転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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225 推しとお隣同士の協定

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「うーむ。こんなに美味しい話があって良いのだろうか…」

ゼラン伯爵ったら正直だね~。

確かに、かなり美味しい話だと思うよ?

でも、とは言ってないでしょう?

「ああ、もちろん無償だとは考えておりませんが。見ての通り、腕が良く気持ちの良い冒険者達ですが、やはり普段の口調やらが悪い者も多いですからね。だからと言って、一から一人一人にマナーを叩き込んでいては途方も無い…。その様な教育も期待出来るのでしょうか?」

ゼラン伯爵の言葉に、そんなお高く止まれるか、面倒だなんだと野次が飛ぶが、俺はニコリと笑顔で制しておく。

「ええ、当然です。皆さんには堅苦しいかもしれませんが、礼儀正しい話し方や上品な立ち振る舞いは、それだけで利益に繋がると知って頂きたいですね。格好つけている。お高く止まっている等と苦手意識があるかもしれませんが、自分を手段でもありますから」

庶民的な店で、堅苦しい接客や態度は嫌われるかもしれないけど、貴族は言わば高級店だ。

そこでの立ち振る舞いを身に付ければ、依頼を探すより、自分を売り出す事だって出来る。

冒険者として腕は立たないが、そうやって上手く貴族に取り入って儲かっている者もいるのだ。

もちろん、多くの冒険者からは嫌われたり妬まれているけど、それも賢い稼ぎ方だと俺は思うよ。

それでも、周りの冒険者達は面白くなさそうな顔をしているので、俺は続ける。

「冒険者として腕は無くとも、振る舞いの上手さで稼いでいる方もいらっしゃるでしょう?そこに冒険者としての腕が加わったら、それはそれは素晴らしい。引く手数多では無いですか。格好良くてオシャレでスマートな冒険者もそれは人気ですけれど、無骨で腕っぷしの良い粗暴な感じの冒険者が、マナーも振る舞いもその場その場でしっかりと使い分けて対応出来るとなったら、何よりも高値で需要があるでしょう」

チラリとムークを見ると、確かにと言う空気になる。

まぁ、ムークは周りに公表していないけど高位貴族の出身だし、マナーも立ち振る舞いも完璧なのは当たり前だけど。

それでも周りは、粗暴で強いギルド長だが、貴族や領主やらと対等に会話が出来るくらいのマナーは持っていると言うイメージを持っていて、尊敬を集めていたりするからね。

ムークは、俺の視線を受け止めて、ザラン伯爵と視線で会話をすると前に出る。

さすが、話が早いね。

「指導を受けるのは自由だろう。それでもマナーや礼儀、情勢や計算などの勉強は大変だが、それは自分の財産になる。どれだけ腕が良くても、せっかく採取してきたモノの価値を知らなければ、悪い商人に買い叩かれる。皆も経験があるのでは無いか?」

ムークの言葉に、確かにと言う空気が流れ始める。

「子供達にも、貴族や金持ち程の教育は与えられなくても、少しでも学ぶ機会が与えられるのなら、それは親にとってもチャンスじゃないか?せっかく魔力が高く生まれても、使いこなせなきゃ金にはならないだろ?魔術が使えれば任せられる依頼も増える。マナーや礼儀を身に付けられれば、更に高額な依頼だって任せられるし、貴族の紹介が無いと立ち入る事の出来ないダンジョンだって、挑戦が出来るんだ」

貴族管理で立ち入る事の出来ないダンジョンって、結構あるんだよね。

金銀財宝のみならず、価値あるモノが眠っている可能性があるから領主が管理していたり、そう言ったモノが好きな貴族は、そのダンジョンの権利を購入していたりするのだ。

基本的に、魔物が生まれ外に出て来る可能性のあるダンジョンは、冒険者や騎士達に出入りが許可されている。

自分の腕を上げる為の、訓練施設みたいなモノなのだ。

貴族が管理している所は、定期的に貴族がお金を払って魔物討伐の依頼を出す。

礼儀やマナーが必要な理由は、管理している貴族が同行する事が多いからだ。

ダンジョンも好きだし、中のお宝も確認したいからね。

だから依頼金も多く、結構美味しい仕事なんだよね。

それを理解しているので、周りは納得し始めた。

「レモルトにもダンジョンは多いから、訓練には適していますしね。当分はこちらから乗り合い馬車を出して、通って頂きます。成果次第では、ゼランに同じ様に学園を建設出来ればとも考えております」

俺の言葉に一番驚いたのは、ゼラン伯爵だ。

そりゃ、こんな美味い話無いよね~。

でも、これにはちゃんと理由があるんだ。

「私からも話そう」

黙って見守っていてくれたテオが、前に出る。

さすが皇族。

空気が一気にピシッと引き締まる。

「レモルトの岩山でレッドドラゴンが暴れる危険性があった時。ギルがドラゴンの言葉を理解し、管理者となったおかげで我が帝国とトーレ王国の壊滅は免れた」

レッドドラゴンが難産で最悪の結果になった場合、残されたドラゴンが発狂するかもしれなかった話は、しっかり帝国内やトーレにも広がった様で、皆静かに頷きながら聞いている。

「皇帝は、ギルに大変感謝している。今回の学園の話も大変評価しており、レモルトで良い結果が出れば、帝国にも似た様な学園をと考えているのだ。ギルの言う通り、ゼランなら冒険者の拠点として場所も優れている。良い冒険者は、良い人材になり、国にとっても大きな利益になる。国外へ連れて行く事も出来るからな。貴族や商人、騎士や魔術師の育成も大事だが、冒険者の育成にもしっかり力を入れていきたいとの事だ」

そう、皇帝は冒険者を国内外の場所へ派遣したいと考えているのだ。

国外にもダンジョンはあるし、そちらで国を代表して名を挙げれば、国益に繋がる。

強い冒険者は、国にとって貿易の一つになるのだ。

騎士との違いは、やはり自由さ。

騎士って、基本的に城や領地に属するからね。

『国外…。スノラリアのダンジョンはそれは凄いそうだ』

『ああ、俺も聞いた事があるぜ!…そうか、夢があるな』

前向きにな空気になってきたね。

驚いて固まっているゼラン伯爵に、にっこりと笑顔を向ける。

別に、ゼラン領で無くても良かったんだろうけど、せっかくの機会だからね。

それに、俺にも大きな利益になりそうだから、ここは一つ協力体制になってもらいたい。

ゼラン伯爵は、やはりもう少しお話をと、俺とテオを再びギルド室へ案内するのだった。



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