246 / 247
238 推しと挙式前夜
しおりを挟むアッっっと言う間だった。
私とテオも本当にバタバタで、周りもそれ以上にバッタバタしてくれた。
ホセ兄様とフロル様も、ジャメル領の花の売り出しになるからと言って、何度も往復してくれたし、ジェレミー兄様とセルジオ様は、レモルトの土産品作りもレモルトで出来る様にと、指導して手配してくれた。
父様なんか、カーリンに乗って周りの警戒までしてくれたんだ。
私、本当に愛されてるな。
「ふぅ…。やっとこの時が来たんだね」
「ああ、お互い頑張ったな」
「ふふ。お疲れ様って言いたいけど、明日まで頑張ろうね!」
飾り付けも大体終わり、宿の手配も済んでいて、前日入りの方々も多い。
スノラリア王太子夫夫やラッカルの公爵家の方々には、貴族向け温泉宿の離れの一つをそれぞれに案内した。
スノラリアの王太子夫夫は流石に静かに感動して褒めてくれたけれど、ラッカルの二組はめちゃくちゃテンションが上がっていて面白かった。
…レモルトベイビーも流行るかもしれないな。
避暑地とかも、他国の貴族が利用する時は、その国の別荘を所有している貴族が、宿泊したい貴族に別荘を貸すスタイルが主流だし、貴族向けの宿は帝都に多いから、帝都近辺しか旅行しないって貴族が普通だった。
その為か、私が提案した宿の離れスタイルはとても好評だ。
温泉は豊富に湧き出ているのに、奥地で開拓されていなかった場所を、周りの生態系に影響が無い様にしっかり調べてから開拓し、結構な広さの土地を貴族向けの温泉宿にした。
平民向けは五階建ての良くある宿を複数建設して、一般的な、部屋は広くは無いが非日常感を出した部屋にし、金銭的余裕のある人は広い部屋に風呂付き、高級サービスと言った感じで付加価値も付けた。
これが平民には大ウケで、温泉って比較的大人が楽しむ娯楽だからか、金銭的余裕のある方々は周りの娯楽施設やお土産にもお金を落としてくれる。
もちろん家族向けの宿も好評で、それぞれ色の違う施設として運営している。
こうなると雇用も順調で、移住者が増えておりありがたい話だ。
近場に従業員用の住宅も建てたし、近隣から通いで働きたい人の為に、乗合馬車も複数便出してある。
「学園も順調だし、もう卒業生がいるんだよ」
「習得しやすく貴族が運営する学園で補償がされ、手に職となれば、喜んで学びに来るからな。トーレの冒険者希望も増えたのだろう?」
「そうなの!平民もだけど、貴族で家を継げずに婿入り先や嫁ぎ先もって感じの次男女、三男女も興味を示してね。剣の腕が良くても婿入りで政治が面倒って人も多いから、冒険者の道を選ぶって新しい選択をしている人も増えてきたんだよ~」
テオが元々冒険者として活躍していた事も功を奏し、どうせ後継じゃ無いからと腐りかけてる子息に、どうしたものかと悩んでいた親達も、国の為になるならと冒険者へ進む道を肯定する雰囲気が出来た。
剣の腕が良かったり、魔術師としても有能なのに、貴族としてはソリが合わないって人も多く居たみたいで、冒険者広い世界を見てみたいと志願する若者から中年の方も増えている。
「王都で腐るより、余程世の為になるもの。見学させて貰ったんだけど、こんなに腕の良い騎士が隠れてたんだと感動したよ。王都の貴族の四男だった方で、長兄が家を継いでからは他の貴族には婿入りせず、平民になっていたんだけど、腕が良いと評判だったの。平民だと王宮の騎士団には入りづらいから…。冒険者として名を揚げて欲しいな」
「うむ。確かに平民は王室や皇室の騎士団には入りづらいな。冒険者でそれなりのランクになれば、騎士として働きやすい。それに、同じ所に留まらぬとも職があるからな」
「ジャメル騎士団でも良さそうなくらい。でもジャメル騎士団って、他所だととても凄腕の集まりって思われてるみたいで…。一から鍛えられている騎士もいるんだけどなぁ」
まぁ、魔鳥をズバズバしてる話を聞いてたら、周りも怖がるんだろうけど。
そんなわけで、温泉も学園も順調だし、安心して結婚式が迎えられたのだ。
明日は、皇帝も出席する事も事前に告知してあるから、それはそれは観光客も多い。
告知は悩んだけど、しないとしないで問題があるからね。
おかげさまで平民向けの温泉宿も大盛況だし、貴族向けは私達の結婚式で貸し切ったから、満員御礼だ。
挙式を挙げる教会も、古くからレモルトにある場所をキレイにして利用する。
レモルトの人々にとって大事な所だから、歴史ある所はしっかり残して、広く作り変えた。
隙間風が厳しいと聞いていたので、そこら辺もしっかりして、神父やらの済む家も一新した。
贅沢は嫌うので、質素ながらも住みやすい住宅を作ると、教会の管理者である神父も大変喜んでくれた。
結婚式前夜まで、領地の話で盛り上がるなんてムードも無いけど、これが私のスタイルだと理解してくれているテオは、楽しそうに話を聞いてくれている。
「さて…。ギル」
二人で仲良く会話をしていたソファーから、テオが立ち上がる。
私もそれにつられて立ち上がると、テオは私の両手を優しく包む。
そしてそのままスッと片膝をつき、私の指先を自分の額に当てた。
「ギル・レモルト。私の最愛。あなたに、私の永遠の愛と忠誠を誓う」
「テオ…」
帝国式のプロポーズだ。
人前では無く、二人きりの時にすると聞いていたので、今がベストタイミングなんだろう。
ジンと感動しているとテオが立ち上がるので、今度は私が片膝をつき、テオの両手を額に当てる。
「テオドール・マラサッタ。私の最愛。私も、あなたに永遠の愛と忠誠を誓います」
ああ、私はこの人と結婚する。
やっと、正式に夫夫になる。
立ち上がりテオに抱擁を求めると、優しく、力強く抱きしめられる。
「テオ、愛してる」
「私もだ。ギル。愛している」
テオからのキスをうっとりと受け入れながら、私は明日の結婚式に心躍らせていた。
327
お気に入りに追加
1,282
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる