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第四章 勇者の村

12 保護区訪問

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 というわけで、その日はダンパ以下数名の騎士と、リョウマ付きの侍従ひとりを伴っての《人間保護区》への訪問になった。
 魔王がそうしたように身ひとつで空を飛んでいくのかと思ったら、彼らは乗り物を使うらしい。魔族だからといって、全員が全員空を飛べるのではないようだ。まあ、それは今のリョウマだってそうなのだが。
 乗り込んだのは、街なかで見たものよりは大きいが、よく似たような白い飛行機だった。操縦者などはおらず、乗って行き先を命令するだけで安全に飛行できるものである。それを使って、一行はあっというまに《保護区》に到着した。

 今回は事前に連絡が行っていたらしく、村人たちが最初から集まってリョウマの到着を待ってくれていた。
 前回も話をした長老がにこにこしながら出迎えてくれる。この人は、名をマサチカというらしい。

「いらっしゃいませ、リョウマ様。先日来にございますな。あいや、今は配殿下とお呼びせなばならぬのですかな」
「いやいや『リョウマ』で全然いいから。むしろそっちでお願いします、マサチカさん」

 あっちでもこっちでも、似たようなやりとりが多すぎる。その事実にちょっとうんざりしつつ、リョウマは村人たちの好奇や疑いのこもった視線の中を、にこにこしながら通り過ぎた。小さな子が笑いながら手を振ってくれるのには、こちらも思わず手を振り返す。

 前回も通された長老の家の一室に落ち着いて、まずは茶や菓子をふるまわれた。場には長老と、この村の重鎮たちらしい中年から老年の男女が十名ばかり集まっている。リョウマは大きな円卓の前に座っているが、ダンパをはじめとする騎士たちと侍従は背後に立っていたし、茶菓子などに口をつける様子はなかった。

(さてと。どっから話をしようかな)

 実は今回、長老たちには大事な話をせねばならない。魔王からも、「その話はぜひ、そなたの口からしておくがいい」と許可を得ている。できることなら、次回の《勇者の村》との会談の前に話を通しておきたい、というのが魔王の望みだった。

「ええっと。まずは、ちゃんと自己紹介させてください。俺はリョウマ。真田リョウマといいます。ちょっと前に、ここからずっと遠いとこにある《勇者の村》から来ました」
「なんと。《勇者の村》ですか? ということは……」

 ざわっと一同がざわめいた。ただし、みんな落ち着いた様子なので、ごく控えめなざわつきかたに過ぎない。みんなはすぐに静かになって、再びリョウマに目を戻した。

「知っている人もいると思うんですけど、俺は《ビーストランド・レンジャー》つまり《BLレンジャー》の一員なんです。そこでは《BLレッド》と呼ばれています」
「なんと……!」
「《BLレンジャー》? この者が?」

 一同のざわつきを、最長老のマサチカが手をあげただけであっという間に静めた。さすがの貫禄である。

「左様にございましたか。で、その《レッド》であるあなた様が、われらにどんなお話があってこちらへ?」
「……ええと。これは魔王からも話しておいてくれって頼まれたことなんですけど」

 そこでリョウマは、先日魔王と《勇者の村》の面々との間でおこなわれた会談について簡単に説明をした。長老たちは驚く者、いぶかしむ者、さまざまに見える。反感まではないようだったが、どこか少し嫌悪感を覚えている者がいるらしいのが、やや気になった。

「えっと、それで。聞いてみたかったんですけど、みなさんって俺たち《レンジャー》のこととか《勇者の村》のこととかって、どう思っているんでしょう」
「うむ……」

 マサチカはやや難しい顔になって黙りこんだ。
 リョウマもつい、肩に力が入ってしまう。実際、この人たちは《BLレンジャー》をどのような存在だと思っているのか。普通に考えれば同じ人間なのだから、親近感を持ってくれていてもいいとは思う。だが、ここは魔王が治めているエリアだ。そう一筋縄ではいかないのかもしれない。それはリョウマも気になっていたところだったのだ。
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