ルサルカ・プリンツ~人魚皇子は陸(おか)の王子に恋をする~

るなかふぇ

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第六章 帰還

6 白濁 ※

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「ふっ……う、う……」

 玻璃の唇と舌、そして指先に翻弄され、ユーリは頭の芯をほとんどとろかされている。
 玻璃は宣言どおり、まるでユーリを「初めての体」であるかのように扱っていた。体じゅうを丁寧に愛撫し、とりわけ敏感な場所は念入りに撫で、また舐めてくれる。ユーリの足の間のものは、さらなる刺激を欲しがってこれ以上ないほど張り詰め、痛いほどだった。

「あ、や……やあっ。もう……」

 ユーリがたまらず太腿をこすりあわせ、腰をよじらせるのを、玻璃はいかにも楽しげに、あまさず観察しているようだった。その視線そのものがユーリの肌を、脳を犯す。
 自分からは見えないが、すっかり勃ちあがったものの先端からは、はしたない雫がたくさんこぼれだしていることだろう。玻璃はなかなかその肝心な場所には触れてくれず、足の付け根や太腿の内側を何度も撫でているばかりだ。
 いつのまにか、夜着のあわせはすっかりはだけられており、衣服としての用を為さなくなっている。体をよじらせるたび、襟の端が胸の尖りをこすってひりひりとした痛みが生まれた。
 もちろん不快な痛みではない。一瞬の鋭さを覚えた痛みのあとは、じんわりとした熱をもったまま広がってユーリの脳に達し、そこでちかちかとはじけて消えていく。

「や、あ……っ。玻璃……も、いやっ」

 腰をよじって訴えたら、優しく頬に口づけを落とされ、そのまま耳に舌を入れられて囁かれた。

「何が嫌なのだ? もっと具体的に教えて欲しいんだが」
「う……う」
「求められれば、存分に応えるぞ。俺はそなたを存分に愛したい。気の狂うような絶頂を何度でも迎えて欲しいのだからな」
「ああ……っ」

 そんな言葉を囁かれるだけで、先端に集中していく痛みのもとはどんどん凝縮し、濃さと重みを増していく。
 ユーリは知らず、もう目の端からも涙の雫を滲ませていた。

「いじ……っ、わるっ! あ、ああ……ん」

 布地のうえから指先で、つつうと下から上へとなぞられると、ユーリの背中は弓なりにのけぞった。自然に両足が広がったところへ、玻璃の太い腰がぐいと入り込んでくる。下着の上から張り詰めたものを愛撫しながら、玻璃は唇と歯を使って巧みにユーリの内股に丁寧な所有の証を刻んでいく。
 ユーリはもう、自分の腰をコントロールすることもできなくなっている。

「あ……っ、あ、あ……んあ、やっ……」

 布地越しの愛撫が、もうもどかしくてたまらない。
 直に触れて欲しい。舐めて欲しい。そしてそのもっと下、体の最も奥にある秘めた場所にも、この人の印が欲しかった。
 地球とは隔絶した宇宙の向こうで、ほかの男に犬のように飼われ弄ばれながら、この人とは分厚い壁で隔てられていた何十日。
 ずっとずっと、この人が欲しかった。この人の体温が、最も熱くて硬いその場所が、自分の奥の奥まで再び暴いてくれるのを。

「あ、ああ……っ」
「だいぶ辛そうになってきたな。どうして欲しい? ユーリ」

 ユーリの先端から、我慢しすぎた証の雫がとろとろと零れ落ちるのを、玻璃は目を細めて眺めているらしかった。指先で先端をつぷりとつつき、ぬめりを指に絡ませてユーリ自身を全体的にゆるゆると濡らしていく。
 ユーリの腰はがくがく揺れた。

「あっ……や、やあ……っ、もう──」
 悲鳴のような掠れた声を絞り出すと、ぐっとそこを握りこまれた。
「ああっ!」
「だから。『どうして欲しいか』と訊いている。今なら望みはいくらでも聞くぞ。どうだ?」
 いつもの玻璃よりも、幾分意地悪になっているのは気のせいか。もしかしてこの男も、あの人外の男に感化された部分があるのだろうか?
 玻璃の手が上下にしごくのに合わせて、ユーリの腰は勝手に前後にゆるゆると揺れている。
 と、玻璃が上体を伸びあがらせてユーリの胸元に口づけた。何度も唇と舌で弄ばれた胸の先端は、すっかり起き上がって朱赤に染まり、天を向いてそそり立っている。玻璃はそれをまた丁寧に舐め、軽く歯を立てて刺激した。
 それと同時に、ユーリを扱く手も速くなる。

「はううっ! だ、だめ……あ、ああ……!」

 腰に重たい欲望がさらに集中して、脳内が真っ白になっていく。
 次の瞬間にはもう、ユーリは濃い白濁を腹の上に勢いよく放っていた。
 腹の上を自身の白い体液で汚したまま、ユーリはしばらく荒く息をついていた。玻璃はさも愛おしそうに、力を無くしたユーリのそれを撫でている。

「沢山出たな。しかも濃い。かなり我慢をしていたのか?」
 呼吸を整えるのに忙しくて、ユーリは何も答えられない。
「あちらでは、それなりに処理はしていたのだろう? 俺の目の届かないところでこっそりと」
「いえ……」
 うっすら目を開けてそう言うと、玻璃は意外そうな顔になった。
「そうだったのか?」
「だって……あやつに見られていたに決まっていますもの」

 そうだった。いつもいつもこちらを監視していたのではないにしても、AIである《サム》は自分たちのことを四六時中監視していたはずなのだ。それは用を足すスペースでも構わずに観察され、記録されていたに違いなかった。

「だから……できるだけ、しませんでした。できるだけ、ですけれど……」

 耳が熱くなるのを覚えて目を伏せる。
 確かに、そういうことをまったくしなかったと言えば嘘になる。目の前に囚われた愛する人がいて、ずっと触れ合うことも許されず。そんな環境でなにもせずに堪えることは難しかったからだ。
 だから、本当にどうしようもなくなった時にだけあの手洗い場に籠り、カメラらしきものがある方へはできるだけ背を向けて──。

「そうだったのか」
 ふ、と玻璃が吐息で笑った。
「あなたの目の前で、あんなこともさせられましたし……。だから、できるだけしたくなかった……のです」
「そうか」
 玻璃は優しく笑うと、柔らかくユーリの髪を撫でた。
「さぞや大変だったろう。これはますます、今夜はそなたを限界までよろこばせねばならんらしい」
「そ、それは──ひゃっ!」

 次の瞬間、玻璃はユーリの足をさらに開かせ、間のものをぱくりと咥えこんだ。
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