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第五章 滄海の過去
8 御帳台 ※
しおりを挟む玻璃に言われるまでもなかった。
そこからはさすがのユーリでも、もうよそ事を考える余裕などなかった。
「んあ……あ」
柔らかな寝台に横たえられ、胸元をはだけられて愛撫されるだけで、どうしようもなく体が疼いた。
玻璃はユーリの首筋から鎖骨、肩先へとくちづけを落とし続けている。
やがて指先が、肩から腕、脇腹へ一度おりてから、するりとユーリの胸のとがりに辿りついた。
「んっ……!」
むずがゆいような変な感覚があって、ユーリは腰を跳ねさせた。が、声は出すまいと必死で口元を片手で覆う。玻璃がそれに気づいて、やんわりと手をどけさせた。
「こら、我慢なさるな。聞かせて欲しい」
「で……でもっ」
「恥ずかしがることはない」
その手を取って、また優しく接吻を落とす。
「その声も、姿も。俺には何もかも可愛いだけだ」
その唇がまた、ユーリの唇に合わされる。
「ん……んう」
ユーリも玻璃の頭に両腕を回して、自分から舌を絡め合わせた。
自然に片足が持ち上がり、玻璃の太い胴体に摺り寄っていく。
これだけのことでも、すでに足の間にはたまらない熱が集まってしまっている。
とっくにそんなことには気づいているだろうに、玻璃の手は意地悪で、なかなかそこへは下りていかない。
ゆっくりとユーリの衣服を脱がせながら、露わになった胸を大切そうに愛撫し、口づけをおとしている。
「ひゃっ……!?」
思わずまた腰がはねた。
玻璃がユーリの胸の飾りのひとつを口に含んで、丁寧に舐め始めたからだ。もう片方も、指先で弄ばれている。
舌先で転がされ、押しつぶされ、歯を立てられ。さらに唇で吸い上げられを繰り返されているうちに、そこはすっかり朱色に変じて大きく育ち、ぴんと立ち上がってしまっている。まるで、女のそれのようだ。
「あ、……あ」
ひどく艶めかしいその姿に、脳が痺れていく。玻璃はそこばかりでなく、ユーリの体のあらゆる場所に印をつけるつもりらしかった。
ゆっくり、ゆっくりとじらされて、もはやユーリの足の間のものは悲鳴をあげている。それでもまだ、ユーリのそこは下穿きに包まれたままだった。
「いや……あ、玻璃、どの……」
さらりと脇腹を撫で上げられただけで、背筋が弓なりに反る。玻璃の体に股間を押し付けるような形になって、あまりの羞恥に脳が焼き切れそうになった。
だが、玻璃はどこまでも余裕そうな顔で、笑っていた。
「こちらもそろそろ、解放してさしあげねばな」
言ってようやく、しかしやっぱりゆっくりと、鳩尾から臍、足の付け根までを指先で辿っていく。ユーリはそのたび、いちいち声を上げて腰をくねらせた。
はやく。いやだ。
はやく……そこに、触れて欲しい。
あの飛行艇の中で慰めてくださったときのように。いや、もっと大胆に。
心臓の鼓動が跳ね上がり、耳の奥でやかましく鳴り響く。
怖じける気持ちとは裏腹に、欲望はひたすらに前向きだった。
「あうっ……!」
かりっと布地の上から爪で引っ掻かれて、ぴょんと腰が跳ねる。恥ずかしくて堪らない。そこはもう、布地を張り詰めさせて完全に上を向いていた。
と、不意に玻璃が上体を起こすと、ユーリの股間へ顔を近づけた。
「……え?」
びっくりして見下ろすと、玻璃は長い髪を片手で掻きあげながら、ちらりとユーリの顔を見て笑い、前立てのファスナー金具を器用に噛んでいた。大きな白い歯である。この皇太子、深めに笑うと大きな犬歯がのぞくのだが、そうすると余計に野性味を増すのだ。
玻璃はそのまま、ジイイとユーリに音を聞かせるようにしてファスナーを引き下ろした。
中から「待ってました」と言わぬばかりの勢いで、下着に包まれたユーリのものが現れた。
玻璃が形のよい鼻をそこに押し当て、猫がするように頬ずりしている。剰え、愛おしげに口づけまで落としている。それも、何度も。傘の部分に、竿の部分に、そして根本の柔らかな部分にも。やわらかな部分では、はむはむと唇で甘噛みさえ加えている。
気のせいではない。その先端はもう、はしたないもので下着をじんわりと濡らしてさえいるというのに!
「だめ……あ、だめえっ」
ユーリは必死で逃げ出そうとした。だが、玻璃の大きな手ががっちりとユーリの腰を掴んで放さない。
ユーリは必死で首を横に振った。
「やっ! ダメです、お許しくださっ……」
「ほら、お可愛らしい。ここも、こんなに懸命に我慢している。健気なことだ」
「あ、……ああ」
膝と尻ががくがくして、耐えられそうもなかった。
もう、早くどうにかして欲しい。
ユーリの無言の訴えが届いたのかどうか、玻璃は遂にユーリの足から下半身の衣服をすべて抜き去った。
驚いたのは、そのあとだった。
玻璃はなんの躊躇も見せず、すっかり天を向いて屹立しているユーリのそれを、ねっとりと下から舐めあげ始めたのである。
「ひっ……ひゃあんっ!」
ユーリはさらに仰け反った。
反射的に、不敬であることも忘れて玻璃の頭に手を置く。
もう必死で、子供のように首を横に振って拒絶した。
「おっ、おやめください! こ、皇太子殿下が、そのようなことっ……」
「構わぬ。したいからやっている」
「でっ、でも」
「気の済むようにさせてくれ」
「しかし──」
玻璃は構わず、まるで美味い菓子でも愉しむかのような顔で、ユーリのものを舐め上げている。
その先からは、ユーリの透明な先走りがまたぷくり、ぷくりと湧いて出ていた。
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