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第5章 和歌山城の凶妖たちと、特務文化遺産審議会
結界破りの正体
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真っ暗闇と思ったのは一瞬で、壁沿いに小さな非常灯のようなものが点々とともっている。
その周囲だけは頼りない光にぽうっと照らされており、わたしたちが寄り添うすぐ近くにも点灯している。
いくつにも区切られたであろう広間のほうぼうからは、悲鳴に混じって何かたくさんの生き物が走り回るような音が聞こえてくる。
ユラさん、コロちゃんマロくんは無事だろうか。
あの3人なら滅多ことなんてないだろうけど……ともかくも、明かりを――。
わたしがライトを点けようとスマホを取り出したとき、その震える手を鈴木さんが掴んで押し留めた。
「雑賀さん、待って。光はだめだ」
彼はそう言うと、非常灯の脇に設置された懐中電灯にそっと手を伸ばした。
視界の端で、何か小型犬くらいの大きさの生き物が、何匹も素早く動き回っているのがわかった。
鈴木さんが懐中電灯のスイッチを入れると同時に、それを部屋の隅に向けて放り投げた。
間髪入れず、ざざざざあっ、と無数の生物がその光に向けて群がってゆく。
浮かび上がったのは、ムササビを一回り大きくしたかのような奇怪な動物たち。
牙を立てて、懐中電灯が放つ光に食いつこうとしている。
「さあ!今のうちに!」
鈴木さんに手を引かれるまま、わたしたちは駆け出した。手近の扉を開けて外へ飛び出し、しっかりと閉め直す。
そこはどういうわけか、最初に天守曲輪へ入ったときに見た渡り廊下状の櫓のひとつのようだった。
「はあっ、はあっ……鈴木さん、いまのは……」
呼吸を整えながらわたしは尋ねた。
即座に対策を立てて部屋から脱出したため、あの奇怪な生き物のことを彼は知っているようだったから。
「あれは、"野衾"といいます。夜に人を襲って提灯の火を食い、生き血を吸うあやかし。かつては和歌山城の森にたくさんいたと聞いています」
火を食う、あやかし――。
そして生き血を吸うだなんて、他のみんなは無事なのだろうか。
「とはいえ、個体としての力はさほどではありません。紀伊の結界守があれだけいるんですから、おそらく皆さん大事ないでしょう」
わたしの心配を見越したように鈴木さんがそう言い、にこっと微笑んだ。
この人が笑うと安心するような、その反面でなぜかどうしようもなくもの悲しくなるような、不思議な思いに包まれてしまう。
「鈴木さん、あの……」
「秀、でいいですよ。とりあえず、天守の上から結界の様子を確認しましょう。お話は移動しながら」
彼の申し出通りに"シュウさん"と呼ぶことにして、天守へと向かいながら状況を整理する。
さっきまでわたしたちがいた広間が"間"であったように、今見ている景色も現実の和歌山城とは異なるものだ。
それは、うつし世とかくり世の境界にある世界。
その証拠に、外の周囲はぐるりと黒い膜のようなもので覆われており、あの時の陵山古墳や南紀重國を祀る屋敷とまったく同じだ。
ここの結界全体を上から見渡せるよう、大天守から確認することが必要だという。
他の結界守たちもおそらくそうするだろうとのことなので、集合ポイントとしても妥当な場所だ。
わたしはシュウさんについてひたひたと櫓の渡り廊下を進み、小天守のフロアから大天守へ、そしてその上へと至る階段にそろりと足をかけた。
和歌山城はその構造物のほとんどが第二次大戦時の空襲で焼失しており、現在の建物は1958年に外観復元されたものという。
3層3階の内部は資料館になっており、紀州藩ゆかりの武具類や古文書などが展示されている。
"間"となって不気味な気配の漂う各階を息を殺して抜け、慎重に階段を上っていく。
と、最上階のあたりからかすかな人声がしているようだ。
「みんな!よかった……」
最後の階段を上り切る前に、そこに結界守たちが集まっているのが見え、わたしはユラさんとコロちゃんマロくんのもとへと駆け寄った。
広間から脱出したのはついさっきのように感じられるので、てっきりわたしたちが一番乗りかと思っていたがどうやら最後のようだ。
「あかり先生、怪我しとれへん?」
「こわい思いしたよねえ」
「もう大丈夫だからね」
かわるがわる心配してもらって泣きそうになるが、そうだ、ここまで連れてきてくれたシュウさんにお礼を言わなきゃ。
けど、その直前にあの龍厳和尚が口を開いた。
「みんな、無事でおるな。しかしこれではっきりしたわい。やはり結界を破り、あやかしの侵入を手引しとる者がおる。――この中に」
和尚の宣言と同時に、結界守たちが手にした檜扇や独鈷杵、あるいは数珠などの法具をジャキッと構えた。
半円形に包囲されたその中心には、一人佇むシュウさんの姿があった。
「え……?何、なんの……」
混乱するわたしの思いとはよそに、囲まれたシュウさんは素早く天守の廻り縁へと躍り出た。
しかし、外にはオサカベさんと頼江課長が待機しており、拳銃のようなものを向けて両側から挟み撃ちにしている。
「動きぃな。じっとしとりよ。ぼくかって撃ちたないさかい」
冷徹な声で、オサカベさんがシュウさんを牽制する。
だがシュウさんはそれを振り切るように高欄に足を掛け、黒い霧のようなものが立つ大屋根へと飛び下りる姿勢をみせた。
が、その機先を制して頼江課長がシュウさんの手元の高欄目掛けて発砲し、チュインッと跳弾する音が響いた。
「ッダラァ!っんま、このガキャ!!じっとせえ言うとらして!!」
人が変わったかのような頼江課長の剣幕に、シュウさんはふっと表情を緩めると両手を顔の横にあげ、降参のポーズを示した。
「えっ……、ちょ…待っ……」
事態を飲み込めず、ふらりとそちらに足を踏み出そうとするわたしを、ユラさんとコロちゃんマロくんが押し留めた。
ユラさんを見ると無念そうに、静かに顔を左右に振った。
「ふふ。精鋭と言われた紀伊の結界守も、簡単に本拠を落とされましたね。しかも"野衾"なんて下級あやかしが出たくらいで。ふふ、ははは」
目の前で笑うシュウさんを、わたしは信じられない思いで呆然と見るばかりだ。
結界を破った――?
あやかしの侵入を手引き――?
何を…何を言っているの?
「鈴木秀。裏雑賀の代理に成りすまして、当城を襲撃した容疑で身柄を拘束させてもらうで。おまはんの処分は、特殊文化遺産保護法および関連条例に準じて決められる」
頼江課長が銃の狙いをつけたまま、淡々と申し伝える。
が、シュウさんはさらにもう一段高欄を上った。
「正気かワレェ!!間に落ちて自決するつもりなんか!!」
龍厳和尚が、慌てたように一喝して詰め寄った。
「……だからあなた方では、役不足だっていうんだよ」
シュウさんは嘲るようにそう言うと、仰向けになって高欄からその身を滑り落とした。
皆があっという間もなく、立ち込めた黒い霧の彼方へと落下していく。
その周囲だけは頼りない光にぽうっと照らされており、わたしたちが寄り添うすぐ近くにも点灯している。
いくつにも区切られたであろう広間のほうぼうからは、悲鳴に混じって何かたくさんの生き物が走り回るような音が聞こえてくる。
ユラさん、コロちゃんマロくんは無事だろうか。
あの3人なら滅多ことなんてないだろうけど……ともかくも、明かりを――。
わたしがライトを点けようとスマホを取り出したとき、その震える手を鈴木さんが掴んで押し留めた。
「雑賀さん、待って。光はだめだ」
彼はそう言うと、非常灯の脇に設置された懐中電灯にそっと手を伸ばした。
視界の端で、何か小型犬くらいの大きさの生き物が、何匹も素早く動き回っているのがわかった。
鈴木さんが懐中電灯のスイッチを入れると同時に、それを部屋の隅に向けて放り投げた。
間髪入れず、ざざざざあっ、と無数の生物がその光に向けて群がってゆく。
浮かび上がったのは、ムササビを一回り大きくしたかのような奇怪な動物たち。
牙を立てて、懐中電灯が放つ光に食いつこうとしている。
「さあ!今のうちに!」
鈴木さんに手を引かれるまま、わたしたちは駆け出した。手近の扉を開けて外へ飛び出し、しっかりと閉め直す。
そこはどういうわけか、最初に天守曲輪へ入ったときに見た渡り廊下状の櫓のひとつのようだった。
「はあっ、はあっ……鈴木さん、いまのは……」
呼吸を整えながらわたしは尋ねた。
即座に対策を立てて部屋から脱出したため、あの奇怪な生き物のことを彼は知っているようだったから。
「あれは、"野衾"といいます。夜に人を襲って提灯の火を食い、生き血を吸うあやかし。かつては和歌山城の森にたくさんいたと聞いています」
火を食う、あやかし――。
そして生き血を吸うだなんて、他のみんなは無事なのだろうか。
「とはいえ、個体としての力はさほどではありません。紀伊の結界守があれだけいるんですから、おそらく皆さん大事ないでしょう」
わたしの心配を見越したように鈴木さんがそう言い、にこっと微笑んだ。
この人が笑うと安心するような、その反面でなぜかどうしようもなくもの悲しくなるような、不思議な思いに包まれてしまう。
「鈴木さん、あの……」
「秀、でいいですよ。とりあえず、天守の上から結界の様子を確認しましょう。お話は移動しながら」
彼の申し出通りに"シュウさん"と呼ぶことにして、天守へと向かいながら状況を整理する。
さっきまでわたしたちがいた広間が"間"であったように、今見ている景色も現実の和歌山城とは異なるものだ。
それは、うつし世とかくり世の境界にある世界。
その証拠に、外の周囲はぐるりと黒い膜のようなもので覆われており、あの時の陵山古墳や南紀重國を祀る屋敷とまったく同じだ。
ここの結界全体を上から見渡せるよう、大天守から確認することが必要だという。
他の結界守たちもおそらくそうするだろうとのことなので、集合ポイントとしても妥当な場所だ。
わたしはシュウさんについてひたひたと櫓の渡り廊下を進み、小天守のフロアから大天守へ、そしてその上へと至る階段にそろりと足をかけた。
和歌山城はその構造物のほとんどが第二次大戦時の空襲で焼失しており、現在の建物は1958年に外観復元されたものという。
3層3階の内部は資料館になっており、紀州藩ゆかりの武具類や古文書などが展示されている。
"間"となって不気味な気配の漂う各階を息を殺して抜け、慎重に階段を上っていく。
と、最上階のあたりからかすかな人声がしているようだ。
「みんな!よかった……」
最後の階段を上り切る前に、そこに結界守たちが集まっているのが見え、わたしはユラさんとコロちゃんマロくんのもとへと駆け寄った。
広間から脱出したのはついさっきのように感じられるので、てっきりわたしたちが一番乗りかと思っていたがどうやら最後のようだ。
「あかり先生、怪我しとれへん?」
「こわい思いしたよねえ」
「もう大丈夫だからね」
かわるがわる心配してもらって泣きそうになるが、そうだ、ここまで連れてきてくれたシュウさんにお礼を言わなきゃ。
けど、その直前にあの龍厳和尚が口を開いた。
「みんな、無事でおるな。しかしこれではっきりしたわい。やはり結界を破り、あやかしの侵入を手引しとる者がおる。――この中に」
和尚の宣言と同時に、結界守たちが手にした檜扇や独鈷杵、あるいは数珠などの法具をジャキッと構えた。
半円形に包囲されたその中心には、一人佇むシュウさんの姿があった。
「え……?何、なんの……」
混乱するわたしの思いとはよそに、囲まれたシュウさんは素早く天守の廻り縁へと躍り出た。
しかし、外にはオサカベさんと頼江課長が待機しており、拳銃のようなものを向けて両側から挟み撃ちにしている。
「動きぃな。じっとしとりよ。ぼくかって撃ちたないさかい」
冷徹な声で、オサカベさんがシュウさんを牽制する。
だがシュウさんはそれを振り切るように高欄に足を掛け、黒い霧のようなものが立つ大屋根へと飛び下りる姿勢をみせた。
が、その機先を制して頼江課長がシュウさんの手元の高欄目掛けて発砲し、チュインッと跳弾する音が響いた。
「ッダラァ!っんま、このガキャ!!じっとせえ言うとらして!!」
人が変わったかのような頼江課長の剣幕に、シュウさんはふっと表情を緩めると両手を顔の横にあげ、降参のポーズを示した。
「えっ……、ちょ…待っ……」
事態を飲み込めず、ふらりとそちらに足を踏み出そうとするわたしを、ユラさんとコロちゃんマロくんが押し留めた。
ユラさんを見ると無念そうに、静かに顔を左右に振った。
「ふふ。精鋭と言われた紀伊の結界守も、簡単に本拠を落とされましたね。しかも"野衾"なんて下級あやかしが出たくらいで。ふふ、ははは」
目の前で笑うシュウさんを、わたしは信じられない思いで呆然と見るばかりだ。
結界を破った――?
あやかしの侵入を手引き――?
何を…何を言っているの?
「鈴木秀。裏雑賀の代理に成りすまして、当城を襲撃した容疑で身柄を拘束させてもらうで。おまはんの処分は、特殊文化遺産保護法および関連条例に準じて決められる」
頼江課長が銃の狙いをつけたまま、淡々と申し伝える。
が、シュウさんはさらにもう一段高欄を上った。
「正気かワレェ!!間に落ちて自決するつもりなんか!!」
龍厳和尚が、慌てたように一喝して詰め寄った。
「……だからあなた方では、役不足だっていうんだよ」
シュウさんは嘲るようにそう言うと、仰向けになって高欄からその身を滑り落とした。
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