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227 推しと我が領地への帰還
しおりを挟む「お帰りなさいませ、ギル様。テオドール殿下」
俺とテオの新居である館に着くと、ズラリと使用人達が並んでお出迎えをしてくれる。
サーディンが先に手紙を出していた様で、俺とテオの結婚が早まった事を皆知っているみたい。
俺の名前を先に読んだからね。
テオは皇帝の弟ではあるけど、結婚後はトーレのレモルト公爵の夫と言う立場になる。
俺が公爵になるから、俺の方が立場が上になるのだ。
テオは、俺に気を使わせない様にと、随分と楽な地位になると喜んでいたけど、今後何かあったら自分の皇族の地位をフル活用してくれるだろうと分かってる。
そんな事があまり無いように、俺はもっともっと力を付けなくちゃね。
「ただいま。変わりは無い?」
「学園の建設もほぼ終わりに近付いていると報告が。その他もありますので、どうそ中へ」
新しい執事長のウルスが、俺達を中へ案内してくれる。
ウルスは、長年テオに仕えてきた元執事長サンフルとメイド長リンの息子だ。
メイド長は変わらないけれど、今後は息子であるウルスが執事長として切り盛りしてくれる。
公爵になるし、屋敷もそれなりに豪華にはしたけれど、俺の所の使用人は少数精鋭にしている。
変に他の貴族の爵位を継がない者達を、この屋敷に入れたくは無いからね。
「応接室に軽食を準備してあります」
「ありがとう。テオ、一息つこうか」
レモルトの新しい領主の屋敷は、豪華だがそれ程大きくはしなかった。
仕事の話をしたり、客人を迎える為の応接室と、メインダイニング。
子供が出来た時の事を考えて、子供部屋を三つと俺とテオの書斎に、主賓室。
遊戯室と図書室、お酒を楽しむための談話室や家族団欒を過ごす部屋くらいだ。
厨房、洗濯場、風呂などはもちろん完備してある。
使用人の部屋は隣に寮の様に建設したのだが、そのスタイルは珍しいと大変驚かれた。
古い屋敷は綺麗にリノベーションしたので、そちらは客人達を迎える屋敷に利用する。
それに、レモルトには魅力的な温泉宿を多数建設しているので、客人達の宿泊施設にも利用出来る。
「庭も随分とキレイに手入れしてくれたんだね」
「ああ、レモンの木を植えるとは驚いたが、良いな。あちらは桃か?リンゴも植えたと聞いたぞ」
「ジャメルは果物の木が多かったから。収穫の時期はジャムにして、皆に振る舞うんだ。収穫も楽しめるし、レモルトでも続けていきたいと思ったの」
背の高い父似肩車をして貰って、兄弟で果物を収穫したのを覚えている。
俺、凝った料理は出来ないけど、簡単なお菓子は作れるんだ。
母様が作ってくれていたレシピのノートを見て、ジャメルの料理長に教わったりしてたからね。
子供に、俺の作った味も覚えてもらいたいんだ。
三歳までしか一緒にいられなかった両親の思い出を、次の子供達にも伝えたいから…。
俺の話を、テオは優しい眼差しで聞いてくれている。
「そうだな…。ギル。私達は夫夫になる。私の家族の話も聞いて欲しい」
「もちろん」
と言っても、皇室の話だよね…?
他言無用の話もあるのだろうと、腹を括る。
「…私の兄弟の歳の離れ方に疑問を持った事もあるだろう?」
「ええと…。皇帝がテオの十歳位上で、下の弟殿下が十歳位下だものね…」
確か、元々の王妃が亡くなり、新しく変わっているとか習った気がするんだけど。
「兄上の母は、兄を産んですぐに亡くなった。父と母は政略結婚ではあったが、情は芽生えていたからな。すぐに亡くなり、父は大変憔悴したそうだ」
皇帝を産んで、すぐに亡くなったのか。
最初の王妃の話が少ないのは、結婚して出産を終え、すぐに亡くなったからだったんだね。
「私の母は、前の王妃に生き写しと言われるくらい良く似た、前王妃の弟だった」
姉弟で皇帝に嫁いだって事!?
聞けば、帝国内有数の公爵家の二人姉弟だったそうで、どちらもとても美しく聡明で、国母に相応しいとされていたそうだ。
息子まで嫁いだものだから爵位は皇室預かりになったんだとか。
「兄が九つの時に高熱を出し、生死の境を彷徨った事をきっかけに、他の子供を作る様にと周りからは進言があったのだ」
その時に、貴族達はこぞって娘息子を集めた顔見せの場を作ったそうだ。
その時、特に誰にも興味を示さなかった前皇帝は、テオの母親を見初めたんだと。
「充てがう様な輿入れだったそうだ。その時母は十六。その頃は皇族貴族はそのくらいで輿入れもあったからな…。そして私が産まれた」
前妻に良く似た幼妻は、順調に妊娠し出産となったのだが、思った他負担が大きかった為、出産後数日間、意識が戻らなかったそうだ。
「母は無事目を覚ましたが、周りは更に子作りを望んだ。父はその時、大激怒したのだ。自分の妻を二回も失う事になりそうだったのだから」
そりゃそうだよね。
お世継ぎや、もしもの時の子息は必要だって分かるけどさぁ。
前皇帝は、それはそれは二人目の王妃を溺愛したんだと。
見た目が美しいだけでなく、聡明な所は姉に良く似ていたそうだが、弟の方が明るく、家を継ぐ予定だった事もあり、政治についても積極的に意見を出したそうで、前皇帝はその姿に大変心惹かれて行ったんだって。
王妃も幸いにも姉に良く似ていた為、長子である現皇帝にも良く似ていて、仲の良かった姉の形見であると、大層愛情を掛けたんだそうだ。
「更に子供は望めないかと周りも諦めていたそうだが、転機が訪れた」
グリーンドラゴンが、帝国にやって来たのだ。
グリーンドラゴンリーフは滋養強壮にも効果があり、王妃はその後二人子を成した。
「だから、歳が離れているんだね」
「まぁ、最後まで仲睦まじい夫夫だったからな。母は良く言っていた。父は年上だが、とても可愛いのだと…。良い夫夫だったのだろう」
相手を可愛いって思い続けられる間柄だったんだね。
素敵だねと言うと、テオは照れながらも嬉しそうに笑った。
テオも可愛いもんね~!
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