墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
上 下
65 / 189
第四章 勇者の村

23 魔王軍四天王

しおりを挟む

 魔王とリョウマがその部屋に入ったとき、四名の将軍はすでに着座していた。
 謁見の間にもいくつか種類があるようだったが、そこは少人数での会談に使われる部屋のようで、比較的小ぢんまりとした空間だった。使用人などはだれもおらず、いるのは会談に参加する六名だけだ。
 中央に大きめの円卓が置かれ、それを囲むように将軍たちが座っている。魔王は悠然とその背後を通り抜けると、もっとも上座に当たる場所に席を占めた。そのすぐ隣に、なぜかリョウマが座らされる。
 もちろん最初、リョウマは断った。だが魔王はリョウマの言葉など完全に無視した。本来椅子のなかった場所に、侍従にいいつけてわざわざ椅子を持ってこさせたのだ。

 どの将軍もダイダロスに負けず劣らずの巨躯の持ち主であり、いずれも堂々たるたたずまいである。三名は、それぞれ大鷲の顔を持つ者、イノシシの顔を持つ者、そしていかにも恐ろしげな肉食恐竜の顔を持つ者だった。
 魔王がリョウマの紹介をすると、大鷲顔はみずからトリーフォン、イノシシ顔がサムイル、そして恐竜顔がプロ―フォルとそれぞれ自分の名を名乗った。

 予想通りというか、三名はやっぱり奇妙な目をして魔王の隣に座る黒髪の人間を見つめてきた。やがてそれを「わが王配にしようと思う」と魔王が紹介したところで、「なんと!」と表情を変える者もいた。特に顕著なのはイノシシ顔のサムイルだった。

「そのような人間ごときをとうとき王配殿下になどと……まさか、本気ではございませんでしょうな、陛下!」
「いや、本気だが?」
 魔王はにこにこ顔のままそう応じた。
「ついでに言うと、これはあの《勇者の村》の者だ。そなたらもよく存じておろう。あの《ビーストランド・レンジャー》とやらいう者のうち、赤い武装をした者で、みずからを《BLレッド》などとも呼んでおるな」
「なっ……なんですとっ? あのレッドですと? その者がっ!」

 イノシシ顔の将軍が剣に手をかけて立ち上がり、やがて口をぱくぱくさせて押し黙るまで、魔王はダイダロスとやったようなやりとりをもう一度繰り返した。しまいには完全にあきれ果てたていで、イノシシ将軍はどかりと席に腰を落とした。

 あとの二人はその様子を見ているだけで比較的静かだった。
 大鷲顔のトリーフォンは落ち着いた人のようで、終始難しく厳しい顔はしていたが声を荒げたりはしなかった、ただ猛禽類に特有の厳しい眼光で、終始じいっとリョウマを睨み据えていた。リョウマはその眼光だけで皮膚がぴりぴりしてきた。それだけで、すでに顔にいくつも穴が開いたような気分になった。

 恐竜顔の──あとで魔王から聞いたところによれば、それは古代文明の中で「T・レックス」などと呼ばれた恐竜によく似ているのだそうだ──プローフォルの目はうすら寒く思うほど酷薄で、人間味をまったく感じなかった。なんとなく、その男の周囲だけ空気の温度が低くなっているように思われるほどだ。
 時おり短く「ふむ」とか「なるほど」とか「なんと」とか言うぐらいでほとんどそれらしい発言はせず、基本的に水を打ったように静かだ。だがその裏に何か底知れないものを感じて、リョウマは背筋が冷たくなるのを覚えた。
 ともあれ、最終的には三名とも、しぶしぶながら「陛下の決定に逆らうなどということはございませぬ」というところで決着した。

「さて。落ち着いたところで早速本題に入ろうではないか」

 魔王が両手を叩いてこう言ったときには、すでに一時間ほどが過ぎていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...