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235 推しと今後の道筋の構築
しおりを挟むスノラリアの一行に挨拶をしてから、私は目当ての方々をチラリと探す。
「テオドール殿下、レモルト公爵。ご機嫌よう」
「こちらのレモン酒、レモルトの物とお聞きしました。素晴らしいですね」
次々と来る貴族達と、他愛も無い会話をしてまた次へと、本当に忙しい。
相手も次々と挨拶したいから、長く掴まならいのはありがたいけどさ。
「ギル、あちらがラッカルのマド公爵家の次期当主とされるゴラス殿だ」
「ええ、お隣がご夫人かな?ご挨拶しても?」
「もちろん」
私の目当ては、ラッカル三大公爵家であり、バランモス公爵の亡き妻の実家であるマド公爵家。
こちらも代替わりが代表として来ている。
服装は先程のガラスト家の方々と同じだが、こちらの髪型は角刈りだ…。
なんだろう、ラッカルの公爵家って中々パンチのある髪型じゃないと問題でもあるのだろうか。
先程のリニャンよりもゴツく、筋肉隆々って感じが伝わってくる。
顔付も端正だが強面で力強く、魔力の高さを思わせる黒髪と黒い瞳はラッカルでは高位程多いと聞く。
隣に立つ夫人も、センター分けの黒髪ショートで、瞳は糸目だが黒だ。
涼しげなクール系の美人さんで、それなりに鍛えられた体だろうが、線が細く見える。
「おお!これはこれは、テオドール殿下。お久しぶりですな」
「久しぶりだな、ゴラス殿。ご夫人もお元気そうで」
テオに気が付いたゴラスは、ニカっと笑う。
強面だが、人懐っこい感じの笑顔に、こう言うタイプかと覚えておく。
私に視線が移ったので、にこりと笑顔を見せておく。
「初めまして。私はテオドール殿下と婚約させて頂きました、レモルト公爵ギルと申します」
こちらから挨拶をすると、ゴラスは夫人の肩を抱き寄せて私を見る。
「おお!貴方が!失礼、挨拶が遅れました。ラッカルのマド公爵家のゴラスと申します。隣は妻のカロです」
「初めまして、レモルト公爵」
おお、ゴラスに肩を抱き寄せられた途端、フワッと周りに花が咲いたぞこの夫人!
旦那様が大好きなんだな…。
感情を正直に表に出すのも、ラッカルらしくて素敵だなと感心しつつ、どうやって本題に入ろうか…。
「この度の、叔父上の件。あなたが大変活躍なさってくれたと聞き及んでおります。父も大変感謝しておりました。スノラリアへも同行なさって下さるとか。我が公爵家一同、心よりお礼申し上げます」
おおっと話が早いタイプだった。
まぁ、色々あって既にラッカルには話が行ってるから、私達の接触の意味くらい理解しているか。
「私は私のやるべき事をしたまでですよ」
取り敢えずそう返しておく。
私とテオがラッカルへ向かう事も認知されているのなら、動きやすそうだ。
「ところで、ラッカルへ伺う前にお聞きしておきたい事があるのですが、よろしいですか?」
「ええ、どうぞ。テオドール殿下は何度もいらしていますが、ギルドのは初めてでしょうか?」
テオが冒険者だった事も知っているんだな。
「はい。私は国外にはマラサッタ帝国以外に訪問した事が無くて…。ラッカルでは、初めて入国する際に診断が必要とお聞きしたのですが」
そう、私が聞きたい事は、ラッカルの入国事情だ。
ラッカルはスイレン神を信仰する宗教大国であり、その中でも唯一と言われるスイレン神像を祀った教会がある。
昔の神父が大変信仰心が高く、そしてスイレン神の教えを守り尊敬を集めていた所、スイレン神より与えられたと言い伝えのある像である。
ま、言わばスイレン神教の聖地って訳だ。
聖地なのに世界の罪人が集められているのも凄い話なんだけど、罪人が集められるのは主に島だからね…。
その聖地にはそれはそれは、沢山の方々が入国希望をする訳です。
でも、テロリストが入ったらダメでしょ?
だから、初めて入国する人間には診断が義務付けられているのだ。
二回目以降は良いらしんだけど、私って特別じゃん?
転生してるし、賢者だし、トーレ王国としても大きい存在になってしまっているのは否めない訳よ。
診断て、丸裸にされちゃう感じだから、実は子供の頃にラッカルに入国させる事が多いの。
ガバガバじゃんって感じだけど、成人してからの入国での診断を嫌がる気持ちは分かるから、ラッカルはそれを容認してるんだよね。
でも、うちはジェレミー兄様の事や両親の事があって、ラッカルへ入国する機会が無かったんだ…。
「実は、ギルは幼少期にラッカルへ入国していないんだ」
「成る程…。成人してからの入国の診断は嫌がる方も多いですからね。しかし、診断をしなけれが入国は出来ない。うむ、そうですね」
診断は、入国時に使用する門にいる診断者の資格を持った魔術師が行う事が普通で、問題があったらそこで足止め。
すぐに上へ通報がお決まりらしい。
私、通報案件な気がするのだ。
「あの、私が口を挟んでも宜しいでしょうか?」
その時、カロがオズオズと話に入って来た。
「ええ、どうぞ」
何だろうと心の中で身構える。
「入国時の診断に付きましては、確か診断者が他国へ足を赴いて診断を行なっても問題は無いとなっております。私も診断者の資格を持っておりますので、私がレモルトへ足を赴きましょうか?」
おおおおナイスアイデア!!
入国前に診断を終わらせて来ましたって言えるって事だね?
しかし、その為に時期ラッカル三大公爵夫人を使って良いものか…。
「ふむ。それなら、是非お二人を私達の結婚式に招待させて欲しい」
「結婚式?ええ、それでしたら喜んで参加させて頂きます」
テオったら、ナイスアシスト!!
そうか、結婚式に呼んでしまえば良いんだ。
その時に、お祝いとして診断しておきましたって事にしましょうと、話は良い方向へ進んで行く。
次期マド公爵との繋がりも出来るし、お熱いお二人なら温泉宿も存分にしっぽり楽しみそうだし、ラッカルの貴族への宣伝にも繋がりそうだ。
頭の中で計算しつつ、私は安心しましたと微笑んでおく。
何とか裏からとかルートを探ろうとしていたけど、堂々と表から行けそうで安心したよ。
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