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第十二章 浪華裏花街エレジィ
とりどりの獄
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一瞬虚を突かれたように動きを止めた藤兵衛だったが、やがて呵々と大笑した。
「一騎打ち! そらますますおもろい! 片倉はん、そら賭けやない。――決闘やろ」
藤兵衛の目が据わった。
闇の商売人としてではなく、幾つもの修羅場を生き延びてきた渡世人としての表情だ。
「旦那はん、あかん! 逃げとうせ!」
「もうええ! うちが戻るさか……!」
「だあっとれ! ワレら!!」
口々に叫ぶ弥助と瑠璃駒を一喝する藤兵衛。
再び隼人に向き直ると、眼光はそのままに存外穏やかな声で問い掛けた。
「片倉はん、こいつらがあんたにとっての何なんかはよう知らん。せやけど尋常なこっちゃないで。ほれ、瑠璃駒も戸惑うてるやないか。そこまでする理由はなんやねんな」
隼人は藤兵衛から瑠璃駒、弥助へと順に視線を移し、そしてまた藤兵衛を見据えて言い放った。
「何も。それがしの勝手。したいようにしているのみでござる」
藤兵衛は、にやりと笑った。
「はっ! 酔狂なこっちゃ。しゃあけど――嫌いと違うで」
おい! と周囲の手下に合図を送ると、一振りの日本刀が差し出された。
他の者からは、隼人にも刀が突き出されている。長ドスではなく、鍔も柄巻きも備えたしっかりとした拵えのものだ。
藤兵衛は足元の雪駄を跳ねて羽織を脱ぎ、腰を落として着流しの裾を割った。
そして両腕を交差させるように袖を抜き、ぐっと諸肌を脱いだ。両の肩周りに、龍門を登る鯉の刺青が浮かび上がっている。
「お前ら、手ぇ出すんとちゃうぞ。片倉はん、刀、検めなはれ」
「結構。そなたらが使うはずだったものでござろう」
へっ、と嬉しそうに吐き捨て、藤兵衛は手下の捧げ持つ鞘から刀を抜き出した。
隼人も受け取った刀を、そのまま帯に差す。
「やろか」
藤兵衛は、抜身をゆっくりと正眼にとった。
堂々たる構え。
さすがは“位の桃井”と称された鏡心明智流の薫陶を受けてきただけはある。
一方、対する隼人は刀を抜かず、帯刀のまま鯉口を切って柄に右手を掛けている。
軽く腰を落とし、相手の様子を見守るかのような構えだ。
「居合とは味なマネしはるな。まあ――防いでみいや!」
瞬時に地を蹴って間合いを詰めてきた藤兵衛が、おそろしい速度で真向に斬り下ろしてきた。
半身になって躱す隼人の足元から、即座に斬り上げの二の太刀が襲ってくる。
大きく足を上げて後退しそれも回避したが、間髪入れずに刺突で追い込んできた。
隼人は身を捻って躱し、飛び退って再び居合で迎え撃つ構えをとった。
藤兵衛の流れるような動きの三連撃。
深い鍛錬と実戦での経験値を感じさせる、正統派の剣術だ。
「居合でワシは……斬れんで!」
そう言い放ち、再び間合いを詰める藤兵衛。
切っ先に刺突の色を見せつつ、小さく鋭い籠手撃ちで柄に手掛けしたままの隼人の右手を狙った。
それを捌くべく、隼人が手元を浮かせた瞬間。
連続攻撃で本命の正面撃ちが迫りくる。
藤兵衛の太刀が頭上に至ろうかというその時、隼人は沈み込みながら真っすぐに刀を抜き出した。
抜刀の勢いで電光のように伸びた柄頭が、藤兵衛の鳩尾を強かに穿つ。
変形の柄当てだ。
横隔膜が強制収縮する激痛で身を硬直させた藤兵衛は刀を取り落とし、呻き声と共に一瞬遅れてうずくまった。
「無陣流居合、“飛鳥箭”」
隼人が音もなく刀身を鞘に戻したとき、藤兵衛の手下たちが雄叫びを上げて得物を振りかざしこちらへと殺到してきた。
若頭と思しき男が「殺せ」と叫んでいる。苦しい息の下で藤兵衛がそれを制そうとしたが、もはや彼らの耳には届かない。
と、その時。
「おぉぉぉらぁぁぁぁぁっ!!」
その横から飛び出してきた人影。草介だ。
手にはどこかからくすねてきたのか七尺ほどの竹竿。それを振り回し、暴漢の群れに踊り込んだ。
虚を突かれた若いやくざ者たちが浮足立つと、さらにすぐ近くから幾つもの呼子笛が鳴らされた。
巡査たちだ。
「草介はぁん! お巡りさん呼んでったでぇ!!」
建物の陰から大声で呼ばわったのは菊子だ。大勢の足音がこちらに向けて駆けてくる音が聞こえる。
蜘蛛の子を散らすように、やくざ者たちが退散しだした。
数名が頭の藤兵衛を両脇から抱え、引き摺るようにして連れて行こうとしている。
が、藤兵衛はそれを振り払い、隼人に目を向けた。
「あんた……正しいことした気でおるんやないやろな」
「無論。すべて自身の満足のため」
それを聞いて、ふっと表情を緩める藤兵衛。
隼人は黙って、約束していた為替手形を差し出した。
「いるかいや」
藤兵衛はそう言って笑うと、踵を返して自身の足で駆け出した。
呼子笛の音がさらに近付き、やくざ者を追う巡査たちの声も響いている。
舟着き場には巻き込まれた形の舟頭、そして弥助と瑠璃駒が呆然と立ち尽くしていた。
隼人に草介、菊子もそこに集まり、自然に対峙する形になった。
「弥助殿、瑠璃駒殿、乗られよ。舟頭殿、よろしく頼む」
かける言葉はさして多かろうはずもない。草介も黙ってその場を見守るだけだ。
「せや、あの……これ。見つかったんやけど……」
思い出したように菊子が取り出したのは、瑠璃駒の亡父が託した珊瑚の簪。
一旦撥ね付けたものであるため、瑠璃駒の目に逡巡の色が浮かぶ。
続いて隼人が先ほどの為替手形を弥助に差し出した。無言だ。
だが、弥助は首を横に振った。
代わりに手にしたのは、菊子が捧げ持つ簪だった。
「旦那はん方、お嬢はん、御礼の言葉もありまへん」
そう言って、傍らの瑠璃駒を見やった。
「仏さんの御加護にしか思われへんが……これからもひょっとすると地獄が待ってるかもわからん。せやけど瑠璃駒、何地獄でも一緒に行くさかい」
「弥助……阿呆ぅ」
美しい顔をくしゃっと歪めた瑠璃駒の髪に、弥助はそっと簪を挿した。
瑠璃駒はそれを拒むことなく、二人は舟上へと移る。
舟頭が竿を繰り出し、舟が岸を離れてゆく。
と、瑠璃駒が隼人を真っすぐに見た。
「旦那はん、役に立つかわかれへんけど……お客に海軍さんの秘密の船に乗ってるんやて漏らした人がおった。ずうっと北の方へ向かうんやって……それだけ――おおきに、おおきにさんです……!」
遠ざかってゆく舟の上で弥助と瑠璃駒はいつまでもこちらを見つめ、いつしか二人はその手をきゅっと握りあっていた。
「あかん……尊……鼻血出そう」
菊子が鼻の辺りを押さえ、涙声で呟く。
そしてやにわに隼人と草介を見やり、得も言われぬ慈愛に満ちた表情となった。
「お二人さんも、これで落着やね! どうかお幸せに。あっ、せや。あの……一瞬だけ二人手ぇつないでくれへん?」
「なんでやねん」
思わず突っ込んだ草介をよそに、隼人だけが不思議そうな顔をしていた。
「一騎打ち! そらますますおもろい! 片倉はん、そら賭けやない。――決闘やろ」
藤兵衛の目が据わった。
闇の商売人としてではなく、幾つもの修羅場を生き延びてきた渡世人としての表情だ。
「旦那はん、あかん! 逃げとうせ!」
「もうええ! うちが戻るさか……!」
「だあっとれ! ワレら!!」
口々に叫ぶ弥助と瑠璃駒を一喝する藤兵衛。
再び隼人に向き直ると、眼光はそのままに存外穏やかな声で問い掛けた。
「片倉はん、こいつらがあんたにとっての何なんかはよう知らん。せやけど尋常なこっちゃないで。ほれ、瑠璃駒も戸惑うてるやないか。そこまでする理由はなんやねんな」
隼人は藤兵衛から瑠璃駒、弥助へと順に視線を移し、そしてまた藤兵衛を見据えて言い放った。
「何も。それがしの勝手。したいようにしているのみでござる」
藤兵衛は、にやりと笑った。
「はっ! 酔狂なこっちゃ。しゃあけど――嫌いと違うで」
おい! と周囲の手下に合図を送ると、一振りの日本刀が差し出された。
他の者からは、隼人にも刀が突き出されている。長ドスではなく、鍔も柄巻きも備えたしっかりとした拵えのものだ。
藤兵衛は足元の雪駄を跳ねて羽織を脱ぎ、腰を落として着流しの裾を割った。
そして両腕を交差させるように袖を抜き、ぐっと諸肌を脱いだ。両の肩周りに、龍門を登る鯉の刺青が浮かび上がっている。
「お前ら、手ぇ出すんとちゃうぞ。片倉はん、刀、検めなはれ」
「結構。そなたらが使うはずだったものでござろう」
へっ、と嬉しそうに吐き捨て、藤兵衛は手下の捧げ持つ鞘から刀を抜き出した。
隼人も受け取った刀を、そのまま帯に差す。
「やろか」
藤兵衛は、抜身をゆっくりと正眼にとった。
堂々たる構え。
さすがは“位の桃井”と称された鏡心明智流の薫陶を受けてきただけはある。
一方、対する隼人は刀を抜かず、帯刀のまま鯉口を切って柄に右手を掛けている。
軽く腰を落とし、相手の様子を見守るかのような構えだ。
「居合とは味なマネしはるな。まあ――防いでみいや!」
瞬時に地を蹴って間合いを詰めてきた藤兵衛が、おそろしい速度で真向に斬り下ろしてきた。
半身になって躱す隼人の足元から、即座に斬り上げの二の太刀が襲ってくる。
大きく足を上げて後退しそれも回避したが、間髪入れずに刺突で追い込んできた。
隼人は身を捻って躱し、飛び退って再び居合で迎え撃つ構えをとった。
藤兵衛の流れるような動きの三連撃。
深い鍛錬と実戦での経験値を感じさせる、正統派の剣術だ。
「居合でワシは……斬れんで!」
そう言い放ち、再び間合いを詰める藤兵衛。
切っ先に刺突の色を見せつつ、小さく鋭い籠手撃ちで柄に手掛けしたままの隼人の右手を狙った。
それを捌くべく、隼人が手元を浮かせた瞬間。
連続攻撃で本命の正面撃ちが迫りくる。
藤兵衛の太刀が頭上に至ろうかというその時、隼人は沈み込みながら真っすぐに刀を抜き出した。
抜刀の勢いで電光のように伸びた柄頭が、藤兵衛の鳩尾を強かに穿つ。
変形の柄当てだ。
横隔膜が強制収縮する激痛で身を硬直させた藤兵衛は刀を取り落とし、呻き声と共に一瞬遅れてうずくまった。
「無陣流居合、“飛鳥箭”」
隼人が音もなく刀身を鞘に戻したとき、藤兵衛の手下たちが雄叫びを上げて得物を振りかざしこちらへと殺到してきた。
若頭と思しき男が「殺せ」と叫んでいる。苦しい息の下で藤兵衛がそれを制そうとしたが、もはや彼らの耳には届かない。
と、その時。
「おぉぉぉらぁぁぁぁぁっ!!」
その横から飛び出してきた人影。草介だ。
手にはどこかからくすねてきたのか七尺ほどの竹竿。それを振り回し、暴漢の群れに踊り込んだ。
虚を突かれた若いやくざ者たちが浮足立つと、さらにすぐ近くから幾つもの呼子笛が鳴らされた。
巡査たちだ。
「草介はぁん! お巡りさん呼んでったでぇ!!」
建物の陰から大声で呼ばわったのは菊子だ。大勢の足音がこちらに向けて駆けてくる音が聞こえる。
蜘蛛の子を散らすように、やくざ者たちが退散しだした。
数名が頭の藤兵衛を両脇から抱え、引き摺るようにして連れて行こうとしている。
が、藤兵衛はそれを振り払い、隼人に目を向けた。
「あんた……正しいことした気でおるんやないやろな」
「無論。すべて自身の満足のため」
それを聞いて、ふっと表情を緩める藤兵衛。
隼人は黙って、約束していた為替手形を差し出した。
「いるかいや」
藤兵衛はそう言って笑うと、踵を返して自身の足で駆け出した。
呼子笛の音がさらに近付き、やくざ者を追う巡査たちの声も響いている。
舟着き場には巻き込まれた形の舟頭、そして弥助と瑠璃駒が呆然と立ち尽くしていた。
隼人に草介、菊子もそこに集まり、自然に対峙する形になった。
「弥助殿、瑠璃駒殿、乗られよ。舟頭殿、よろしく頼む」
かける言葉はさして多かろうはずもない。草介も黙ってその場を見守るだけだ。
「せや、あの……これ。見つかったんやけど……」
思い出したように菊子が取り出したのは、瑠璃駒の亡父が託した珊瑚の簪。
一旦撥ね付けたものであるため、瑠璃駒の目に逡巡の色が浮かぶ。
続いて隼人が先ほどの為替手形を弥助に差し出した。無言だ。
だが、弥助は首を横に振った。
代わりに手にしたのは、菊子が捧げ持つ簪だった。
「旦那はん方、お嬢はん、御礼の言葉もありまへん」
そう言って、傍らの瑠璃駒を見やった。
「仏さんの御加護にしか思われへんが……これからもひょっとすると地獄が待ってるかもわからん。せやけど瑠璃駒、何地獄でも一緒に行くさかい」
「弥助……阿呆ぅ」
美しい顔をくしゃっと歪めた瑠璃駒の髪に、弥助はそっと簪を挿した。
瑠璃駒はそれを拒むことなく、二人は舟上へと移る。
舟頭が竿を繰り出し、舟が岸を離れてゆく。
と、瑠璃駒が隼人を真っすぐに見た。
「旦那はん、役に立つかわかれへんけど……お客に海軍さんの秘密の船に乗ってるんやて漏らした人がおった。ずうっと北の方へ向かうんやって……それだけ――おおきに、おおきにさんです……!」
遠ざかってゆく舟の上で弥助と瑠璃駒はいつまでもこちらを見つめ、いつしか二人はその手をきゅっと握りあっていた。
「あかん……尊……鼻血出そう」
菊子が鼻の辺りを押さえ、涙声で呟く。
そしてやにわに隼人と草介を見やり、得も言われぬ慈愛に満ちた表情となった。
「お二人さんも、これで落着やね! どうかお幸せに。あっ、せや。あの……一瞬だけ二人手ぇつないでくれへん?」
「なんでやねん」
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