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1. 異世界デビュー
町歩き 商業ギルド
しおりを挟む余計な妄想に時間を使ってしまった。少しだけ反省して受付けに。
ざっと見渡しても、他にも人は居るには居るのだが、先ずはこちらにお越し下さいとのプレートが。
総合窓口と書いてあるのならば仕方ない。先ずはそこを通してから案内される。それもここの仕組みだ。ここではそれに従うしかない。
今は2人で応対しているようだが、1つは既に別の商人と思われるおっさんが使っている。俺もおっさんじゃんとかの突っ込みはいい。
確かに俺もおっさんだけど、俺よりも年配のおっさんに見える人もおっさん。自分で言うには愛嬌があるが、他者をおっさんと呼ぶ時には多少の侮蔑が含まれる。それがおっさんという言葉だ。俺を呼ぶなら、せめておっちゃんにして欲しい。
仕方ないから、もう1つの空いている窓口へ向かう事にする。
仕事に年齢は関係ない。商売なんだから、あまりにもピチピチでも、ビッチビッチでもよろしくはないだろう。あと、ヨレヨレでも。
適度に年齢を重ねた女性の方が信頼は得易いだろうし、話が変な方向に逸れなくて済む。これはこれで仕方のない人選なのだろう。
でもな。ピッチピッチにも程があると思うんだ。色んな所がぱっつぱつ。ぽっちゃりって言える範囲なら可愛いと思う。俺はだが。
ガリガリの骨張った不健康そうな女性よりはよっぽど人間味があって好感が持てる。これも個人の感想と偏見です。
出る所も当然のように出てるけど、たっぷたぷ。俺が求めてるのはそこじゃない。いや。そこは求める事は多いけど、それじゃない。
ダレ切ったおっぱいは只の脂肪の固まりだ。不純物と言ってもいい。不純な異性をこう言う? 功罪と。
それは不純異性交遊と、不純異性交際。手柄か過ちか。それも見る人次第。流石に分かり難かった。それもそこも好き嫌い。
俺にはなんの感慨もない。あれは体の1つのオブジェクト。触りたいとも思えない。きっと夏場に限らず汗とか凄いんだろうな。臭いも凄いかも。
腹とおっぱいの境い目は? 何処からが、……。もう止めよう。切りがない。それも俺が悪いんだが。そこまで太ったお前も悪いと思うぞ。こんなの初めてだ。
こんな所で使いたくなかった単語。それも言っていいのは俺の方じゃない。こんなの初めてです! って、目を輝かせながらとか、潤ませながらとか、言っていいのは一部の可愛い女の子だけのはず。
顔はそれなりに可愛いだけに、勿体無い。外国人は外国人ってだけで補正値か付いて可愛く見えちゃう件。残念だ。おっさんに言われたくないか。ごめんよ。ちょっと気合いが必要だったから。
こほん。
ギルド証を提示するのは基本です。少しだけの笑顔と共に。これを作り笑いと言う。
なるべく顔以外は見ないように注意も忘れない。見ると言っても焦点は何処にも合わせない。それもポイント。ボインとじゃない。あれはあくまでも余計な脂肪の塊に過ぎない。
「モルトです。今日この町に来たばかりですが、数日は滞在するつもりです。危険な魔物の情報とか、行商が回れていない町や村はありますか?」
本当は、前者だけ聞ければいいのだが、流石にそこは追加して行商人らしい事も聞いてみた。仕事よりは命が大事。俺はそういう男。当たり前か。
「はい。ありがとうございます。モルト様ですね。ようこそ、ファウステンシステンの町の商業ギルドへ。お疲れ様です。
失礼ですが、まずこちらに手を置いて下さいますか?」
そう言ってまたしても入町時にも操作したようなプレートを出して来た。そうだった。カウンターに置かれてなかったから忘れてた。早く用件を済ませたかったから。
ここでもその作業があるんだった。これも基本。
でもその前に。
お疲れ様ですの一言は、どこの世界でも共通の認識として通じる魔法の言葉。
相手を気遣い、労を労い、気持ちを伝えるだけじゃない。何時如何なる時でもってのは言い過ぎだけど、取り敢えずの挨拶にもなる言葉。
目上でも、目下でも。友達でも、初見の人でも。それがお疲れ様です。誰でも知ってるか。
プレートに魔力を流しての本人確認。問題が無ければプレートは青く光る。問題があるなら赤色に。当然、青く光ってくれるはず。
ん?
黄色じゃん。何それ。聞いてないよお~って叫びたい。
そうだった。俺は今、身体強化と光魔法の補助魔法を掛けてたんだった。これまた失礼。言われる前に言っておこう。
「ごめんなさい。魔法を掛けたままでした。今解除しましたので。はい。もう1度」
そう言って魔法を解除してから、もう1度プレートに魔力を流す。
どっと体が重たくなったような気がするが、目の前の人よりは重くない。はずだ。
今度はしっかり青く光ってくれた。良かった。ここで赤く光ったら御用じゃん。用があって来たのに。同じ御用でも意味が変わるから。
俺は犯罪の容疑者じゃない。多分。まだ?
いや。これからも犯罪を犯すような気はない。合意の上なら別だけど。それは犯すとは言わないか。これまた失礼。
御用だ御用だ。なんて押し寄られたくないけど、堪忍な堪忍なあ~。なんて言われたいとは思う。勿論、可愛い女性限定で。
「……。はい。ありがとうございました。それで、先程の件ですが、今日の所はそのような情報は届いておりません。緊急の依頼があればお願いする事もあると思いますが、その時は出来る範囲でご協力お願い致します」
少し間はあったものの、何か言おうとしてたけど、俺のが早かった。体の重たさと頭の回転速度は関係ないとは思うけど、やっぱりあの体を見ると、それも無関係とは言えないかも。なんて思ったりもした。
摂取した栄養は何処に行ってるのか。それも人それぞれ? 人間の身体って不思議な事が多い。
何事もなかったかのように応対してくれた受付嬢、は止めて、受付けの人。お嬢だなんて呼びません。
同じ様な事をしてる人も居るのだろう。慣れたものだった。これからはしないように注意しようと思う。覚えていられるかどうかは分からないが。
身体強化も光魔法も含めて、補助魔法等はダメ。基本的に魔法を使った状態での本人確認はNG。偽装とか隠蔽を警戒してると思われるが、魔道具はいいのだろうか。
そういった魔道具もあるのに。先ずは本人確認って事なのだろうか。なんて思ってたりして。先ずはただの危険回避って事かも。
それはそれで穴があると思うけど、まあいいか。俺には関係のない話。
「そうですか。ありがとうございました。その時は出来る範囲で協力したいと思いますが、また来ます」
とだけ告げて去ろうとしたのだが、
「道中、何か変わった事はありませんでしたか?」
なんて優しく聞かれたてしまった。何も無かったから無事やって来られたんだぞ。なんて思ってても口に出しちゃいけない。俺の場合は、今回は、特に話していい内容なんて無いよう。
なんて思ってても言っちゃいけない。きっともっと冷たい空気になるだろうから。決して、聞かれたのが好みの女性じゃなかったからって訳じゃない。
だから少しも考える事なく告げた。
「そうですね。これと言って役に立てるような情報はありませんか、ね。あれば真っ先にお伝えしますよ。多少の小遣いにはなりますからね」
ははは、と、ちょっとはにかんだ感じで受付けの人の表情を窺うと、明らかに作り笑いと分かるぎこちない表情筋の使い方で返してくれた。
「そ、そうですね。ははは」
魔物が居る世界なだけに情報は売れるが、当然のように俺は何も知らない。この町がこの世界で初めましての町だし、直ぐ近くからやって来たのだから。
何処からやって来たとも言わないし、聞かれもしなかったからいいだろう。そこまで聞きたい訳じゃないみたいだし。
俺の登録がどんな風にされているのかは気になるが、どんな情報が管理されてるのかも気になるが、自ら深く突っ込むのは危険だと判断して、取り敢えず今度こそ商業ギルドを後にした。
まだ3日ある。仕事を受けるにしても、出発前の安全確認をするにしても、やはりここには来ておいた方がいいだろう。
今度来た時は、好みの若くて可愛い女の子が居てくれるといいな。なんて思いながら。
一生行商人やるのも珍しくない世界。おっさんだからと言って、そこに違いはない。
結構きついのに、命の危険もそれなりにあるのにぼろ儲け出来る商売でもない。たま~~に1発当てる輩も居るようだけど。
行商から始めて店を持てるようになる人はごく一部。金も掛かるし、それなりの信用も要る。誰でも気軽に起業できる世界ではない。
ないない尽くしのマイナス発言ばかりだったけど、それも仕方ない。
本当に、全く、これと言って、これっぽっちも、『出会い』なんてものは無かったから。初めての商業ギルド。テンプレって売ってないのかな。天ぷら食べたい。
やはり現実はこんなもの。何かあったらあったで鬱陶しく感じるくせに、何も無ければ無いで少し寂しく感じてしまう。人間て面倒な生き物だ。俺だけか?
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