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第六章 迫りくるもの
11 辱め ※
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「まあ、いつまでそう言っていられるかは見ものだな。……やれ」
言ってプローフォルがくいと顎を上げると、周囲にいた筋肉バカどもがのそのそとこちらに近づいてきた。
(な……)
彼らが発散しているのが単なる嗜虐欲求だけでないことに気づいて、リョウマは戦慄した。奴らは残らず、軍服の下にある股間のイチモツを大いに膨らませていたのである。
青ざめて無意識に後ろへいざろうとしたリョウマを見て、プローフォルはますます目を細めた。
「まあ、散々あの魔王に可愛がられてきたのであろうし、今さらそれ以上の愉悦は与えてもらえぬかもしれぬが。まあ我慢せよ」
「んなっ……なに言ってやがんだてめえ! うおら、やめろ! あっち行け、てめえらっ」
だが抵抗は虚しかった。
男たちは子どもでも扱うようにリョウマの肩や四肢を抑え込むと、軍用ナイフで無造作に衣服をビリビリに裂きはじめたのだ。
「っくそ! やめっ……やめろっ! くそうっ、バッキャロ!」
もちろんリョウマは暴れに暴れた。が、縛られている上に多勢に無勢。あっというまに腕以外の、すべての衣服を剥ぎ取られてしまった。男らの腕がぐい、とリョウマの足を左右に開かせる。
じろりとそこを見て、プローフォルが嫌な笑いを浮かべ、自分の口の周りをべろりと舌で一周した。
「うぐうっ……」
なんという屈辱。
あまりの怒りと羞恥と屈辱とで、目の前が赤黒く染まる。脳がぐらんぐらんと揺れる。
「てンめええ……っ。この、ドエロトカゲ野郎! 殺す、ぜってえぶっ殺す。クソ無能の将軍野郎が……ぐうっ」
いきなりガツンと、男の一人にブン殴られた。口の中にまた新たな鉄錆の味が広がる。それをベッと地面に吐き出して、なおもリョウマは相手を睨みつけていた。
「まったく、どこまでも口の減らない青二才よ。せいぜい黙って──ん?」
が、突然プローフォルがぴたりと動きを止めた。なぜかまじまじとリョウマの股間を見つめている。それから徐に男どもに言って、リョウマの体をうつぶせにさせた。
驚いたような声が降ってくる。
「……なんと。貴様、まだだったのか?」
「はあ? 何がだよっ」
何もかもを男どもの視線に晒された格好で、リョウマは吠えた。
「まだ」というのがなんのことだかは、うっすらと想像がつく。だがそんな、魔王にとってもトップシークレットに属するであろう情報を、「はいそうです」なんぞとあっさり開示するつもりはない。
が、なぜかプローフォルは確信に満ちた顔を崩さなかった。
「ごまかしても無駄よ。その方、前にも後ろにも一切《刻印》がないではないか」
「こくいん……?」
はて。それは一体なんのことだ。つい「おいしいの?」とアホなことを考える自分を叱咤して、リョウマはさらに噛みついた。
「うるっせえ! なんでもいいからどきやがれ。てめえら、指一本でも触ってみやがれ、首が飛ぶじゃ済まねえことになんぞ」
「左様なこと、すでにみな覚悟しておるわ。くだらぬ。いいからやれ」
「はっ」
ギャーギャー騒いでいるリョウマに構わず、男どもはまた改めてリョウマの体をひっくり返し、足を広げさせた。
(くっそう……! ちっくしょうっ)
悔しくてたまらない。女だったら平気とかそういうことではなしに、男の自分がこんな風に性的に蹂躙されるなんて、沽券に係わると思う。いやもちろん、あの《魔の森》で魔王のやつに似たようなことはされてしまった立場ではあるのだが。
リョウマはめちゃくちゃに暴れ、もがいて、口をかぎりに罵りの言葉を吐き散らかした。それはもう、かなり下品な罵倒の言葉を含めて。
プローフォルは次第に苛立ちはじめ、周囲の男たちもだんだんとより攻撃的な気を発し始める。男らはつぎつぎにリョウマを殴りつけ、蹴りつけて黙らせようと躍起になった。
そのたびに、顔にも胸にも腹にも、どんどん傷が増えていく。
やがて遂に、プローフォルがブチ切れたように叫んだ。
「もうよいっ。私がやる!」
「うぎいっ?」
言うなり、男たちにリョウマを抑えこませたまま、プローフォルが下穿きの前を寛げて迫ってきた。男の禍々しい性器が、見たくもないのに目の前に屹立しているのを見て、リョウマは背筋が寒くなった。
(っくそっ……サイテーかよっ)
もうダメだ。男たちに体重を掛けられて四肢はほとんど動かせない。どうにもならない。
俺はもう、こんな野郎にむざむざと犯されるしかないのか。情けない。悔しい。
(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうっ……)
血がにじむほどに唇を噛みしめて、憎悪の限りをこめて恐竜将軍の顔を見上げる。汚らしい性器が自分の最奥の入口にびたりとくっつく感触がして、全身が粟立った。
「え……エルっ……!」
──タスケテ。
と、言葉にしたつもりはなかった。
だが思わず目尻から悔し涙がひと粒だけ、ぽろりと零れた。
「……え?」
「ひえっ……」
ぎゅっと閉じた目の向こうで、将軍と男の奇妙な喉声が聞こえた。今にも踏み込んでくるかと思われた将軍の性器は、いつのまにかリョウマの股間から離れている。
そっと目を開けると、そこには信じられない光景があった。
「ギャッ、グエッ……グエエエッ……」
プローフォル将軍が、口から泡を吹いて仰け反っている。全身がビクンビクンと右に左に震えている。その両足は地面から離れていた。
プローフォルの頭部をなにか、でかい爪の生えた巨大な手ががっちりと掴み上げ、腕ひとつで持ち上げている。ニ十センチはあろうかという禍々しい爪がプローフォルの鱗に覆われた顔に突き刺さり、そこからどくどくと赤い血の筋が垂れ落ちている。爪の一本は、明らかにプローフォルの片目を貫いて完全に潰していた。
リョウマを押さえつけていた兵士らはみな恐怖のために凍り付いたように動かなくなり、皮肉にもそのために、まだリョウマを離してくれていなかった。
《答えよ》
プローフォルの後ろから、この世のものとも思えないような声がした。
《だれが許した? 魔王の持ち物、至宝の存在に、貴様らの汚い手で触れてよいなどと……?》
「雷鳴がとどろくような」と言うが、まさにそんな感じだった。
普通の人間が発する声とはまったく違う。耳に届くのと同時に、心そのものも激しく揺り動かされるような、そんな圧倒的な圧力のある声だった。
言ってプローフォルがくいと顎を上げると、周囲にいた筋肉バカどもがのそのそとこちらに近づいてきた。
(な……)
彼らが発散しているのが単なる嗜虐欲求だけでないことに気づいて、リョウマは戦慄した。奴らは残らず、軍服の下にある股間のイチモツを大いに膨らませていたのである。
青ざめて無意識に後ろへいざろうとしたリョウマを見て、プローフォルはますます目を細めた。
「まあ、散々あの魔王に可愛がられてきたのであろうし、今さらそれ以上の愉悦は与えてもらえぬかもしれぬが。まあ我慢せよ」
「んなっ……なに言ってやがんだてめえ! うおら、やめろ! あっち行け、てめえらっ」
だが抵抗は虚しかった。
男たちは子どもでも扱うようにリョウマの肩や四肢を抑え込むと、軍用ナイフで無造作に衣服をビリビリに裂きはじめたのだ。
「っくそ! やめっ……やめろっ! くそうっ、バッキャロ!」
もちろんリョウマは暴れに暴れた。が、縛られている上に多勢に無勢。あっというまに腕以外の、すべての衣服を剥ぎ取られてしまった。男らの腕がぐい、とリョウマの足を左右に開かせる。
じろりとそこを見て、プローフォルが嫌な笑いを浮かべ、自分の口の周りをべろりと舌で一周した。
「うぐうっ……」
なんという屈辱。
あまりの怒りと羞恥と屈辱とで、目の前が赤黒く染まる。脳がぐらんぐらんと揺れる。
「てンめええ……っ。この、ドエロトカゲ野郎! 殺す、ぜってえぶっ殺す。クソ無能の将軍野郎が……ぐうっ」
いきなりガツンと、男の一人にブン殴られた。口の中にまた新たな鉄錆の味が広がる。それをベッと地面に吐き出して、なおもリョウマは相手を睨みつけていた。
「まったく、どこまでも口の減らない青二才よ。せいぜい黙って──ん?」
が、突然プローフォルがぴたりと動きを止めた。なぜかまじまじとリョウマの股間を見つめている。それから徐に男どもに言って、リョウマの体をうつぶせにさせた。
驚いたような声が降ってくる。
「……なんと。貴様、まだだったのか?」
「はあ? 何がだよっ」
何もかもを男どもの視線に晒された格好で、リョウマは吠えた。
「まだ」というのがなんのことだかは、うっすらと想像がつく。だがそんな、魔王にとってもトップシークレットに属するであろう情報を、「はいそうです」なんぞとあっさり開示するつもりはない。
が、なぜかプローフォルは確信に満ちた顔を崩さなかった。
「ごまかしても無駄よ。その方、前にも後ろにも一切《刻印》がないではないか」
「こくいん……?」
はて。それは一体なんのことだ。つい「おいしいの?」とアホなことを考える自分を叱咤して、リョウマはさらに噛みついた。
「うるっせえ! なんでもいいからどきやがれ。てめえら、指一本でも触ってみやがれ、首が飛ぶじゃ済まねえことになんぞ」
「左様なこと、すでにみな覚悟しておるわ。くだらぬ。いいからやれ」
「はっ」
ギャーギャー騒いでいるリョウマに構わず、男どもはまた改めてリョウマの体をひっくり返し、足を広げさせた。
(くっそう……! ちっくしょうっ)
悔しくてたまらない。女だったら平気とかそういうことではなしに、男の自分がこんな風に性的に蹂躙されるなんて、沽券に係わると思う。いやもちろん、あの《魔の森》で魔王のやつに似たようなことはされてしまった立場ではあるのだが。
リョウマはめちゃくちゃに暴れ、もがいて、口をかぎりに罵りの言葉を吐き散らかした。それはもう、かなり下品な罵倒の言葉を含めて。
プローフォルは次第に苛立ちはじめ、周囲の男たちもだんだんとより攻撃的な気を発し始める。男らはつぎつぎにリョウマを殴りつけ、蹴りつけて黙らせようと躍起になった。
そのたびに、顔にも胸にも腹にも、どんどん傷が増えていく。
やがて遂に、プローフォルがブチ切れたように叫んだ。
「もうよいっ。私がやる!」
「うぎいっ?」
言うなり、男たちにリョウマを抑えこませたまま、プローフォルが下穿きの前を寛げて迫ってきた。男の禍々しい性器が、見たくもないのに目の前に屹立しているのを見て、リョウマは背筋が寒くなった。
(っくそっ……サイテーかよっ)
もうダメだ。男たちに体重を掛けられて四肢はほとんど動かせない。どうにもならない。
俺はもう、こんな野郎にむざむざと犯されるしかないのか。情けない。悔しい。
(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうっ……)
血がにじむほどに唇を噛みしめて、憎悪の限りをこめて恐竜将軍の顔を見上げる。汚らしい性器が自分の最奥の入口にびたりとくっつく感触がして、全身が粟立った。
「え……エルっ……!」
──タスケテ。
と、言葉にしたつもりはなかった。
だが思わず目尻から悔し涙がひと粒だけ、ぽろりと零れた。
「……え?」
「ひえっ……」
ぎゅっと閉じた目の向こうで、将軍と男の奇妙な喉声が聞こえた。今にも踏み込んでくるかと思われた将軍の性器は、いつのまにかリョウマの股間から離れている。
そっと目を開けると、そこには信じられない光景があった。
「ギャッ、グエッ……グエエエッ……」
プローフォル将軍が、口から泡を吹いて仰け反っている。全身がビクンビクンと右に左に震えている。その両足は地面から離れていた。
プローフォルの頭部をなにか、でかい爪の生えた巨大な手ががっちりと掴み上げ、腕ひとつで持ち上げている。ニ十センチはあろうかという禍々しい爪がプローフォルの鱗に覆われた顔に突き刺さり、そこからどくどくと赤い血の筋が垂れ落ちている。爪の一本は、明らかにプローフォルの片目を貫いて完全に潰していた。
リョウマを押さえつけていた兵士らはみな恐怖のために凍り付いたように動かなくなり、皮肉にもそのために、まだリョウマを離してくれていなかった。
《答えよ》
プローフォルの後ろから、この世のものとも思えないような声がした。
《だれが許した? 魔王の持ち物、至宝の存在に、貴様らの汚い手で触れてよいなどと……?》
「雷鳴がとどろくような」と言うが、まさにそんな感じだった。
普通の人間が発する声とはまったく違う。耳に届くのと同時に、心そのものも激しく揺り動かされるような、そんな圧倒的な圧力のある声だった。
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