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226 推しと俺の野望
しおりを挟む「ふぅ~。ごめんねテオ。思ったより時間が掛かっちゃったね」
馬車の中でうぅ~んと伸びをすると、テオは優しく横から抱き寄せる。
「いや、ラッカルとスノラリアへの訪問に向けての基盤を作るつもりだったが、それ以上の交渉が出来た。さすがギルだ」
俺達はあの後、もう少し詳しく話をしておきたいと言うゼラン伯爵に、俺の腹積りを少~しだけ教えておいた。
レモルトで開く予定の学園を帝国が参考に真似る事は良いのだが、出来ればレモルトの近場が良かったんだよね。
指導もしやすいし、連携も取りやすいし、お互いに切磋琢磨出来るし…。
何より利益をしっかり管理出来そうと思ったんだ。
帝都の近くだったら、結局帝都の貴族に利益がいっちゃいそうだし。
帝国やラッカル、スノラリアはそれなりに大きな国だし、冒険者も多く存在するんだけど、トーレはそうでも無いってのも理由だったりする。
帝国からの客人や商人との会話で、冒険者と言う職業を知ってはいたが、周りに冒険者を目指す者は殆ど見られなかった。
トーレには、魔物が住み付いたり、生まれて来るダンジョンが比較的少ない。
それも全部、ジャメル騎士団で事足りているからね!!
ジャメル騎士団があれば、トーレは安全って言われている様な国だから、冒険者の育成には力を入れて来なかったんだ。
だから俺は、薬草やレッドドラゴンリーフを探す為に帝国に情報を探りに行った時に、ゼランのギルドにとても驚いたの。
冒険者ってこんなにいるんだと。
人だかりが出来ていた掲示板の、依頼の数の多い事。
そして、良い金額の多い事。
俺はその時、冒険者を体験してみたいって強く思ったんだ。
薬草を探しつつ、ギルドの仕組みや冒険者の事を調べると、冒険者がもたらす利益に強い魅力を感じた。
冒険者は基本的に自由だと思われているけど、登録制だからしっかり国に属さねばならない。
絶対的忠誠って訳では無く、国に不利益をもたらしたり、国外で死亡したりしたら、すぐに身元が分かる様にって感じだね。
冒険者の仕事は、簡単な資材集めやら護衛やらから始まり、魔物の討伐や貴族に連れ出される相手役など様々だけど、国にしっかり登録されたそれなりのクラスになった冒険者は、国内外への出入りが比較的簡単になる。
低ランクだと難しいけど、高ランクなら外国の仕事だって受ける事が出来るのだ。
取り分は国によって違うが、大抵は八割が冒険者で二割をギルドが持って行く。
その二割をさらに分割し、半分は税金として国に納め、半分はギルドのある領地の収益になる。
ゼラン領はその収益で大きくなり、さらに冒険者を囲えるように環境を整えて行った。
俺は、レモルトに学園を作る事で冒険者を呼び寄せ、冒険者の仕事を平民達に広めたいと考えてる。
トーレ王国で一番の冒険者ギルドを作り上げ、トーレ出身の冒険者を多数輩出したい。
そして、国外からの利益をと考えたんだ。
「ギル様は、レモルトのみならずトーレ王国をも盛り立てたいのですね」
「ふふ。まあね。トーレは貧しい国では無いけれど、資源不足は否めない。人材と言う資源を育てられれば、国も安泰だと思っているんです」
ゼラン伯爵にはそう言う事にしておいたし、半分はそんな気持ちもあるけど、本音は違う。
俺がテオと夫夫になり、レモルト公爵としてレモルトを盛り上げれば、俺はトーレ国内でも有数の権力者になるだろう。
テオは帝国の皇帝の弟だし、俺が提案した観光名所としてのレモルトはすでに国内外で注目を浴びている。
そこに、トーレ最大の冒険者ギルドとなれば、利益は計り知れない。
そうなると、王室より利益を生むレモルトは、公国として独立する道が出来てくる。
もちろんそんな事はしないけど。
今の王室に不満は無いし、ジャメルが侯爵家として存在しているし、ジェレミー兄様がリーナイト公爵家に嫁いだトーレ王国から離れるつもりは無い。
俺は利益を作り出して、国にしっかり還元して王室を盛り立てる姿勢を貫こうと思っている。
それは、俺が好きに動く為だ。
俺は自由に世界を行き来したいし、家族と頻繁に会いたい。
友人達とお茶会を楽しみたいし、嫌な奴らを裏から潰して楽しみたい。
推しを見てフンスフンスしてたいし、領民に利益をしっかり還元して良い生活をして貰いたい。
つまり、やりたい事が多いのだ。
その為には資金が必要だし、権力も必要だと考えている。
資金を生み出すものは何かと考えた時、人材育成が地道だけど大きいと思ったんだよね。
ま、レモルトに冒険者ギルドと考えたのは、テオと結婚する事になったからってのも理由ではある。
だって、考えて?
テオって、マラサッタ帝国の皇帝弟殿下様なんだよ?
そのテオが、地位を捨てて(実際は弟殿下のままではあるけど)、領地まで交渉して婿入りしてくれるって。
帝国に比べたら小国の、最近侯爵家になったばかりの家の末の息子だよ、俺。
釣り合わないでしょー!?
俺の美しさと聡明さと魔力の強さと剣の腕前は釣り合っていても、家柄がって言ってくるヤツは絶対にいるの。
だから、その家柄を、自分の手でデカくしてやろうと決心したのだ。
「ふふ。私はギルに本当に愛されているな」
ゼラン伯爵には、国に利益を増やしたいとまでしか話していないけど、テオにはしっかり説明してある。
俺の為に三年、危険な任務の中を頑張ってくれ、プロポーズしてくれた世界一の男の気持ちに、俺は全力で答える義務があるのだ。
「結婚式も慌ただしくなるけど、頑張ろうね、旦那様」
俺がそう言って上目遣いで甘えると、テオは嬉しそうに笑う。
テオに似合うのは俺だけだって、俺の力で証明してみせるぞ!
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