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第二章 来訪者たち
6 ※
しおりを挟む「なあ。いいだろ? フラン」
ある夜。
皆から少し離れた森の茂み。
とうとうダミアンはフランをそこに引きずり込み、耳元でそう囁いた。
「な……に、するの、ダミア──」
言いかけた口を、がっとごつい手で塞がれた。
「大きな声、出さねえでくれ。頼む」
フランは必死でダミアンの目を見つめて頷いた。が、口元が緩められた代わり、今度は両手首をすごい力で掴みこまれる。
その晩、月の光は明るかった。暗がりではあるけれど、相手の表情は十分に読み取れた。みんなは少し向こうで、すでに焚火を囲んで銘々に寝袋などで休んでいる。
「知っての通り、俺らの宇宙船にはもう女がいねえ。……いや、あんたはそこらの女以上だけどな」
「ダメだって、ダミアン。放して。お願い」
小さな声で懇願したが、ダミアンは手の力を緩めなかった。なにしろ体の大きないかつい男のことだ。手の大きさも力の強さも、尋常なものではなかった。
いや、フランが本気を出せば跳ね返せるのは明らかだったが、下手にそんなことをして相手を傷つけるわけにもいかなかった。力加減を間違えば、自分は一瞬で彼らを殺してしまうかも知れないのだ。
「俺ぁ別に、もともと男なんざ好きじゃねえんだ。でもよ、あんたはいけねえ。反則だよ」
「は、反則……?」
意味がわからない。
下半身をがっちりした太腿で抑え込まれて身動きもできなかった。
はあはあと熱い吐息が首筋にかかる。
「ひっ……!」
べろりとそこを舐められて、思わずフランの腰は跳ねた。
「あんたはキレイだ。そんで、めちゃくちゃいい匂いもする。最初見た時、『こりゃ天使が来たのかよ』って思ったぐらいさ」
「ダミア──」
「あんたはダメだ。今の俺らにゃ、あんたはとにかく目の毒なんだよ。それも猛毒……いや、麻薬かもな」
「ダミアンってば……!」
身をよじって逃げようとするのに、どうしてもうまくいかない。そのうち、着ていたものを胸の下あたりまではだけられてしまっていた。森の夜気がひやりと肌を撫でていく。
ダミアンはもう、フランの鎖骨に、胸にと舌を這わせ、ときには歯型をつけながら、もはや夢中でむさぼっていた。
「狂っちまう。俺らはみんな、あんたに酔っぱらっちまってんのさ。あいつらの顔、見ただろう? みんなあんたをとんでもねえ目で見てやがるぜ」
「ダミアン! やめて……」
「頼む。抱かせてくれよ。いいだろ? あんた、そのために作られた『ドール』なんだろ? 男だって受け入れられる体なんだろ」
「いやっ……!」
ダミアンの手が下履きのほうへ伸びて、ずるりとずり下ろされた。膝のあたりで止められたせいで、かえって足の動きが悪くなる。
下半身が男の眼前で露わになった。
ダミアンが唇をぺろりと舐めてにやっと笑った。
「な~んだ。縮こまっちまってんなあ」
「ひうっ……!」
ぐっとそこを掴み込まれて、フランの腰がまた跳ねた。
「心配すんな。ちゃあんとお前も気持ちよくしてやるからよ」
「いや……い、や」
必死で首を横に振る。
彼らの精液は必要だ。でも、こんなことを望んだわけではなかった。第一、あの兄が許さない。もしもこのことを知ったら、あの兄は彼を許さないに決まっていた。
「大人しくしとけ」
言うなり、男はひどく慣れた手つきでフランに猿轡を噛ませてしまった。じたばたしている手首を頭の上で抑えられ、細いロープみたいなもので縛られて、側の樹の幹に固定されてしまう。
それで改めて、ダミアンはフランの足に絡まっていた下履きの残りをすべて取り去った。
足の間に、男の太い腰を割り込まされていてろくに身動きがとれない。
フランは必死でまた首を横に振った。
(やめて……ダメだ。こんなことをしたら──)
本当に、兄はあなたを殺してしまう。
が、目だけで何を訴えても無駄だった。
ダミアンの手は無造作にフランのものを扱き上げ、奥の秘所を指でまさぐり、やがてぬちぬちと抜き差しを始めた。
「ん……んっ、んんっ!」
敏感な部分を固い男の指先で刺激されて、腰がゆるゆると動いてしまう。
行為そのものは、あの兄と何度も経験してきたことだ。体は非常に正直で、すぐに快感を拾えるようになってしまっている。
絶対に本意ではないのに、それに伴って前のものもゆるゆると勃ちあがってきてしまう。その先端からぷつりと甘い雫が染み出しているのを、ダミアンは楽しげに観察しているようだった。
「いい反応じゃねえか。思ったとおりだ」
「ふうっ……!」
言った途端に指が増やされ、抽挿が速くなった。
そこはすっかり濡れてしまっているのだろう。ぐちゅぐちゅといやらしい水音がフランの耳すら犯していた。男の指が敏感な場所を刺激するたび、快感は勝手に目を覚まし、フランの腰は物欲しげに揺れてしまった。
「なんだよ。すっげえ欲しがってねえか? 下の口はよ」
嬉しげに、やや下卑た風に声を歪ませてダミアンがフランの耳に囁いた。
その時だった。
ゴッと鈍い音がして、ダミアンの体が一瞬、硬直した。次にはもう、どすんと重い荷物が落ちてくるようにフランの体に覆いかぶさってくる。
(えっ……?)
身をよじってダミアンの肩越しに見上げて、驚いた。
太い木の枝を手にしたロバートが、震えながらその場に立ち尽くしていた。
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