墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
上 下
14 / 217
第二章 魔王エルケニヒ

4 覚醒

しおりを挟む

 リョウマはそこから数時間で目を覚ました。
 そこまでに、エルケニヒはこの場所でも使える範囲の魔法を使い、彼の体を清潔な状態に整えてやっていた。もと通りに服を着せ、自分の長いマントでくるんで寝かせ、その隣に自分も横になって少し休んでいたのだが、その事実にリョウマはひどく驚いたようだった。

「ひょえっ……? てっ、てめえ、いったい何を──」

 そこまで言ってから、気を失うまでの顛末を一気に思い出したのだろう。またもや「ひええっ」と叫んで、今度は首まで真っ赤に染まった。目玉がありえないほどキョロキョロ動きまくっている。彼はまことに、まったく嘘がつけないタイプなのだ。すべてがこの通り、顔に出る。

「おはよう。体はどうだ? 少しは体力も回復したかな」
「はあ? ってめ、何をしれっと……なにしやがったんだこのどクズ野郎っ!」
「仕方がないではないか。私の体液にあそこまで反応するとは思わなかったのだから。反応しすぎて『もっと、もっと』と尻を振っておねだりを始めたのはお前のほうだぞ。こちらは我慢するのにずいぶん苦労したのだがな」
「なっ、なな……んなこと言ってねえわ! ウソ言うなあ!」

 リョウマが憤慨してとび起きた。いや、とび起きようとした。

「っておい!? こらっ、はなせ!」

 これを見越して、事前に自分のマントで彼をぐるぐる巻きにしておいたのだ。エルケニヒはその状態のリョウマを楽しげにだきしめてにこにこ笑った。

「まあ、よいではないか。すでに情を交わした仲なのだし。苦しゅうないぞ」
「どわぁれが、てめえと情を交わしたんだこのすっとこどっこいがあ! 苦っしいわ、苦しみまくりだわ放せドスケベ魔王~!」

 ジタバタ暴れて叫びまくっても、この「ミノムシ状態」ではまったく恰好がつかない。暴れるといっても、せいぜいエビ反り状態になるぐらいが関の山だ。
 口の悪さもわんぱくさも相変わらずだが、そこが可愛いのだから魔王としてはまったく問題ない。それに、それはどこか「起こった事実をなんとか覆い隠そう」という努力のようにしか見えなかった。まあ成功はしていなかったが。
 エルケニヒは真っ赤になって暴れているリョウマの額に、ちゅっと軽くキスをした。

「ひぎえあああっ!」
「まあ確かに最後までは致していないがな。そのうち必ず、最後まで致して最高の天国を見せてみせるゆえ、楽しみにしておいてくれ」
「なっ……なな、なにが最後までだこのスカポンタン野郎があああ! いいからこれを解け、放せっつーんだバカ野郎!」
「はっはははは!」
「んなっ……」

 こんな風に大口を開けて笑うのは久しぶりだ。楽しくて仕方がない。リョウマにとっては初めて見る顔なのだろう。突然、ぎょっとなって黙り込んでしまった。「鳩が豆鉄砲を食ったような顔」とは、きっとこんな顔のことを言う。
 エルケニヒはひとしきり、ぐるぐる巻きのままのリョウマの背中をばしばし叩いて大笑いをしたあと、ひょいとそのまま抱き上げた。

「おわあっ? な、なにすんっ……!」
「戻るぞ。いつまでもこんな森にいるのはよくない。気分が悪いし、何より運気が下がる」
「そりゃ同感。ってそーゆー話じゃねえ! どこ行くんだよ、ってえか下ろせってえええ!」

 やっぱりじたばた、わーわー言い続けるリョウマのことはもうきれいに無視して、エルケニヒはそのまま大股に歩き始めた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

できる執事はご主人様とヤれる執事でもある

ミクリ21 (新)
BL
執事×ご主人様。

処理中です...