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第九章 初夜
5 蜜夜 ※
しおりを挟むひとりで気を遣ってしまってから、ユーリはしばらく荒い息をついてぼんやりしていた。少し興奮がおさまってきたところで、急に申し訳なさが湧きあがった。
上体を起こして軽く玻璃を睨む。
「ダメではないですか、こんなのっ……!」
「なにゆえ? 気持ちよさそうで何よりだったが。見ている俺は楽しかったぞ」
玻璃は不思議そうにこちらを見て笑うだけだ。
「俺の前でこうして足を開いて、可愛らしく腰を揺らして蕩けるような嬌声をお上げになる。……夢にまで見ていた。最高だ」
言いながら、さも嬉しそうにユーリの腹にぶちまけられたものを柔らかい薄紙で拭ってくれている。それは寝台の枕元に控えめに置かれた木箱に入っていたようだった。
「わっ、私だけ……そうなってどうするのですっ。私は、私は……」
──玻璃殿に、ちゃんと気持ちよくなってほしいのに。
肝心な部分は思っただけで、とうとう口に出すことはできなかった。
しかし玻璃はちゃんと受け取ってくれたようだった。
「まあ、案ずるな。俺もこれから存分に楽しませていただくゆえ」
「まことですか」
「まことだとも。が、その前にもう少し準備をせねばな。そなたの体に無理を強いたくはないゆえ」
「え? ……あ!」
するりと尻の奥のほうへ指を滑らされて、つい声を出してしまう。先ほど湯殿でも準備され、そこはだいぶ柔らかく滑りを帯びた状態になっている。玻璃はそこへつぷりと指を進めると、中を広げるように動かし始めた。
「あ……あんっ」
「最初は少し気持ちが悪いだろうと思う。まあ、無理をなさるな。いやになったら言うのだぞ。すぐにやめるゆえ」
「いえ、それは……あふっ」
答えかけたところで、ぐっと指を進められて息がつまった。これまで誰にも触れさせたことのない場所を、玻璃の指が探っている。
やがてとある場所にくん、と指が触れた途端、ユーリの腰が一段と跳ねた。
「ふあっ……!?」
先ほど、あの器具で触れられた時と同じ、前へじかに突き抜けてくる衝撃。
「やはりここだな。覚えておこう」
「え……え、あの……」
玻璃がくすっと笑って宥めるようにまたユーリの頬に口づけを落とした。そのまま唇に深いキスを施しながら、指の動きを早められる。
「ふっ……ん、んん……っ」
玻璃は時折り専用のどろりとした液体をユーリの足の間に垂らし、ぬめりを足しては愛撫を続ける。液体は体温ほどにあたためられていて冷たくはなかった。それが増やされていくたびに、ぐちゅりぐちゅりと淫靡な水音も増えていく。なんだかユーリの耳さえ犯すようだった。
玻璃はある程度そうしたところで指を増やした。複数の指をばらばらに動かしながら優しくユーリの内側を愛撫する。
それと同時に、萎えていた前のものを再び片手で扱きはじめた。
「ふっは……あ、あん……あんっ」
恥ずかしくて堪らないのに、腰の動きとはしたない喘ぎ声が止まらなくなっていく。開きっぱなしの口の端から赤子のように唾液が零れてしまうのも止められない。
ぞくんぞくんと背筋を駆けあがってくる快感が、またユーリの脳内の秘められた場所をこじ開ける。
「いやあっ……だめえ! ま、前……は、もうっ……!」
言った途端、逆にじゅぷっと音を立てて玻璃がユーリのそれをまた口に咥えた。
「あああっ! だめ、だめですっ……!」
生理的に浮かんだ涙をこぼしながら訴えたが、本気だとは取ってもらえなかった。もちろん、本気ではなかったからだ。やめてほしいなんて一瞬も思わなかった。
玻璃はじゅぷじゅぷとユーリの前を口で愛し、同時に秘められた奥の場所を増やした指でさらに愛撫した。
「ふあああっ、ああ……あん、ああんっ……!」
が、今度はなぜか、玻璃はユーリが達する直前で手の動きを止めてしまった。
「少し待たれよ」
そう言って、玻璃はやはり枕元から何かを取り出す。それは手のひらに乗るぐらいの銀色をした筒状のものだった。
不思議に思って見つめていたら、玻璃は顔の前でそれを軽く振って見せた。
「そういえば、初めて見るかな」
「え? ……ええ」
目をぱちくりさせていたら、玻璃の目がふっと意味深なものを湛えた。
「覚えておかれるといい。なかなか便利なものだからな。まあそちらでは、基本的に避妊はなさらないようではあるが──」
(ひ、避妊……?)
言われた言葉をあれこれ咀嚼しているうちに、玻璃はさっさと夜着を脱ぎ捨て、再び見事な体躯を露わにした。ユーリは思わず彼のそれに目をやってしまった。そして、つい竦んでしまった。
(……お、大きい)
体が大きいのだから当たり前と言えば当たり前だ。だがそれは、今のユーリから見ればもはや凶器ではないかと思えるぐらいに大きかった。もちろんユーリのそれの比ではない。
玻璃がまたくすっと笑った。
「そんなにまじまじとご覧になるな」
「えっ? あ、いえ……!」
ユーリはかっと頬が熱くなるのを覚えて目をそらした。
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