ルサルカ・プリンツ~人魚皇子は陸(おか)の王子に恋をする~

るなかふぇ

文字の大きさ
上 下
90 / 195
第九章 初夜

4 嬌声 ※

しおりを挟む

 玻璃の手と唇は、終始丁寧で優しかった。
 恐らくユーリが、になるのが初めてであるからだろう。

「あ……や、ああ……っ」

 首筋から始まって、鎖骨から胸の尖りへ。玻璃の優しい唇と舌が、あますところなくユーリを味わっていく。片方のそれも、指先でこりこりと弄ばれる。
 そうされるだけでもうユーリの腰は、はしたなくもびくびく跳ねた。胸の飾りを舌先で転がされると、じいんと痺れて痛痒いたがゆい。不思議なことに、その場所はまるで女のようにぷっくりと膨らんで、とっくに天を向いて立ち上がっていた。
 顔を隠すようにしていた手の陰からそっと見れば、つんと突き立って濡れ光ったふたつのものの向こうで、玻璃が含み笑っていた。

「思っていた通りだ。感じやすく、お可愛らしい」
「お、おっしゃらないでくださ……あっ!」

 またぺろりとそこを舐められて全身に電撃が走る。
 玻璃はまだ、白い夜着をほとんど着崩していない。それなのに、ユーリのほうはもうとっくに生まれたままの姿にされていた。
 足の間のものは硬くなって起き上がり、玻璃の夜着の腹のあたりに微妙に触れてもどかしかった。
 玻璃の唇がゆっくりと胸から脇腹へ移動していく。手のひらでユーリの肌を余すところなく撫で、その手触りを確かめているようだ。触れられているところすべてから、どんどん熱を発していく。

「やあ……あ」

 玻璃の手が足の付け根へたどり着いて、らすように内腿のほうへ逸れていく。それだけでまたユーリは腰を揺らした。
 もどかしい。たまらない。
 そのままその手で、蕩けそうな熱の棒になってしまったそこに触れて欲しい。
 見なくても分かった。自分のそこはもうとっくに、先端からはしたないものを滲みださせているだろうということが。

「はり、どの……。やっ……」
 涙の滲んだ目で訴えると、玻璃はユーリの腰あたりから笑いながらこちらを見やった。
「我慢できぬか? どこを、どうして欲しいのかな」
「え、いや……」
 答える前に内腿に優しいキスを落とされる。ちゅ、といちいち軽い音を立て──それも多分、ユーリに聞かせるために違いなかった──唇は次第に肝心な場所から離れて、膝を持ち上げ、その内側や脹脛ふくらはぎ、そしてくるぶしを愛撫する。
 やがて大きな手で足を掴まれ、足の甲に口づけが落とされる。
 両足を大きく広げられた淫靡な姿で、全体を丁寧に愛撫された。

「や、もう……玻璃どの……」
「ほかにはどこを舐めて欲しい? 言ってくれればすぐにも応えよう」
「いや、あの……」

 この人、自分に何を言わせたがっているのだろう。
 ユーリは必死で自分の足の間のものを両手で隠した。

「そんな……まじまじと見ないでくださいっ……!」
「それは断る」
「え、だって──」
「勿体ない。こんなにきれいな肌をしておいでなのに」
「そんなこと──」

 一応アルネリオの「貴人」だとはいえ、別に女性にょしょうでもないというのに。この人の近くになら、あの波茜なみあかねを引き合いに出すまでもなく、いくらでも美姫びきがおられることだろうに。
 が、玻璃は軽く笑っただけだった。

「ほかならぬ俺の『配殿下』のお体だ。俺の……俺だけのお体だ。初めての夜には特に、じっくりと堪能すると決めていた。ずっと前からな」
「玻璃、どの……」
 半分息が上がって、もうまともに返事もできない。腰の中に渦巻いている欲望が「もういい加減にしてくれ」とばかりにその先を求め、どんどん性急になってくる。その欲望の証が、先端からとろとろと染み出している。
 と、玻璃がついとユーリの手をそこからどけた。ぐちゅりとそこを握りこまれる。
「はっ……あ!」
 ユーリはまた腰を跳ねさせた。
 玻璃の手はゆるゆるとユーリのそれをしごいている。それに合わせて腰が動くのをどうにもできない。ときにくねくねと卑猥な動きまで見せてしまう自分が、堪らなく恥ずかしかった。
「あんっ……! あ、あ……あっ」
 指先で先端にぬめりを塗りこまれると、腰全体がビリビリッと痺れた。
 次の瞬間、玻璃はそれをべろりと舐めた。
「えっ!? ……あ、いっ、いやああっ!」
 抵抗しようにも、玻璃は器用にユーリの両手首を片手で戒めてしまっている。そのまま下の柔らかい場所を優しくまれ、屹立を舐め上げられているうちに、どんどん頭がぼうっとしてきた。

「だめ……だ、めえっ……あ、ああ……はり、どの──」

 背中をしならせてのけぞり、必死に首を横に振る。
 遂に玻璃がぱくりとそれを咥えこみ、頬裏と舌とで激しく愛撫し始めてしまった。
 部屋の中に、玻璃の口とユーリの肉との間で溢れる水音が満ちていく。

「やっ、あ……あっ、あ、んんっ……だめ、あっん……!」

 くらくらする。目の奥がちかちかする。
 腰に集まったすべての欲望が、一点を目指して駆けあがろうと暴れ狂う。

「だめっ……はな、してえっ! はり、どのおっ……!」

 子供のようにいやいやをし、必死に首を横に振るのに、玻璃は許してはくれなかった。

「ひいッ……あ!」

 もう駄目だった。
 ユーリは駆け上がってくる波に押し流され、一気に欲望の気を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...