愚帝転生 ~性奴隷になった皇帝、恋に堕ちる~

るなかふぇ

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第八章 変転

10 肌の熱 ※

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 基本的に単純な形の布を巻きつけただけのような白い夜着は、するすると簡単に脱がされていく。自分の肩と胸が露わになったのを感じて、ストゥルトはシンケルスの肩に抱きついた。

「こら」
「いいだろっ。脱がせてる間だけこうしてるぐらい」

 困ったやつだな、と男が口の中でぼそっと言ったのが聞こえた。シンケルスは構わず手を動かしている。その手が腰のあたりで結んだ紐をほどいたとたん、夜着はすとんと足もとに落ちてそこにわだかまった。夜着をぞんざいに足で蹴りとばし、ストゥルトはシンケルスにさらにしがみついた。
 あとは股間を隠しているよじった細い布が残るだけだ。ほとんど全裸に近い。
 さきほどの口づけで反応して、足の間にあるものはとっくにちあがり、布を突っ張りあげて欲望を主張してしまっている。ストゥルトは敢えて腰をくねらせ、そこをシンケルスの下腹部に押し当てた。

「ん……は」

 シンケルスのそこも、布地を通して硬さと熱を伝えてきている。

(ちぇっ。お前だって、したいくせに)

 ちょっと恨みがましい気持ちになる。この男が自制心の鬼であることなんてとうに承知だが、こいつのは程度がひどすぎる。欲情してくれるのは嬉しいが、そこまで我慢されると逆に気分が悪い。

「……したことはあるんだよな? その……昔の、相手と」

 なんとなく「女」という言葉を使いたくなくて、ストゥルトはそう言った。男は沈黙したままだ。まあ、未経験なんてことはまずないだろう。

「それとも……この身体はいやか? しょうがないけどさ。これはあんな宇宙生物どもに作られた、人形みたいなもんだもんな」
「いや。そうじゃない」

 言いながら、男の腕がストゥルトの肩を抱いてきた。

「って言っても……もとの体だって奴隷どもと散々なことをして、めちゃくちゃ薄汚いけどな。今さらだし申し訳ないが、どこにも清らかな部分がない。まあ、れさせたことだけはないが……」
 声がどんどんしぼんでくる。
「どっちもどっちだ。私の体は、どっちも全然きれいじゃない──」
「よせ」
「けど、どっちかを我慢してもらうしかない。こっちが嫌ならあっちだ。でなきゃ……」
「もうやめろ。我慢などしていない。どちらの体であってもだ」

 少し怖い声音で言葉を遮られ、ストゥルトはそろそろと顔を離してシンケルスの顔を見た。シンケルスの瞳が明らかに怒っている。その瞳を見て、ほっとしている自分がいた。

「……いいのか? こんな体でも」
「だから関係ないと言っている」
「……そうか」

 ふわっと胸が軽くなる。ストゥルトはへにゃへにゃと頬が緩むのを自覚した。もっときりっとした顔でいたいのに、どうしても止められない。

 ──やっぱり好きだ。
 この男が、大好きだ。

「……あのさ」
「なんだ」
「んっ……つらい、んだけど」
 耳もとで、熱い吐息を混ぜこみながら囁いてみる。これは明らかに故意だった。
「こうまでなってしまうと、とりあえず出さないとどうにもならない……わかるだろ?」

 もじもじと太腿を擦りあわせて男にさらに腰を寄せる。
 男を誘惑したことなんて一度もないが、うまくいっているだろうか?
 はああ、と男が盛大な溜め息を洩らした。ストゥルトの肩にとすんと頭を落としている。

「……わかった」

 その手が部屋の扉にのびて、後ろ手に内鍵らしいものを掛ける小さな音がした。
 脇腹をするりと撫でられ、臍から下腹へと撫でおろされて、ぞくんと体が跳ねる。

「ふうっ……」

 男の大きな手が自分のそれを布越しに包み込む瞬間、甘く掠れた声が漏れた。布の縁から手を差し入れられ、じかに握られると、目の奥がちかちかした。

「ふあっ……ん!」
「あまり大きな声を出すな。……まあ、どのみち《アリス》には筒抜けだが」
「ん、うっ……む、無理……っああ、んあっ!」

 柔らかく揉まれ、次にはしごき上げられ始めて声がさらに裏返った。女になってしまったかと疑うほど、勝手に腰が動いてしまう。腰をくねらせると、もう片方の手で尻を握られた。
 張り詰めきったそこがもう痛いほどだ。

 ──はやく。
 はやく、出したい。

「はあんっ……!」

 もはや無意識に片足を上げ、シンケルスの腰に巻き付けていた。
 男の胸に擦りつけていた胸の飾りがつんと空を向いてとがりたち、こちらもむずがゆい欲望を訴えている。
 ああ。男がそこを舐めてくれたら──。

「シンケ……っ、あっ、ああ……んっ、んん……っ!」

 声なんて我慢できるはずがなかった。ずっと待っていたのだ。仕方なかった。
 男の手に合わせて腰を振りたて、男の腰にもっと、もっとと言いながらこすり付けて嬌声をあげる。

「やあっ……ああ!」
「──イけ」

 低い声で耳に囁かれた途端、言われたとおりに達していた。
 脳の中心が一瞬真っ白になり、体の中からどっと熱いものが噴出していく恍惚。
 凄まじい解放感。ほとんど昇天しそうな快感。

「あ、あ……」

 うっとりと男の肩に頭を預けて余韻に浸っているうちに、シンケルスはとっとと後始末をし、そばにあった椅子にストゥルトを座らせて、てきぱきと未来人の衣服を身につけさせてしまった。
 最後に男は、ぐったりと壁に寄りかかっているストゥルトの髪をさらりと撫でた。

「しばらく休憩していていいぞ。俺は行く」
「あ……待てよ」

 ストゥルトは男の首に腕を巻きつけた。
 なにも言わなくても、それは通じた。
 男はひとつうなずくと、ストゥルトの唇に口づけを軽く落として音もなく出て行った。
 ひどく優しくて、柔らかい口づけだった。

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