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232 推しと良き日の始まり
しおりを挟む「わぁ…。すごい…!!見て、テオ。あの花の浮飾り!今日が晴天で良かった~」
「ああ、素晴らしいな。圧巻だ」
花を風船の様に丸めて、空中に浮かべて飾り付けていたり、色の変わる布で作られたリボンのガーランド、国の紋章が描かれたバナーもズラリと空中に並べられている。
それらが、道を作っているから圧巻だ。
馬車停の列に並び、降り行く客人達の格好も華やかで、用意された絨毯を揃って歩いて行く姿も絵になる。
馬車の窓から外を見て、つい興奮する俺に返事をするテオを見ると、テオは景色では無く、愛おしい目で俺を見ていた。
「もう…。ね、テオ。あの花のアーチを見て」
テオの横に座り直し、テオの膝に手を置くと、テオの大きな手が重ねられる。
「美しいな。そしてとても大きい。…左右にあるあの花はジャメルの花祭りで見た様な気がするが」
「ふふ。そうなの、王太子の希望でジャメルが協力しているんだ。あの花、美しい緑色で、中央は黒色でしょう?王太子妃の色だと、大変熱望されたの」
美しい花々を飾ったアーチは、左右の柱に緑の珍しい花が飾られており、上へ行くにつれてカラフルな花が飾られている。
「ああ、珍しい色だが美しい。中央は黒いが光り輝いているな」
「ジャメルで新しく栽培したんだ。黒と金。黒と銀の花もあるんだよ、ホラ、あそこ」
俺の示す先には、黒と金、黒と銀の花びらが輝くバラがある。
父様とシェル様が魔術で栽培に成功させたのだ。
黒色ってお祝いっぽくない色だけど、金銀が混ざれば華やかでしょ?
俺の髪色に合わせて、父様が試行錯誤してくれていたんだって。
今回こうやって王室の祝事で発表して、箔を付けたみたい。
「ああ、素晴らしい。私とギルの色だ。私達の結婚式にも是非使用したい」
「ね!父様達が、俺…私達の為に沢山植えてくださってるから楽しみだね」
いけないいけない。
俺ももう公爵になるし、家族間では自称に俺って言ってたけど、私にするって決めたんだった。
そうです、私です!
テオはニヤリと笑い、チュッと軽くキスをした。
「まだまだだな」
「ふんだ。すぐに使いこなせるもん」
口を尖らすと、テオは嬉しそうに笑ってまたキスする。
「ん…」
ちょっと深いキスになるが、外には見えない様にしてあるからこの空間を楽しむ。
結婚が正式に決まってから、テオとはもうキスもエッチな事もたくさん楽しんでいるけど、テオは本当にスキンシップが好きなんだと知った。
今まで節度ある感じだったけど、髪や手を取ってキスをするのは当たり前だし、歩く時は必ず腰を抱いてるし、俺…じゃない、私の事を見つめている…。
いや、スキンシップも好きだけど、私の事が大好きなんだね!!
私も大好きだけど~!!
そんな惚気を考えていたら、馬車の従者スペースからノックの音がする。
「ギル様、テオドール様。ご到着でございます」
「ああ、ありがとう」
テオの頬を優しく摩り、ここまでと言うと、テオは色気たっぷりの目で私を見て頷いた。
もう!
夜まで我慢出来ないでしょ~!!
さてと気を引き締めて、私達は立ち上がる。
コンコンとノックされ、サーディンが扉を開ける。
テオが颯爽と降りると、感嘆の声が聞こえた。
「さ、ギル」
「ありがとう」
テオの差し出した手に自分の手を添えて、私も外に出る。
鋭い視線を感じるが、にこやかに余裕の表情を周りに振り撒きつつ、私とテオは絨毯の上を歩き出した。
ここではお付きの人達は横に用意された道を歩き、会場では壁にズラリと並ぶのだ。
『あの方が…』
『テオドール殿下だわ』
他国からの客人達も多いからか、好奇の目に晒されているが、気持ち良い位だ。
テオと私は揃いの黒地に銀の刺繍を華やかに施した上下の上に、トーレ王国の正装である揃いで作らせたマントを羽織っている。
どちらにも対になる様に刺繍をしているから、二人でいると良く映えるのだ。
「あちらで確認があるんだね」
「ああ、招待状を出す様だな」
マラサッタ帝国の殿下でも、列には並ぶ。
前には、ラッカルの正装と言われる膝まである首が詰められた白い上着に、白いスラックスの大きな男性が、同じ格好の小柄な男性と立っている。
…すごい黒髪アフロだ。
「おや、テオドール殿下ではございませんか。お久しぶりです」
「おお、リニャン殿ではありませんか。久しぶりですね」
黒髪アフロがこちらに気付き、テオに挨拶をする。
すごい、アフロだ。
隣の男性もこちらを振り向くが、黒髪黒目の可愛らしい男性だ。
「失礼しました。私はラッカル、ガラスト公爵家長男のリニャンです。こちらは妻のブドゥです」
にこやかに私とテオに挨拶をしてくれるが、本当にアフロのパンチが強い。
「初めまして。ジャメル侯爵家三男。そして次期レモルト公爵になりますギルです」
「ああ!あなた様が!」
そうですあなた様です。
何だろうと思いつつも、笑顔で対応しておく。
ガラストって事は、ギルド長の親戚だね。
この人も、性欲が強いのだろうかと失礼な事を考えつつ、私達は列が進むのを待つ。
周りを見ると、新しい王になる王太子の結婚式だからか、他国の代表も世代交代側が多く来ている感じだ。
ふと視線を感じそちらを見ると、美しいファーを見に纏った大きな男性がいる。
…スノラリア関係かな。
テオをチラリと見ると、気が付いた様で私に小声で話しかける。
「スノラリアの王太子だ」
よしよし。
あちらから接触がありそうだ。
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