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第一章 墜落

9 囁き ※

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「あっ……あ、や、やめ……っ」

 自分の意思などお構いなく、己の腰がゆらゆらと微妙にゆらめくのを、リョウマは情けなくも自覚するほかはなかった。
 それは十分に物欲しげに見え、魔王も間違いなくそのように受け取ったようだった。後ろから嬉しげな吐息が、自分の耳に流し込まれてきた。

「ほう、体は正直ではないか。このように可愛らしく腰を揺らして」
「うっ、うるせっ……や、やめろ、やめろおおっ!」
「断る」

 いま気づいたが、魔王の指先が変化している。先ほどまで、少しでも触れれば傷をつけられそうだった長くて黒い爪が、人間のそれのように丸い形になっているのだ。その指先が、ぐちぐちとリョウマの先端を刺激している。そのたびに、強すぎる甘い刺激が脳天まで貫くようだった。

「はっ、う……ん、あっ、ああ……っ」

 胸が激しく拍動している。こんなことをされたのは初めてだ。男女問わず。まして相手が男で、しかもあの魔王だなんて。とても信じられない。うっかりするとこれだけの刺激で気が遠くなりかけた。
 リョウマの腰はさらに主人の言うことを聞かなくなっていく。魔王からもたらされる刺激に応え、前後にみっともなく揺れ出している。

「あ、いや、やだっ……も、やめ……っ」
「断る。こんなに可愛いものを。それに、このままやめるとつらさはそのままになってしまうぞ。それでは最悪、気が狂うと言うておろう」
「あ、あ……ああんっ」

 腹の奥底から、あの最後の爆発があがってくる。リョウマは息を詰め、あの心地よい解放を待ってふっと体に力を込めた。が、魔王はその絶妙なタイミングで巧みにリョウマ自身の根本だけに力をこめ、射精を止めてしまった。

「あっ? や、なにすんっ……いやだ……っうううっ」
「ふふ」

 魔王が後ろから、リョウマの耳たぶを唇だけでんだ。さらにはそっと耳の中に舌を差し入れて舐められる。

「もう少し我慢してみよ。すぐに気をってしまうと、楽しみが持続せぬぞ。どうせならもうすこし楽しもうではないか」
「や、やあっ……やだ、くっそう! イかせろよおおっ」

 リョウマは必死でジタバタもがいた。しかし魔王の手はやっぱりびくともしない。リョウマの根元を指の一本だけで制しておいて、他の指で竿をゆるゆると扱き、先端の穴をぐりぐりするのもやめない。
 リョウマの腰の欲望は、放出される快感を求めて暴れまわっている。耐えがたい。こんなもの、独りでやったときはもちろん女が相手のときでも決して経験したことがなかった。

「やだ、やだっ……イく、イきたいいいっ」

 情けないが、ほとんど半泣きのような状態になってしまう。もうプライドがどうとか言っていられるほどの余裕なんて完全になくなってしまっている。魔王の手をなんとか逃れようとめちゃくちゃに腰を動かしてみるが、決して逃げられない。それどころか、そのために余計に刺激が強くなって、気が狂いそうになった。

「や、やだ、やだあああっ」
「可愛いぞ、リョウマ。そういう顔が見たかった。ずっと」
「うう……っ?」

 耳元で囁くように言われたことは、確かに耳に入っていた。だが、それがリョウマの脳に届くことはない。今はひたすら、爆発しそうな腰の中の欲望の塊をどうにかすること。それしかもう頭になかった。
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