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237 推しと領地の発展
しおりを挟む「おお、ギル様。テオドール様。ようこそお越し下さいました」
結婚式準備のついでに学園へ足を運ぶと、学園の新しい責任者がにこやかに出迎えてくれる。
「コン殿、お体の調子はいかがですか?」
「ええ、おかげさまで大変好調です。私の様な者を責任者にして、よろしかったのでしょうか?」
「何ら問題ありませんよ。コン殿には大変助けられております」
学園の責任者は、サーディンの父親の前オレント伯爵のコンだ。
彼は魔力も高く、剣術の指導も出来るので今回は推薦させてもらった。
彼がこちらで働いてくれたら、サーディンが安心してくれるからね!!
今は帝都にいる次男のレンも、こちらに引き込めそうだし、ありがたいのだ。
「おお、ギル様!テオドール様。中々腕の良い教師も揃いました。生徒にも期待が出来ますよ」
「ドンガルバ。貴方が居れば、ギルドや冒険者にも話が通しやすいので助かる」
テオとドンガルバは楽しそうに談笑を始める。
そう何と、ドンガルバもこちらに来てくれたのだ。
元々レモルト領の領主の血筋だし、行く行くは彼に大きな役職を押し付けるつもりだから、その前段階だね。
「コン殿。新しい魔術師の卵が、挨拶に来たいと連絡が来ていたのだご、どうやら子息のレン殿に懸想していた者らしい。何やらきな臭くてな。適当な理由を付けて今回は断ってある。しっかり調べるべきかと思ってな。勝手な事をしたのだが…」
「いいえ、ありがとうございます。レンからも手紙が来ておりまして、その輩の件でしたので。何でも付き纏いが酷いとの事でしたので、お断り頂けて安心しました。こちらも既に皇室へ届けております」
おうおう、大変だなと思いつつ、二人の穏やかな空気に安心した。
ドンガルバは最初こそ警戒していたけど、コンがサンジカラにされていた事を知ると、暖かく迎えてくれた。
住む所も探してくれたし、中々相性が良いらしく今は良い友人の様だ。
「では、後はよろしく頼みます」
「はい。学園を見学されますか?」
「ええ、既に動いていると聞いているので、確認をしたくて。どうです?筋の良い方はいらっしゃいましたか?」
学園へ案内されながら、生徒の話を聞く。
ゼラン領からも来ているけど、レモルトやジャメルなど、トーレの平民も多く来ているそうだ。
既にレモルトにはギルドを併設し、ドンガルバがギルド長になって、冒険者としての登録も始まっている。
温泉街とは正反対のところに作ったので、賑やかでもあちらには害がない作りになっている。
コロッセオをモデルに、練習や決闘が出来る舞台を中央に作り、その周りをぐるりと観戦できる様にして、その奥に教室を作った。
この話を領民にした所、担い手の居ない伝統工芸品やご当地の食品などの後継者も育成出来ないかとの要望があった。
そのままレモルトに移住を希望する人限定にして募集を掛けた所、結構な数が集まり領民も喜んでくれたから、良い傾向だ。
「こちらは騎士、隣は魔術師ですね。その隣では、弓使いも新しく教える事になりました」
「へぇ!弓使いは中々こちらには居ないから貴重だね」
「そうだな。私も弓使いは中々お目に掛からない」
トーレやその付近も魔術や剣で戦うスタイルが一般的だが、エルフの国や遠い異国では弓使いが多く重宝されている。
大型の魔物が多く、遠くから攻撃したい時や、姿を見られたくない時に有効だからね。
「あ、エルフの方なんだね。それは弓が上手そうだ。あちらは工芸品かな?」
「ええ、レモルトで昔から盛んな木工細工の担い手の教室ですね。あの様に美しく磨き上げた木材は宝石の様で、繊細に組み込まれた細工は目を見張るものがあります」
組子細工で作られたアクセサリーは素朴だが華やかで、最近はデザインを一新し、宝石に手の届かない平民に大変人気になっているそうだ。
「アクセサリーが人気になってから、昔ながらの家具などもまた脚光を浴びております」
「うん。良い傾向だね。レモルトの産業に相応しい。あちらのレモンケーキも評判が良いと好評だよ」
「はい。昔ながらの方法でレモンと砂糖を漬け込んだモノは、レモルトぐらいでしか需要が無かったそうです。ですが、ギル様考案の柑橘のデザートやお酒が好評になってからは、砂糖漬けを利用した菓子が大変好評です」
うんうん!
自分の領地がどんどん成長している様で、嬉しい限りだよ。
「そうそう。氷職人も既に動いており、来年には天然の氷が楽しめる見込みだとか。今は魔術で作り出した氷を温泉街で提供しており、大変好評です。天然氷は付加価値を付けて売り出そう提案してあります」
「良かった。温泉街の名物ももう少し増やしてい行きたいから」
サーディンも優秀だけど、やはりコンも優秀だ。
すっかり体調の良くなったコンは、貴族出身の上品さやその容姿の良さも人気みたいだけど、今の所は独身を謳歌するみたい。
ドンガルバと良く飲みに行っているみたいだし、第二の人生として楽しんで貰えたらこちらも嬉しいね。
「そうだ。温泉の周りは蒸気が豊富だから、領民も蒸し料理に活用しているよね。レストランや屋台にも活用できそうじゃない?もちろん領民があまり使っていない所を活用して行きたい」
「ほう、蒸し料理ですか。私には馴染みがありませんが…」
コンがドンガルバを見ると、ドンガルバはそれは良いと喜んだ。
「ああ、レモルトでは良くあります。野菜や卵をカゴに入れて置いておくだけで蒸されて火が通り、とても美味い。良い目玉になるでしょう」
ちょっと工夫して、肉や魚を料理にしても良さそうだから、この計画も進めてもらおう。
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