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真の報酬
しおりを挟むスインはゆっくり宝箱に近付く。
終わったはずなのに、終わったはずだから現れていた。
なんのエフェクトもなく、それは突然そこにあった。
『宝箱』
またしても発見してしまったと思った。
今度こそ凄いお宝が入っているに違いないと思った。
モンスターハウスを攻略するれば何かは起きる。
それは扉が開くとか、転移紋や宝箱が現れるとか。
今回の場合は、宝箱が現れ、その先に進めそうな道が見えているという結果だった。
「……そ、そうだよな。当然こんな感じになるのが定番だよな。ははは。やったぜ」
そんな事を呟きつつも現状を受け入れ、元おっさんは同じ過ちを繰り返さぬよう、しっかり鑑定して罠が無い事を確かめた。
罠に掛かりまくるのは流石に勘弁して欲しい。当然の行為だった。更に先に進めばここは出られそうだし、なんとか生還できるような気もしてほっとした。
そして今度こそ本当にお宝をゲット出来ると確信した。
しっかり魔石を回収し、満を持して安心して宝箱を開けると、……
そこには本当にお宝っぽいものが入っていた。
「……、お、おおっ!!」
素人でも分かる。ぱっと見ただけでも業物の装備。鎧、盾、兜がぎっちり詰まっていた。
男のロマン。自分が格好いいと思えるデザインの鎧を着てみたいという願望。欲望。
それが今叶う。
名前はどうでもよかった。性能もまずは気にしない。呪いの装備ではない事だけはしっかり確認し、早速装備してみようとした。
だが。
感動して、それを装備してみようとして、後ろに下がったのがいけなかった。いや。これは誰でも引っ掛かる罠なのではないだろうか。
1人ではまず看破できない仕掛けだろう。これは仕方なかった。宝箱の周辺を囲むように、ドーナツ状の落とし穴が開かれた。
ガコン
「っ!!」
突然鳴り響いた音。つい最近聞いた事のあるような音がしたと思ったら、急な浮遊感と共に、やはり暗闇の中に居た。
「ぎゃーーっ!」
本日2度目となる落とし穴。青年は学習できなかった。元おっさんはまたやってしまった。
気を抜いたの時にこそ注意が必要だったのだ。喜びの絶頂から失意の奈落へ。
中級ダンジョンは伊達じゃなかった。
「う、うわああぁぁ~~!」
やはり浅はかだった。元おっさん、ダブルショック。猛省します。
そう思った時には既に落とし穴の中。
レベルは上がっても、頭のレベルは変わっていなかった。
暗闇で、延々と続く滑り台のような感覚は一緒だった。
風の音と、尻、背中を中心にして滑って行っているのも一緒だった。2度目ともなれば経験者。少し余裕を見せつつ発した言葉は、さっきと同じようなものだった。
叫び声も同じだった。
また何も出来ないまま長いスロープを下って行くのだった。
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