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第六章
5 戯れ ※
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「そなたから誘われるとは思わなかった」
「えっ? うわっ!」
後ろから抱きついて、掠めるような口づけをしただけのはずなのに。それもほとんど無意識に、身体が勝手に動いてしまっただけなのに。
殿下はひょいと体をひねって、床に掘りぬいた形の湯舟の縁に座ったまま、シディを横抱きに膝に乗せてしまった。
「さ、さそった……んじゃ、ないですっ」
「へえ? それでは今のはなんなのだい」
「すみませんっ……。でもあの、なんか、勝手に──」
殿下はくすくす笑っている。そんなことはお見通しのくせに、どこまでも「誘った」とおっしゃるつもりらしい。
「それだけシディが、私に好意を持ってくれているということだよな。とても嬉しい。ありがたき幸せだ」
「……う、ううう」
もう全身で真っ赤になるほかはなかった。
「さあ、交代しよう。今度は私がそなたの背を流す番だぞ」
「ええっ。いえ、でもその……えっと、お、お願いします……」
途中でキロッと睨まれてしまって言葉を濁す。これももういつもの風景になってしまった。殿下はとにかく、シディが自分と対等であることを望まれるからだ。
「よろしい」
言って殿下は位置を交代し、シディを湯舟の縁に座らせてしばらく背中を洗ってくださった。
(ああ……気持ちいい)
痒いところに手が届く、とは言うけれどちょうどそんな感じだ。
シディを救い出して以来ずっと、非常にご多忙なのに、この人は細かい身の周りの世話までかいがいしくなさってくださったらしい。気を失っていた間のことはわからないが、特に体に触れるような世話についてはいっさい他の者に手を出させないようにしていたというのだ。これはほかの使用人がこっそり教えてくれたことだった。
要するに「自分以外の者にシディの身体に触れさせたくない」という意思表示だったのだろう。それに気付いて、またかっと体が熱くなったものだ。
「さあ、終わったぞ」
「ありがとうございます……はうあっ!?」
最後に汲んだ湯で背中を流してもらい、すっきりしたなと思ったら、今度は背後から殿下に抱きしめられた。
「はあ……いかんな。せっかくきれいになったのに」
「え?」
「先に食事をさせてやろうと思っていたのに、私はまことに堪え性がない」
「ええ? うひゃっ」
髪に、耳に、項にと口づけを落とされて変な声が出る。
「正直、自分がここまで堪え性がないとは思わなかった。……シディの魔力の賜物だな?」
「そ、そんな──」
殿下の大きな手がさわさわとシディの脇腹や胸に触れる。その指先が、ツンと立った胸の先端に触れると腰が跳ねた。
「あうっ……! はあ……ん」
ああ、ダメだ。もうすでに腰にじわじわとあの欲望が溜まり始めている。シディは堪らず腰をくねらせた。
「ああ、すまない。先に食事にしよう。そなたを飢えさせるわけにはいかない……。もう本当にこのぐらいにしなければ」
言いながら、それでもまだ名残惜しそうに首筋に口づけを落としているのだから世話はない。
「だが食事の後は、またそなたを抱いてもいいだろうか? ……どうやら我慢できないようだ」
「うっ……」
(そんなの──)
本当は自分だって同じ気持ちだ。
むしろここまで自分なんかを求めてくださることがどんなに嬉しいか。
そう思えば思うほど、腰には重いものがどんどん集まってくる。堪らない。
シディは片手を殿下の頬に沿えて持ち上げ、見上げる形でその唇をちゅっと吸った。
「はい。ガマンできないです……オレも」
殿下の視線が、自分の股間ですでに固くなっているものに向けられているのを感じる。ひりひりするほど。肩のあたりで殿下がふっと笑ったのがわかる。半身としての、そして男としての匂いがまたぐんときつくなる。その匂いに当てられる。
これを嗅ぐと、シディの五感はいつもの数倍敏感になってしまうのだ。
たまらない。このままではとても食事には行けそうにない──
「うあ……ん」
甘ったるい声が勝手に漏れてしまう。
ゆらゆらと腰を揺らしてしまった。ひどく淫らな揺れ方で。これもまた本能的なものだったろう。
「ずいぶん辛そうになってしまったな」
優しくて甘い声が耳をくすぐる。その響きにもいっぱい、殿下の望みが練り込まれていた。
天井を向いてすっかり欲を主張してしまったものを、殿下の大きな手がゆるりと包み込む。
「あうっ」と叫び、腰をまた跳ねさせてしまった。
「先に、少し出しておくか?」
「……ふっ」
シディはこくんと頷いた。
「えっ? うわっ!」
後ろから抱きついて、掠めるような口づけをしただけのはずなのに。それもほとんど無意識に、身体が勝手に動いてしまっただけなのに。
殿下はひょいと体をひねって、床に掘りぬいた形の湯舟の縁に座ったまま、シディを横抱きに膝に乗せてしまった。
「さ、さそった……んじゃ、ないですっ」
「へえ? それでは今のはなんなのだい」
「すみませんっ……。でもあの、なんか、勝手に──」
殿下はくすくす笑っている。そんなことはお見通しのくせに、どこまでも「誘った」とおっしゃるつもりらしい。
「それだけシディが、私に好意を持ってくれているということだよな。とても嬉しい。ありがたき幸せだ」
「……う、ううう」
もう全身で真っ赤になるほかはなかった。
「さあ、交代しよう。今度は私がそなたの背を流す番だぞ」
「ええっ。いえ、でもその……えっと、お、お願いします……」
途中でキロッと睨まれてしまって言葉を濁す。これももういつもの風景になってしまった。殿下はとにかく、シディが自分と対等であることを望まれるからだ。
「よろしい」
言って殿下は位置を交代し、シディを湯舟の縁に座らせてしばらく背中を洗ってくださった。
(ああ……気持ちいい)
痒いところに手が届く、とは言うけれどちょうどそんな感じだ。
シディを救い出して以来ずっと、非常にご多忙なのに、この人は細かい身の周りの世話までかいがいしくなさってくださったらしい。気を失っていた間のことはわからないが、特に体に触れるような世話についてはいっさい他の者に手を出させないようにしていたというのだ。これはほかの使用人がこっそり教えてくれたことだった。
要するに「自分以外の者にシディの身体に触れさせたくない」という意思表示だったのだろう。それに気付いて、またかっと体が熱くなったものだ。
「さあ、終わったぞ」
「ありがとうございます……はうあっ!?」
最後に汲んだ湯で背中を流してもらい、すっきりしたなと思ったら、今度は背後から殿下に抱きしめられた。
「はあ……いかんな。せっかくきれいになったのに」
「え?」
「先に食事をさせてやろうと思っていたのに、私はまことに堪え性がない」
「ええ? うひゃっ」
髪に、耳に、項にと口づけを落とされて変な声が出る。
「正直、自分がここまで堪え性がないとは思わなかった。……シディの魔力の賜物だな?」
「そ、そんな──」
殿下の大きな手がさわさわとシディの脇腹や胸に触れる。その指先が、ツンと立った胸の先端に触れると腰が跳ねた。
「あうっ……! はあ……ん」
ああ、ダメだ。もうすでに腰にじわじわとあの欲望が溜まり始めている。シディは堪らず腰をくねらせた。
「ああ、すまない。先に食事にしよう。そなたを飢えさせるわけにはいかない……。もう本当にこのぐらいにしなければ」
言いながら、それでもまだ名残惜しそうに首筋に口づけを落としているのだから世話はない。
「だが食事の後は、またそなたを抱いてもいいだろうか? ……どうやら我慢できないようだ」
「うっ……」
(そんなの──)
本当は自分だって同じ気持ちだ。
むしろここまで自分なんかを求めてくださることがどんなに嬉しいか。
そう思えば思うほど、腰には重いものがどんどん集まってくる。堪らない。
シディは片手を殿下の頬に沿えて持ち上げ、見上げる形でその唇をちゅっと吸った。
「はい。ガマンできないです……オレも」
殿下の視線が、自分の股間ですでに固くなっているものに向けられているのを感じる。ひりひりするほど。肩のあたりで殿下がふっと笑ったのがわかる。半身としての、そして男としての匂いがまたぐんときつくなる。その匂いに当てられる。
これを嗅ぐと、シディの五感はいつもの数倍敏感になってしまうのだ。
たまらない。このままではとても食事には行けそうにない──
「うあ……ん」
甘ったるい声が勝手に漏れてしまう。
ゆらゆらと腰を揺らしてしまった。ひどく淫らな揺れ方で。これもまた本能的なものだったろう。
「ずいぶん辛そうになってしまったな」
優しくて甘い声が耳をくすぐる。その響きにもいっぱい、殿下の望みが練り込まれていた。
天井を向いてすっかり欲を主張してしまったものを、殿下の大きな手がゆるりと包み込む。
「あうっ」と叫び、腰をまた跳ねさせてしまった。
「先に、少し出しておくか?」
「……ふっ」
シディはこくんと頷いた。
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