応は話し合いに応じてくれているが、そうでなければただの人間の状態のリョウマなど、一刀両断のもとに首と胴がおさらばしていておかしくない。

「《保護区》の人間たちの誘導は協力するよ。当然だろ? そこは約束するし、任せてほしい」
「当然だな」
「じゃなくて、戦況を教えろっての」
「それを聞いてどうするのだ」
「本格的に危なくなったら、魔王も作戦に参加するって聞いた。それがどのタイミングか知りてえんだよ」
「知ってどうすると? 貴様が作戦に参加することは、陛下がお許しになっていないはずだが」

(あ~。ん~……)

 やはり難しいか。というか、人選を誤ったのかもしれない。
 この石頭の将軍に訊いた、自分がバカだったらしい。
 リョウマは膝の上の拳をぎゅっと握りしめた。

「……頼むよ。トリーフォン」
「…………」
「あんたらを裏切るためじゃねえ。むしろ、協力したいから訊いてるんだ。俺らだって人間だけじゃなくて、地球を守るためにここにいる。なんもしないで、あんたらに守られているだけなんてイヤなんだよ」
「…………」
「そりゃ、エルには断られたけどさ。俺らにだって、きっとなにかはできると思う。今のうちに準備しとけば、土壇場で役に立つこともあるかもしんねえだろ。戦いにはどんなときも、いつ、どんなアクシデントが起こるかわかんねえ。だから十分すぎるぐらいの手数を準備をしとくに越したこたあねえ……って、うちの古老のじいちゃんたちはよく言ってる。あんたらはそうじゃねえの?」
「…………」

 トリーフォンが腕組みをしたまま、ぎゅっと目を細めてさらにきつくリョウマを睨みつけてきた。リョウマも負けじと睨み返す。
 ずいぶん長い沈黙があった。
 が、ついにトリーフォンが低く言った。

「言いたいことは分かった。で? 自分は何をすればいいのだ」
「やった! ありがと、トリーフォン。恩に着るぜっ」
 思わずバンザイをしたら、再びじろりと睨まれた。
「気安く名前を呼ぶでないわ」

 フン、と横を向いたトリーフォンだったが、すでにその顔からは先ほどまでの険は薄らいでいた。
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