白と黒のメフィスト

るなかふぇ

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第十五章

3 インテス様の夢 ※

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 みんなが去ってしまったあと、相変わらずにこにこしているインテス様とふたりきりにされてしまったシディはひたすらもじもじしていた。

(いや、こんな急に『ふたりきりにしてやるよ』とか言われて置いていかれてもっ……!)

 あらためてこんな風にされたら身の置きどころがない。恥ずかしくてインテス様のお顔もちゃんと見られず、シディは慌ててわたわたと立ち上がった。

「えっ、えっとあの……オ、オレもそのっ、子どもたちに教える準備とかしなきゃですよねっ?」
「それは慌てなくてもいいだろう。いいからこっちにおいで、シディ」

 「自分の隣へ座れ」とばかりにひょいひょいとさし招かれて、それを固辞する理由なんてあるはずもない。シディは首から上がかあっと熱くなるのを感じながら、おずおずと言われるままにインテス様に近づいた。

「うわっ……?」
 急にぐいっと腰を抱き寄せられ、そのままインテス様の胸に倒れ込む形になる。
「あっ、あのあのあのっ……」
「早くおいで。待ちきれない。せっかくみんなが時間をくれたんじゃないか」
「で、でも」
「このところずっとバタバタしていて、そなたとゆっくり時を過ごすことも叶わなかったからな。例の件は今すぐどうこうというのでもなし、必要な準備はレオたちがやってくれるしな」
「う、ううう……」

 言いながらシディを抱きしめ、耳と言わず頬と言わず鼻先といわず、つぎつぎ口づけを落とされて何も言えなくなってしまう。

「今日はこのまま、夜までふたりでゆっくりしよう。久しぶりにゆっくり食事をして、いっしょに入浴して──いいだろう? シディ」
「はうううっ」

 耳と髪の境目のところに鼻先を突っ込んでぐりぐりされ、黒い耳を唇だけで甘噛みされると、もう腰がくだけてきてしまう。

「知ってるかい? シディ」
「は、はい……?」
「私にはいろいろ夢があってね」
「ふう……っ?」
 変な返事になってしまうのは、その瞬間にぺろりと首筋を舐められたからだ。
「ゆ……ゆゆゆめ?」
「そうだ。シディにはもっともっと、私に甘えてほしい」
「えええ?」
 
 そんな。これ以上、この人に甘やかされたら自分はどうなってしまうのだろう。

「うーん。甘える、というとちょっと違うのかもしれないな。……そう、『おねだり上手』になってほしい」
「は、はああっ?」

 びくっとすくませた体を、「あはははは!」と笑われながらまた思いきり抱き締められた。





 それからは思っていた以上に大変だった。
 インテス様は夕食の間もずっとシディを自分の膝に乗せたままだったし、そのまま匙をシディの口に運ぶまでしてくださった。猫ではないけれど、猫可愛がりもいいところだ。

「うううっ……インテス様。も、もうお許しをっ……」
「なぜだい? そなたにつらい思いでもさせているかな、私は」
「そっ、そそそういうんじゃないんですけどおっ……!」
「そうか。ならいいじゃないか。させておくれ。私がそうしたいんだ。そなたをもっともっと甘やかしたい」
「い、インテス様ぁ……」

 その時点でとっくにへにゃへにゃだったのに、さらに「さあ、今度は一緒に入浴だ。いいだろう?」と誘われてからあとはもっと大変なことになった。
 インテス様ときたら、「そなたはなんにもしなくていいから」とおっしゃって、平気な顔でシディの身体じゅうを洗い始めたからだ。しかも相変わらず、身体じゅうに口づけを落とし、甘噛みをしながら。

「だっ、ダメです。ダメダメダメー!」
「どうしてダメなんだい。すでにそなたの体は隅々まで知っているのに」
「そっ、そそそういうことじゃなくってええええ! ひゃああんっ」
 海綿を持った手がするりと股間を撫でていって、また変な声が出てしまう。
「隅々まできれいにしておかなくてはな。もちろんまた汚れてしまうだろうが、また入浴すればいい。また私が責任をもって隅々まできれいにさせていただくからな」
「いっ、いっ……インテスさまあああ!」

 最後に悲鳴みたいな声をあげたところで、インテス様はシディを横抱きにして、ざばりと湯舟からあがった。
 もちろんその後目指すのは、ふたりの寝室だった。

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