107 / 136
第六章 迫りくるもの
18 魔法樹
しおりを挟む「うっ、あっ……も、無理、あ、ああっ……!」
そういう予感はあったけれど、やっぱり先に白旗を揚げたのはリョウマだった。そこに至るまで、いったい何度自分がイッたのかもよくわからなくなっていたが。魔王は何度かリョウマの中で達し、腹が煮えそうなほど熱いものをぶちまけてくれた。
そのたびに、リョウマは全身を震わせて感じた。とんでもない悦楽だった。
体の細胞が全部、発光しながら一度霧散して、なかなか戻ってこないような気がした。
腹いっぱいに注がれた魔王のそれは、まずは腰のあたりで充満し、次いでリョウマの全身に広がっていった。やっぱりすさまじい熱量で。
「はあ、はあ……あ、ふうう……」
ベッドに体を投げ出して荒い息をつくことしかできなくなっているリョウマの体を、魔王は大事な宝物でも扱うようにして丁寧に拭き、汚れを取りさってくれた。ここでもまた、魔法がお役立ちであることがよくわかった。
「ふわあ……あんがと。てか、もうダメ……俺」
「すまない。初めてなのに、少々無理をさせすぎたな」
「いやあ……つうか、面目ねえ。これでも体力あるほうだと思ってたのによー。くっそー、ちょっと悔しい」
「ははは。今は《鎧装》できないのだから無理はない。《レッド》のそなたが相手なら、一体何ラウンドいけるのだろうな。それはそれで楽しみだ」
「どアホ。そんな想像すんなって~の」
リョウマが少し落ち着いてきたところで、魔王は改めてリョウマを抱き上げ、湯殿に向かった。湯殿は魔王の寝室から直接行けるように、特別な通路が設けられている。その通路のどこにも使用人の姿はなかった。みんな、「魔王の下僕」として自分の分をわきまえているらしい。
湯殿の床にそっとおろされてはじめて、リョウマは自分の下半身の状態に驚いた。
「うっわ、マジか……立てねえ」
「うん。無理するな」
なんだかすぐに生まれたての小鹿のように足を震わせてよろめいてしまい、非常に恥ずかしくなる。が、魔王は当然といった顔ですぐにまたリョウマを抱き上げ、湯舟に入った。そのまま「スポンジ」とかいうものを使い、丁寧にリョウマの体をきれいにしてくれる。
心地よい疲労と眠気が襲ってきて、リョウマはもうほぼなすがまま、ぼんやりと体を魔王の手に預けていた。
「ああ……そろそろ浮かんできたな」
「んあ?」
「見えるようにして進ぜよう。しばし待て」
魔王は満足げに微笑むと、リョウマを抱き上げ、自分とリョウマの体を拭きあげてから、巨大な姿見の前に立った。まだちゃんと立てないリョウマの腰をしっかりと支えて、自分の体が見えるようにしてくれる。
「うお。これが……?」
「そうだ」
見れば自分の性器のあたりから、ぼんやりと桃色の木の枝のような模様が浮き上がっていた。いわゆる自然な木の枝のようではなく、くるくると繊細な曲線を描いた不思議な紋様だった。
「今は小さいし、まだ薄桃色だが。行為を重ねるごとに成長し、やがて濃紅色に変わってゆく。私の魔力による色は赤なのだ」
「へー。これが赤に……。ま、ちょうどいいやな。俺も《レッド》だし」
「なるほど。そうだな」
魔王は言って、リョウマのおでこのあたりに上からちゅっとキスを落とした。
「後ろにも出ているぞ」
「えっ。後ろにもかよ!」
くるりと体を反転させられて見れば、言われた通りだった。尻の穴があるあたりから、やっぱりぼんやりとした可憐な桃色の木──たしか《魔法樹》と呼ばれていた──の紋様が浮き出ている。
「うーん。両側ともって、なんかカッコ悪くね?」
「そうか? 男子の場合はこれが普通だがな」
「そーなん?」
「ああ」
魔王はそのまま、前からリョウマを抱きしめて、頭頂部にまたキスをした。
「嬉しいぞ。これでそなたは名実ともに《魔王のもの》ということになった」
「ふ、ふーん……」
なんだかちょっとくすぐったい。そんなに喜んでもらえるのはまあ、嬉しいが。というわけでまた例によってこっ恥ずかしさ隠しのための憎まれ口をききたくなった。
「てか、俺はなにがどうしようが『俺のもん』だっつーの。そんなにだれかのモンとか気になるんなら、てめえが俺のもんになれっつーのよ」
「もちろんだ。私は当然、そなたのものだよ、リョウマ」
「……あ、あうう。そ、そっか……」
いきなり綺麗なカウンターパンチを食らって、絶句そして赤面するしかないリョウマだった。
これはダメだ。絶対に勝てない。ほかでもないあの魔王から、悪意のかけらもない善意と好意でぶちかまされてしまうって、いったいどういう状況なんだ。なんとかしてくれ。
「愛してるぞ……リョウマ」
「うわ、うわわわわ。もう! いいからそれ、やめろってえええ!」
「あっははは!」
必死で両耳をおさえたリョウマを、魔王は楽しげに高笑いしてガウンで包み、再びひょいと抱き上げた。そうしてそのまま、寝室への通路を穏やかな足取りで戻っていった。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる