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0. 長~いプロローグ

続々・選択肢と選択

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『話術』とか『交渉術』はまだ分かるけど、『商人』って、スキルなの? 能力?

 これはそっちの世界での新常識。まだ頭の中で整理出来てないからそう思ってしまうだけか。

 これは素直に受け入れるべき案件。あるのだからそいう事だ。大した売上げのあった会社でもなかったし、個人事業主としてならこんな感じかも。


 あっ。ああ。そういう事ね。

 『行商人』が選べるのか。これは商業権付きって事だった訳ね。個人事業主だっただけに、そこを配慮してくれたのか。

『行商権』ってのがあるんだね。

 所属と職業を確定させると、そこの国での行商権が得られると。当然その国で通用する身分証にもなると。

 その分商売するならその先々で税金も掛かるけど、何もしなければ町によっては入町税のみでいいと。

 あるんだね。入町税。冒険者なら要らないってのはお決まりの設定だね。受け入れて易くて助かります。


「……」

 えっと。これは反応に困るな。

 確かに、まだアウトソーシングなんて言葉が走りだった頃に、そんな超深闇ブラックな会社で色々経験を積ませてもらったけど、派遣会社の登録も比較的緩い時代にそっちの会社でも何かと経験させてもらったけど。

『行商人』以外にも、『奴隷商人』なんてのも選べるの?

 は?

 言い得て妙とも言えるけど、確かにそんな風に変換も出来るかもしれないけど、ちょいと大声では言えない話? 違うか。

『選択世界一般教養・一般常識』のお陰で『奴隷制度』があるのは理解出来るけど、買う側じゃなくて売る側に成れちゃうんだ。俺。


 人材管理も含めてやってたし。募集から採用面接、教育、先方との各種調整、勤怠管理、時には送迎とかもやってたなあ。欠勤者の対応で急遽現場に入る事も暫し。

 正に身を粉にして動き回ってたなあ。休みなんてマジで無かったし、当たり前のように早朝から日付が変わっても働いてたなあ。事務処理も多かったし、こっち側のタイムカードなんて埃を被ってたなあ。

 働いてくれてる人達の環境を守る為にこっちの命を削ってさあ。よくやってたよなあ。若さって凄いよね。

 今じゃ絶対に出来ない自信はあるし、やる気もないけどさ。


 結局、慣れない交代制勤務の夜勤明けで、居眠り運転で自爆事故したなあ。よくぞ死ななかったと思ったなあ。マジで無傷だったし。車は廃車になったけど。

 何か見えないものに守られてる気はしたんだよな。その時は。だから速攻退職させてもらったけど。その時は無知だったから、会社側に何の請求もしなかったんだよなあ。

 何かとふんだくってやれたはずなのに。無知って怖いよねえ。只、少しでも早く関わりを持ちたくないって思ってたんだから。怖い会社は本当に怖いしね。

 ああ、今では懐かしき真っ黒黒々労働環境。時代だねえ。


 ああ。ここでは人材とは言わずに奴隷って事になるのだが。そんな奴隷のように働いてたからかな。違うかな。まあいいけど。


 ……

 び、微妙~。これも国家資格で、それなりの身分とか試験とか、厳しい研修を受けて漸く成れるって認識の職業みたいなんだけど。

 無いな。

 国に飼われるなんて御免だし、いくら給金は良くても、生涯縛られる事になるみたいだし、そもそも自分も隷属契約されちゃうなんてさ。絶対嫌だ。

 もう奴隷のように生きたくない!

 やはり断る!

 もう社畜は御免だって思って独立したのにさ。生まれ変わってもその意思は受け継がれるのだよ。だからこれは無し!


 はい!

 冒険者。

 うん。職業『冒険者』は保留かな。やっぱり登録時のテンプレは味わいたい派。って事もないけど、チート能力がないならやりたくない職業の1つ。それが冒険者。

 俺は、基本的には争い事は嫌いだ。例えチート能力があったとしても、世紀末的にひゃっはーする気はない。夜を除いては。覗けるスキルのかあるのかな。


 基本的にはだけど。我慢ならない理不尽さとか、横暴な奴は大嫌い。遣られたら遣り返す。これも基本だけど。

 それが出来るだけの基本性能は欲しくて何かと習ってたけど。まあ今はいいや。戦闘関連のスキルは下の方にあるみたいだし、また後で。



『算術』は、MAXでいいんだ。何処を評価されたかは分からないけど、まあ、お決まりではあっちの義務教育を正しく卒業してればそれなりのレベルになるのだろうから。それはいいか。

 カンストはレベル10って事も分かったし。電卓なんて無くても軽い暗算なら今でも問題なく出来るしな。多分? 脳に損傷が無ければ。……


 えっと。これは?

『馬術』? 『馬車術』?

 馬には観光地のお試しで少し跨がった事はあったけど、それも術って付いちゃうのか? 勿論、馬車なんて乗った事も動かした事もないはずなのに。

 はて。

 あー。もしかして、運転免許? バイクの免許は大型まで持ってたし、自動車は軽だけど普段使いしてたから?

 勿論、ほぼ経費で。それが馬車術に変換されたと。都合よく考えてそう理解しよう。乗る事はあるかもしれないが、自分で御者をやる機会はあるのかな?

 それもいいか。取り敢えず、このまま仮確定。ポイント変換候補ではあるな。


 他にも細々としたのもあるけど、これとこれは変換しよ。黒歴史とまではいかないけど、役に立つって意味ではポイントになって新たな生活環境で安全に快適に暮らして行けるスキルに使った方がいいだろう。

 敢えて言葉にはしない死にスキル。誰しもが持ってるはずの恥ずかしい経験談。


 でも、一応『料理』『工作』『裁縫』『家事』『礼儀作法』は残しておこうかな。また役に立ってくれるはずだから。

 工作はDIYとかプラモで鍛えられてるから納得なんだけど、裁縫なんて、義務教育時代の記憶しかないのにな。

 あとは独り暮らしが長ければ必然的にこうなるのかな。潔癖とまではいかないけど結構綺麗好きだったし、ちょっと嬉しいような恥ずかしいようなスキルレベルだな。

 礼儀作法は、……。あれか。新入社員時の講習とかレクチャーも何かとあったしな。指導もしたしされたし。


『サバイバル術』は、きっとソロキャンプからだろうし、『楽器演奏』は、ギターとかサックスとか何かと手を出してたから納得か? まあいいや。これらも仮確定。


 あっ!

『家事』は『生活魔法』に変換可能みたい。そこは謎仕様に突っ込みを入れたい所だけど、寂しい独り暮らしの成果がここで発揮されるなら、これで便利そうな響きの魔法が使えるようになるなら安いもの。だと思うから早速変換。

 ぽちり

 うおっ!

『ライト』『ファイア』『ウォーター』『クリーン』『クロック』

 これが生活魔法。

 どれもごく少量の魔力を使用し、魔力を込めた分だけ効果、量も高まるが、あくまでもくくりは生活用の魔法で攻撃力はない。


 順に、手の平サイズの小さな薄明かりを灯す光。

 燃え易い枯葉や専用の魔道具を起動させる種火程度の着火。

 コップ一杯程度の飲料水。

 身体や身に付けている物をある程度綺麗にしてくれる洗浄。

 時間を知らせてくれる時計。魔力の追加でアラーム設定可能。


 これから行く世界では極々一般的な部類の魔法。ちょいと金を出せば誰でも覚えられるみたいだけど、この年齢で使えないのは恥ずかしい事になるみたい。それが生活魔法。

 これが使えるようになるだけでも行く価値のある世界。それが剣と魔法の世界。これは俺の価値観の話。


『……』

 ……

『……』

 ……

 使い方は分かるのに、声に出さなくても発動するはずなのに、ここでは発動してくれないのな。うんともすんとも言ってくれません。当然か。残念。

 早く使ってみたいのに。

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