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239 推しとの結婚式①
しおりを挟む「素晴らしい晴天だな」
「こちらの花々の美しい事…。あちらの水面にも花が飾られているんですね」
「古い教会をそのまま、キレイに改築したそうだ。それにしても美しい。内側から光り輝いているな」
挙式のある教会に、続々と貴族達が参列する。
キタキタと、私はこっそり教会に仕掛けた魔術で観覧していた。
「こちらに移住を希望する、修道士や修道女も増えているそうだ。祈りの力で輝きが増しているのだろう」
「こちらにギルドが出来てから、信者も良く通うそうだから、教会としても喜ばしい事だ」
教会で暮らす者たちや、新たに建設し直した孤児院の子供達も招待しているので、花冠を付けた子供達が楽しそうにはしゃいでいる。
「…こちらの孤児院の子供達は、随分と健やかに育っているのだな」
一人の貴族が感慨深く呟く。
そりゃそうだ。
私が領主なんだからね!!
「ああ、ギル殿は随分と手を掛けているそうだ。魔術や剣術の才能のある希望者は学園にも通わせ、どちらが乏しくとも商いで働ける様に計算などの勉強はしっかりとしていると聞いた」
「素晴らしいわ」
温泉やかき氷やレモン製品、ギルドに学園とありがたい事に富が続々と産まれてくれるので、そのお金は領民やら福祉にガンガン還元している。
行き場を無くした孤児達も引き取り、しっかり教育して送り出す体制を作りたいし、才能を潰したく無いと周りに掛け合えば、私はまるで聖者のように扱われた。
…領地の利益を産む為にしてるだけなのに。
孤児でそのまま浮浪者になる者も多いし、浮浪者が多いとやはり治安が悪くなる。
治安が悪くなると、人々は敬遠して足を遠ざけてしまうし、そうなると悪循環でもっと悪いのが集まってしまう。
その危険因子を少しでも減らし、労働力に変えたいだけなんだけどねぇ…。
「それと、周りとソリの合わない人間にも適応した場所を提供しているそうだ」
「ええ、聞きましたわ。ほら、どこぞの令嬢で開発や実験が好きな方がいらしたじゃない?婚約者もおらず、ご家族も将来を不安視されていましたけれど、ギル様が才能を買ってこちらに招待したのだとか…」
「ああ、隣の領地の三男坊も似た様な感じであったが、こちらで伸び伸びと成果を出しているそうだ。それぞれに適した場所を考案されるとは素晴らしい方だよ」
他人との関係を構築する事が苦手な人でも、素晴らしい才能の持ち主って多いじゃない?
その人達が腐っていくのも勿体無いと思っただけなんだけどね。
やっぱり貴族に産まれたら、周りと話を合わしたり煌びやかなパーティーで社交が出来ないと爪弾きにされちゃう。
どんなに才能があっても、家の為に動けないと判断されがちなんだよね。
学園に来る貴族達は、そう言った人達も多いのだけど、それでも冒険者として活動するのも難しい感じ人も中にはいる。
だったら、こちらで出来そうな仕事を提供しても良いのではと考えたんだ。
腐っても貴族出身だから、それなりに勉強は叩き込まれているし、礼儀作法もそれなりに出来る。
人と完全に関わらない仕事は、更に周りから孤立しそうだから避けて、程々に他人と関わりを持てる研究所や魔術を使った清掃、馬車の通る道への防護魔法の点検など、レモルトが発展するに連れて仕事は増えているからね。
孤児院の職員としても派遣して、自分がどれだけ恵まれた環境だったかを痛感した者達は、子供達を通して少しずつ一緒に成長している様だと周りの神父達も喜んでいた。
「さぁさぁ。そろそろギル様とテオドール様がいらっしゃいますよ。皆さん。あちらに並びましょう」
「「はぁ~い」」
シスターのロウズが子供達を誘導して行く。
教会の代表である神父シトロネの母親である。
美しいウェーブの黒髪と黒い瞳の持ち主で、子供達の母・祖母的存在の厳しくも優しい愛情深い女性だ。
「ロウズ殿…!お久しぶりですな」
まぁ…!ロースト伯爵ではありませんか…。お久しぶりですわね…」
そこへ、帝国のロースト伯爵が話し掛ける。
最近レモルトと取引を開始した、塩作りや海産物で有名な海近くの領地を治める、ロウズと同世代位の伯爵だ。
レモルトには海が無いから、良い取引先なんだ。
「こちらにいらしたのですね…」
「…ええ。こちらの先代の神父様に大変良くして頂きまして。優しい方ばかりで…。前は冬は寒さも厳しい所でしたが、ギル様が教会にも大変力を注いでくださって、随分と過ごし易くなりましたの。今は私の様な寡婦も、暖かく迎えてくださっているんですよ」
寡婦と聞いて、ロースト伯爵は少し驚いた顔をし、ロウズは少し悲しげに微笑んだ。
「…!そうでしたか…」
「ええ、今日はギル様達のお式でしょう?子供達も大変張り切っておりますの。…さ、皆さんあちらへ。それでは、失礼致します」
子供達の手を取り、お辞儀をしてロウズは教会の後ろへ下がる。
その姿を、ロースト伯爵が目で追っているのを
しめしめと覗く。
ロースト伯爵は、近く代替りする。
その後はラッカルか領地で隠居かと聞いていたが、レモルトに連れて来れれば、今後の取引が安定しそうなんだよね~。
実は二人が若かりし頃、両想いだったと言う情報が入ったのだ。
残念ながら、ロウズは違う伯爵家へ嫁いだのだが、相手が悪く子供が小さい頃に一方的に離縁され子供ごと追い出されたのだ。
貴族が離縁ってやはり聞こえが悪くて、実家も兄が継いでいるから帰れない。
そこに救いの手を差し伸べたのがレモルトの前神父とシスターで、ロウズは子供と元にこちらに身を寄せ、子供は立派に成長して神父になった経緯がある。
本当に良く働き、貴族への対応の仕方も素晴らしいロウズに感動して調べた所、そんな事が分かったんだ。
色々調べて、ロースト伯爵も結婚後もやはりロウズを思っていた様で、奥様が早くに亡くなってからは後妻も娶らずに一人頑張って来たんだって。
あちらも評判の良い方だったから、老婆心…野次馬根性でちょっと繋げてみようと試みたのだ。
今後二人がどうなるかは、二人次第だけど、キッカケ作りくらいはしてみても良いよね?
私達の結婚式で、良い縁が生まれたら縁起が良いからさ。
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ほんとに大好き過ぎて何回も読んでます
これからも身体に気を付けて頑張って下さい
楽しみにしています
ありがとうございます!
今月は出来るだけ毎日、更新を頑張ろうと思っています。
まだまだ続きますが、お付き合いのほどよろしくお願いします。
テオとギル大好き
続き楽しみにしています
BL大賞投票させてもらいました
ご感想ありがとうございます!
ちょっと人にフンスフンスし過ぎな主人公ですが、これからもよろしくお願い致します。
投票ありがとうございます!!
出来るだけ更新出来るように頑張ります!!
ご感想ありがとうございます♪
そうですね…。父親も息子に愛情はしっかりありましたし、魔術師として成長する息子を喜んでもいたのですが言葉足らずで…。
やはり周りや本人のコンプレックスは根強いですからね。
少しでも穏やかに最後を迎えさせたく、こうなりました。