上 下
7 / 10

真の報酬

しおりを挟む

 スインはゆっくり宝箱に近付く。

 終わったはずなのに、終わったはずだから現れていた。

 なんのエフェクトもなく、それは突然そこにあった。

『宝箱』

 またしても発見してしまったと思った。

 今度こそ凄いお宝が入っているに違いないと思った。


 モンスターハウスを攻略するれば何かは起きる。

 それは扉が開くとか、転移紋や宝箱が現れるとか。

 今回の場合は、宝箱が現れ、その先に進めそうな道が見えているという結果だった。

「……そ、そうだよな。当然こんな感じになるのが定番だよな。ははは。やったぜ」


 そんな事を呟きつつも現状を受け入れ、元おっさんは同じ過ちを繰り返さぬよう、しっかり鑑定して罠が無い事を確かめた。

 罠に掛かりまくるのは流石に勘弁して欲しい。当然の行為だった。更に先に進めばここは出られそうだし、なんとか生還できるような気もしてほっとした。

 そして今度こそ本当にお宝をゲット出来ると確信した。

 しっかり魔石を回収し、満を持して安心して宝箱を開けると、……


 そこには本当にお宝っぽいものが入っていた。

「……、お、おおっ!!」

 素人でも分かる。ぱっと見ただけでも業物の装備。鎧、盾、兜がぎっちり詰まっていた。

 男のロマン。自分が格好いいと思えるデザインの鎧を着てみたいという願望。欲望。

 それが今叶う。

 名前はどうでもよかった。性能もまずは気にしない。呪いの装備ではない事だけはしっかり確認し、早速装備してみようとした。

 だが。

 感動して、それを装備してみようとして、後ろに下がったのがいけなかった。いや。これは誰でも引っ掛かる罠なのではないだろうか。

 1人ではまず看破できない仕掛けだろう。これは仕方なかった。宝箱の周辺を囲むように、ドーナツ状の落とし穴が開かれた。

 ガコン

「っ!!」

 突然鳴り響いた音。つい最近聞いた事のあるような音がしたと思ったら、急な浮遊感と共に、やはり暗闇の中に居た。

「ぎゃーーっ!」

 本日2度目となる落とし穴。青年は学習できなかった。元おっさんはまたやってしまった。

 気を抜いたの時にこそ注意が必要だったのだ。喜びの絶頂から失意の奈落へ。

 中級ダンジョンは伊達じゃなかった。

「う、うわああぁぁ~~!」



 やはり浅はかだった。元おっさん、ダブルショック。猛省します。

 そう思った時には既に落とし穴の中。

 レベルは上がっても、頭のレベルは変わっていなかった。


 暗闇で、延々と続く滑り台のような感覚は一緒だった。

 風の音と、尻、背中を中心にして滑って行っているのも一緒だった。2度目ともなれば経験者。少し余裕を見せつつ発した言葉は、さっきと同じようなものだった。

 叫び声も同じだった。

 また何も出来ないまま長いスロープを下って行くのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

処理中です...