上 下
7 / 37
第一章 二人きりの惑星

6 拒絶 ※

しおりを挟む
(ここは……)

 目だけを動かして周囲を見れば、間違いなく自分の寝室だった。
 全身がひどくだるい。体じゅうの水分が抜けきっているようだ。口の中までぱさぱさで、まるで自分が干からびた枯れ木かなにかのように思えた。が、幸いにも、先ほどまで自分を襲っていたあの熱はどうやら引いているらしい。

(……やれやれ。どうにか回復したか)

 少し頭を動かすと、額から何かがずるりと落ちた。ぬるい水の入った袋である。身動きがしにくいのは、どうやら体の上に山のように掛け布やら衣類やらが積み上げられているからであるらしい。間違いなく少年の仕業だろう。
 ギシギシと音をたてそうな関節を叱咤しつつ、ごそりと寝返りをうとうとして、男はハッとした。
 すぐそばに、自分とは違う体温がある。
 自分の体に、ぴたりと抱きついている者がいた。

(な……。まさか)

 愕然として、腕の中にいるその相手を見下ろす。
 それは、ついさきほどまで夢に見ていた少年だった。
 彼はなぜだか、一糸まとわぬあられもない姿をしている。男の体に抱きついたまま、すやすやと静かな寝息をたてていた。

(何をやってるんだ、こいつは……!)

 男は慌てて、しとねの中から抜け出そうとした。が、少年の腕ばかりか両足までもが体に絡みついていて、存外にうまくいかない。あまり激しく動いたのでは、少年が起きてしまうだろう。こんな状態で目を合わせるのは、心底勘弁してもらいたかった。
 いや、理由は分かるのだ。ひどい悪寒に襲われていた自分のことを、少年は温めようとしてくれたのだろう。それは純粋に、この少年の優しい心の為せる業だ。

 男は一度、枕に頭を戻して少年の寝顔をそっと見た。
 寝ぐせでもしゃもしゃになった髪。閉じられた両目をいろどる、金色の長い睫毛。
 まだ少年らしい顎の線。若者らしいうすい胸。
 そこにぽっちりと存在する桃色の飾り。
 滑らかそうな若い肌──。

 気がついた時には、男の手はそろそろと少年の頬を撫で、親指で唇をなぞっていた。ぷるりと濡れて少し開いたその場所の魔力。それには、到底抗えなかった。
 気がついたときにはもう、男は吸い込まれるようにして、そこに自分の唇を重ねていた。





「ん……」

 なにやら不思議な感覚がして、少年はぼんやりと目を開けた。
 朝の時間帯になればAIが適度に明るくするはずなのだが、まだ部屋は暗かった。
 自分の肌の上を、なにか濡れた柔らかいものが移動しながら触れていく。
 くちゅりと胸の尖った場所を刺激されて、少年の腰はぴくんと跳ねた。

「あっ……ん」

 先ほどよりもしっかりと目を開けると、男の体が自分に覆いかぶさっているのが分かった。
 片手を少年の体のあちこちに滑らせ、愛撫し、首から鎖骨、胸や脇腹へと唇や舌で触れている。少しくすぐったいけれど、触れられた場所がじんと熱をもち、ぽわぽわと気持ちがよかった。

「パ……パ?」

(よかった──)

 どうやら体調は戻ったらしい。そう思って、まずはほっとする。
 どうしたの、と訊こうとしたら、唇で口を塞がれた。

「んう……?」

 歯列を割って、ぐちゅりと舌を絡められる。次には唇で、ちゅうっとそれを吸い上げられた。
 男の吐息が、ひどく熱くて荒い。よくわからないけれど、何かものすごい熱をもった固くて大きなものが、自分の太腿のあたりにぐいぐいと押し付けられている。
 かり、と首筋に歯を立てられて、少年の体はぴくんと反応した。

「あ……パパ……?」

 どうして。
 なぜ、男は自分にこんなことをするのだろう。
 いつもなら、同じベッドで寝ていれば優しく抱きしめて、背中や頭を撫でてくれるだけなのに。それがとっても気持ちよくて、自分はすぐに眠ってしまうのだけれど。
 今のこれだって決して気持ち悪くはないけれど、なんだか少し怖かった。

 これは多分、自分がまだ知らない行為だ。
 男の呼吸がさらに荒くなる。
 と、少年の体を撫でていた男の手が、臍のあたりからつつっと足の付け根をたどって、両足の間にあるものへとのびた。

「ふっ……あ!」

 そこを握りこまれて、完全に覚醒した。男の手はそのまま、小さな少年のそれをゆるゆると扱き始めている。ずくんと腹の奥から熱をもった強い刺激が湧きあがってきて、少年は慌てた。
「んっ……ん、パパ、やっ……パパ!」
 男の手が巧みに扱くのに反応して、その部分をめがけ、どんどん体中の熱が集まっていく。少年は男の両肩を思い切り押し戻した。
「まっ……いやっ、パパ……!」
 が、男は止まらない。
 次第しだいに、少年の胸にどす黒い恐怖が生まれはじめる。
 この人は、あのひどい熱でおかしくなってしまったのかもしれない。いや、きっとそうだ。今の彼は、いつもの自分の大好きなあの「パパ」ではなくなっている。
 足の間に男の太い腰が割り込んできて、ぐいと思いきり開かされている。足の間からぐちゅぐちゅと水っぽい音がして、見れば自分の先端からつつうと雫が溢れているのが分かった。男の指が、それで濡れて光っている。

「ふあっ……!」

 先端を強めにつんと突かれて、少年の腰はまた跳ねた。ゆるゆるとそこを扱いていた男の手が、その根元の柔らかな場所をいじり、さらにその後ろへとのびていく。
 ぬぷりと変な感触がした。

「な、パパ……やめて、なにを──」

 何を言っても無駄だった。侵入してきた男の指がぬぷぬぷとその場所を犯している。
 そこは何かを出す場所であって、何かを入れる場所ではないはず。どうして男は、こんなことをしているのだろう。
 頭の中が混乱しきって、どうしていいか分からない。
 男の指は性急で、まったく余裕がなさそうだった。吐息がさらに荒くなる。がっと少年の首筋に歯を立てるようにして、男が覆いかぶさってきた。と同時に、奥まったその場所に凄まじい熱量のものが押し当てられてくるのを感じた。

「いっ……!」

 めりめりと、巨大な物が押し入ってこようとしている。
 少年はすっかり恐慌状態になった。

「い、いや……痛いっ、いやっ、いや、いやああああっ!」

 少年はもう、必死でもがいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

近親相姦メス堕ちショタ調教 家庭内性教育

オロテンH太郎
BL
これから私は、父親として最低なことをする。 息子の蓮人はもう部屋でまどろんでいるだろう。 思えば私は妻と離婚してからというもの、この時をずっと待っていたのかもしれない。 ひそかに息子へ劣情を向けていた父はとうとう我慢できなくなってしまい…… おそらく地雷原ですので、合わないと思いましたらそっとブラウザバックをよろしくお願いします。

皇帝の肉便器

眠りん
BL
 この国の皇宮では、皇太子付きの肉便器というシステムがある。  男性限定で、死刑となった者に懲罰を与えた後、死ぬまで壁尻となる処刑法である。  懲罰による身体の傷と飢えの中犯され、殆どが三日で絶命する。  皇太子のウェルディスが十二歳となった時に、肉便器部屋で死刑囚を使った自慰行為を教わり、大人になって王位に就いてからも利用していた。  肉便器というのは、人間のとしての価値がなくなって後は処分するしかない存在だと教えられてきて、それに対し何も疑問に思った事がなかった。  死ねば役目を終え、処分されるだけだと──。  ある日、初めて一週間以上も死なずに耐え続けた肉便器がいた。  珍しい肉便器に興味を持ち、彼の処刑を取り消すよう働きかけようとした時、その肉便器が拘束されていた部屋から逃げ出して……。 続編で、『離宮の愛人』を投稿しています。 ※ちょっとふざけて書きました。 ※誤字脱字は許してください。

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

佐竹・鬼の霍乱

つづれ しういち
BL
拙作小説「白き鎧 黒き鎧」の後日談・外伝。ボーイズラブです。 冬のある日、珍しく熱を出して寝込んだ佐竹。放課後、それを見舞う内藤だったが。 佐竹の病気は、どうやら通常のものではなくて…?? 本編「白き鎧 黒き鎧」と、「秋暮れて」をご覧のかた向けです。 二人はすでにお付き合いを始めています。 ※小説家になろう、カクヨムにても同時更新しております。

世話焼きDomはSubを溺愛する

ルア
BL
世話を焼くの好きでDomらしくないといわれる結城はある日大学の廊下で倒れそうになっている男性を見つける。彼は三澄と言い、彼を助けるためにいきなりコマンドを出すことになった。結城はプレイ中の三澄を見て今までに抱いたことのない感情を抱く。プレイの相性がよくパートナーになった二人は徐々に距離を縮めていく。結城は三澄の世話をするごとに楽しくなり謎の感情も膨らんでいき…。最終的に結城が三澄のことを溺愛するようになります。基本的に攻め目線で進みます※Dom/Subユニバースに対して独自解釈を含みます。ムーンライトノベルズにも投稿しています。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】【R18BL】清らかになるために司祭様に犯されています

ちゃっぷす
BL
司祭の侍者――アコライトである主人公ナスト。かつては捨て子で数々の盗みを働いていた彼は、その罪を清めるために、司祭に犯され続けている。 そんな中、教会に、ある大公令息が訪れた。大公令息はナストが司祭にされていることを知り――!? ※ご注意ください※ ※基本的に全キャラ倫理観が欠如してます※ ※頭おかしいキャラが複数います※ ※主人公貞操観念皆無※ 【以下特殊性癖】 ※射精管理※尿排泄管理※ペニスリング※媚薬※貞操帯※放尿※おもらし※S字結腸※

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

処理中です...