転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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234 推しと公爵初の交渉

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「それは、どう言う意味だ?」

レッドドラゴンリーフが一人分では無いと聞いたホイトルは、不思議そうな顔をしている。

だって、王太子妃様にだけ特別って訳にもいかないじゃん?

魔力拒否症に苦しむ患者は、世界に沢山いる訳だし、王族が不妊に使用したいなんて批判も起こりかねないもん。

「今回お渡しするモノを、是非貴国で魔力拒否症に苦しむ方に、治験として使用して頂きたいのです。スノラリア王国も、他国の薬を公に認める為には治験が必要でしょう。その為のお渡しだと考えて頂ければ。ミニム様はそのほんの一部を使用するだけですので、心を痛める必要もございませんでしょう?」

ニッコリ笑顔で言うと、ホイトルは驚いた顔をして、ミニムは安心した様に微笑んだ。

だって、国の為に身を引こうとしている美しい妃様と、その妃だけを愛したいと言う王子様だヨォ~?

好きだよ~そーゆーの!

それに、バランモス公爵の長子について、良い方向に進めばと言う思惑もある。

更に更に、私のテオに横恋慕する妹殿下に釘をギッチギチに刺して欲しい。

それらが一気に叶いそうな、千載一遇のチャンスなんだから、好印象爆発作戦で行くに決まってるじゃないか。

「そうそう。使用する際には、是非ホイトル殿下もご一緒にお願いします」

「…何故だ?」

ジニクル伯爵の告白もあったし、不妊はミニムだと分かってはいるんだろうけれど、パフォーマンスって大事だと思うんだよね。

「国民に普及させる前に、王太子夫夫がの様に試したと発表出来るでは無いですか」

「…!」

「お二人が試してみて、とアピールしてから治験に使用なされば、お二人が摂取していても誰も文句は言えないのでは。初めての薬は良い薬だとしても、害があったらと考える事は普通ですし、お二人が先に試したとなれば、国民もそれなら安全だろうと考えるでしょう」

「なるほど」

つまり、抜け駆けして使用しましたでは無く、安全の証明の為の使用だと堂々とアピールしてしまえば良いのだ。

「我が国では、レッドドラゴンリーフは魔力拒否症以外にも効能があると考えております。私も定期的に摂取しておりますが、疲れにくく活力が沸きます。魔力拒否症の方々への普及も第一ではございますが、需要がありましたら広げて行きたいと言うのも本音なのです。殿下も是非摂取して、ご感想を国民の方々に発表して頂きたいのです。どうでしょう。これは、私からの依頼だと考えて頂けましたら」

国民の為の安全の証明と、レッドドラゴンリーフの立役者である私からの依頼と言うも提案すると、ホイトルは満足そうに頷き、ジニクル伯爵は舌を巻いた。

「素晴らしい提案です。まさか、ここまで考えてくださるとは…」

「ギノ殿の、お兄様を思うお気持ちに、深く感銘を受けました。私も兄を思ってのレッドドラゴン探しでしたので…」

スノラリアにはまだ届いていない私の情報を、少し混ぜながら説明すると、お三方は感動した様だ。

「そうでしたか…。お辛かったでしょうに」

ミニムの言葉に、その苦労があったからこそ今の幸せがあるのだと告げると、そうですかと優しく微笑んでくれた。

う~ん、美しいし、やっぱりジェレミー兄様を彷彿とさせる!!

これは絶対お助けしなければと、私の中の兄様大好き感情が爆発していた。

「…テオドール殿下が心を決めた方なだけはある」

「ええ、彼との結婚を認めて頂く為に、ここ数年は必死に活動した。スノラリアにも大変世話になったな」

ホイトルとテオのやり取りに、妹殿下との婚約の話を無下にした事のシコリは無いのだと判断する。

ま、この王子も反対してるそうだから、話は早そうだな。

「ギル殿。この度の貴殿の心遣いに大変感服した、礼を言う」

「お役に立てまして、大変光栄です」

満足そうにミニムの腰を抱いて言うホイトルに、私は笑顔で返す。

ミニムは嬉しそうに、それでいて少し恥ずかしそうに微笑みながらホイトルを見上げ、ホイトルもとても優しい目でミニムを見ている。

良い。

良いよこのカップル!!

表情には出さず、脳裏に焼き付けていると、ところでとホイトルが話を変える。

「テオドール殿下。私の愚妹が貴殿の婚約を知り、暴走するやもしれぬ。今回もこちらへ参加を希望したのでキツく言い付けて来たのだが…。末の妹だからと甘やかす輩が多くてな。もし、接触があればいつでも知らせて欲しい。これ以上の我儘は見過ごせぬし、王族としても許し難い」

一転して苦々しい表情で語るホイトルに、お兄さんも大変だなと同情する。

聞けば、下の弟であり騎士団団長のドメニー殿下は特に妹に甘いそうで、ホイトルは頭を抱えているそうだ。

いや、そこは厳しくあれよドメニー…。

会った事は無いけど、熱血騎士らしく、妹の恋心も熱血魂で応援しているんだろうな。

ま、私からしたら邪魔者以外の何者でも無いんだけど!!

「殿下…。大変申し上げにくいのですが…」

「もしや…」

私が少し言いにくそうに、王女のお忍びを告げると、テオは驚いた顔をしてホイトル殿下は怒りの表情になる。

「ホイトル様。落ち着いてください…」

「ああ、すまないミニム。…ギノ。頼めるか」

ミニムの言葉に、ホイトルは怒りを治めつつジニクル伯爵に支持をすると、ジニクル伯爵は急いで会場を後にする。

「ギル殿。嫌な思いをさせてしまった。すぐに捕縛し、国へ送還する」

「ありがとうございます」

捕縛って大袈裟そうだけど、この人は本当にやりそうだな。

面白そうだから、捕まる所だけは見ていたいな~。

そんな事を考えつつ、私とテオはスノラリア御一行に挨拶をしてその場を後にする。

さて、他にも挨拶しておきたい人達がいるんだよね。
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