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第五章 滄海の過去
9 喘ぎ ※
しおりを挟むじゅるり、くちゅりと淫猥な水音が御帳台の天蓋に響いている。ユーリはもう、両手で自分の顔を隠しているほかはなかった。
遂に玻璃はすっぽりとユーリのものを口に含み、分厚い舌で激しく愛撫し始めた。
そうまでされたら、もはや幼子ほどの抵抗力も残らなかった。実際、今のユーリは玻璃にとって、赤子の手を捻るよりはるかに容易に屈服させられる相手だったろう。
「あっ……あ、あ……ああっ、あ!」
あっという間に昇りつめ、欲望を吐き出す。
まさかとは思うが、ユーリはこの人がそれをそのまま飲み込んだりはすまいかとひやひやした。が、玻璃が慣れた仕草で脇に設置されている容器にぷっと吐き出してくれて、ほっとする。
「は……はあ、はあ……」
なんだかもうそれだけでも疲れてしまい、片腕で顔を隠して、ぐたりと寝台に身を預ける。玻璃の目の前にしどけなく足を開いて、何もかも見せたままの姿で。
玻璃がずり上がってきて、こちらを向いて隣に寝転んだ。その目は相変わらず優しいものだ。大きな手のひらが、優しく胸元を撫でている。
「ご気分よくお果てになったようだな? なによりだ」
「『ご気分よく』では、ありませぬ……」
ユーリはつい唇を尖らせた。
まったくもう、この方は。
いつもいつも、こちらを優先してばかりで。
「私のことなんて、いいのです。先日だって一方的にお世話になってしまったのですし。きょ、今日は」
そこでユーリは少し言い澱んだ。
「玻璃どのにも、気持ち良くなって……いただきたいから」
「ほう?」
玻璃が珍しく、ぱちくりと目を瞬かせた。
「それはそれは。四六時中、人々に傅かれることが当然の大国の王子殿下が、いったいどんなサービスを提供してくださるのやら。これはなかなか興味があるな」
「あのですねえ……」
ちょっと頭を抱え、ユーリは指の間から玻璃の体、下のほうをちらりと盗み見た。まだ衣服に隠れて見えないけれども、そこはきっと反応しているはずだった。
先日のあの時だって、玻璃は自分の欲望については一顧だにせず、触れさせてもくれなかった。
いつもいつも、自分ばかりが恥ずかしい顔を見られ、声を聞かれているというのは納得できない。
(ええい……!)
ままよ、とばかりに手を下ろし、玻璃の股間のあたりに触れる。玻璃の笑みが深くなった。
錦の布の上からでも、そこにとても大きな質量と熱量を持つものの存在が感じられた。
「あなたがして下さると? 本当に?」
玻璃の目も声も、ひたすらに笑みを含んだままだ。
ちょっと憎らしい気持ちになって、ユーリは手に力を込めた。
「だから、そう言っているのです!」
ワダツミ式の衣服を脱がせるのはあまり勝手がわからないが、帯を解いたことで、玻璃はほとんど前をはだけたような姿である。アルネリオ式の下着とは違う、柔らかで白い布で覆われたそこは、非常に大きな熱を手のひらに伝えてきていた。
じっと触れていると、どくんどくんと脈打っているのが分かるほどだ。
勝手がわからず困っていたら、玻璃の手が助けてくれた。しゅるしゅると下着が取り去られ、遂にそれが顔を出す。もちろん、すっかり屹立している。
ユーリは思わずこくりと喉を鳴らした。
本当に大きい。自分のものなど、まったく比べものにならない。
太さといい長さといい、玻璃のそれはユーリよりもはるかに大きかった。
(これは……おつらいだろうに)
ユーリはゆっくりと手を動かし始めた。
ん、と言うような吐息をはいて、玻璃が少し顔を顰める。その唇に自分から吸いついて、また舌を絡めあわせた。
「ん、んふ……」
玻璃の舌が熱い。すぐに愛撫が返されてきて、上から覆いかぶさる形になる。また、あの食べられているのかと錯覚するような、深くて濃密なくちづけが始まった。
ユーリは手の動きを早めていく。それに合わせるようにして、玻璃が腰を使った。まるで自分が犯されているようだ。ユーリが両手で作った動く筒の中で、太い熱棒が暴れまわる。
先走りの滑りが立てる水音が、また耳を犯す。
「おや。ユーリ殿のもまた少し、復活なさったようですな」
「え?」
言われて初めて、その事実に気がついた。かあっと耳が熱くなる。きっと今、自分は顔全体が真っ赤だろう。
と、玻璃はいきなりユーリのものと、自分のものとを合わせて一緒に扱きはじめた。
「ひゃっ……あ!? だ、ダメっ、玻璃どの!」
「なにが駄目なものか。せっかくではありませぬか。共に参りましょうぞ、ユーリ殿」
「いや、あのっ……あ、ああ、あ!」
「さあ、そなたの手もここへ」
ぐいと玻璃の手の内側へ自分の手を押し込まれ、何もかも一緒に扱かれて目の奥から火花が散る。くらくらと眩暈がした。
「あっ、やはっ……ふあっ!」
急に玻璃が手と腰の動きを早めてきて、声が上ずる。
その合い間にまた、ぐちゅりと舌を絡められた。
「んう、いひゃっあ、はりど……んあ、あっ!」
ユーリは気づいていなかった。知らないうちに、自分が必死で玻璃の律動に合わせて腰を振っていることに。
「あっ……あ」
びくびくっと体全体を張り詰めさせ、ユーリが果てる。と同時に、見計らっていたように玻璃も果てた。混ぜ合わさったふたりの熱い液体が、どくどくと自分の胴や胸を濡らしていく。
「はあ……あ」
半分朦朧としているユーリに、玻璃が嬉しそうにまたくちづけの雨を降らせた。
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