転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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223 推しとゼランの少年

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「さて、そろそろレモルトへ向かおう。邪魔をしたな」

一通り話を終え、今後のやり取りの約束をして、俺とテオはギルド長の部屋を出る。

『あ、やべ』

『押すなよ!!』

廊下の先で、ドタンと人が倒れる音がして、テオと顔を見合わせて苦笑する。

野次馬だろう。

「おいおい。失礼だろうが。それにママルにあまり迷惑を掛けるな」

「「はーいっ!!」」

ムークがズカズカと出て行くと、若い男達の声で返事がある。

冒険者も増えて来たみたいだし、若い子も増えた様だ。

「礼儀を全てに叩き込むのは難しくて…。申し訳無い」

「いえ、私も若い頃はあの様なモノでしたよ」

ゼラン伯爵にそう言うと、テオはそんな事は無かったぞと言う。

いやいや生意気なガキだったよ~?

ま、マナーやら佇まいが優雅過ぎたのは隠せて無かったけどね。

「…あの頃は東や洞窟の開拓に明け暮れておりましたので、こちらはムークに任せきりでしたが。ギル様の噂は私の耳にも入っていましたよ」

「ふふふ。生意気な子供だと?」

「いえ、生意気…とは言われていましたが、若いのに礼儀正しい為、貴族に関する依頼も受けられそうだと」

あら~評価して頂いていたんですね。

まさしく貴族だったんで、その評価は当たってましたが。

「レッドドラゴンの話と貴方の正体を聞いて、驚きましたよ。私も人の事を言えませんが、貴族の息子が野山を駆け巡って過酷な依頼をこなすのは、中々根性が要りますから。それが、まだ学園に通う学生では無いですか。こちらに来る覚悟が違ったのだと感心しました」

「覚悟…。そうですね。あの時は兄を助けられるなら、どれくらい辛くても耐えて見せる覚悟はありましたね」

若気の至りってヤツだったな。

今は無茶したら家族に泣かれちゃいそうだし、怒られそうだから、あれ程の無茶は難しいけど。

ぶっちゃけると、成績が良かったから、学園に居ないといけない時もこっそり免除してもらってたんだよね。

授業をパス出来ても、登園はしないといけない決まりだったけど、ナートラ先生が自分の部屋で研究をさせていると言って、俺に時間を作ってくれていたんだ。

本当に、色んな人に助けられて来たなと改めて思った。

「あら、お帰りかしら?」

「ええ。忙しい中お邪魔しました。また遊びに来ます」

ママルに挨拶をしていると、おずおずと一人の少年が前に出て来る。

何だろうとその少年を見ると、また可愛らしい子だ。

ふわふわした黒髪と青い目をしており、ソバカスがチャームポイントの可愛らしい十代前半位の少年だ。

「あ、あの…」

おっと、俺に用事かな?

俺を見つめているけど、礼儀として俺が直接会話するのは避けるべきか…。

そこに、サッとムークが割って入ってくれる。

「何だチピ。どうした?そう言えば最近、兄ちゃんはどうした?」

ムークの言葉に、チピと呼ばれた少年は泣きそうな顔になった。

おや、これは何かあるね。

「どうしたのチピ。ムークの顔が怖いのはいつもの事よ?トコルに何かあったの?」

ママルも助け舟を出す。

チピと呼ばれた少年は、去年に両親を揃って亡くしており、兄弟でこちらのギルドで雑用をして何とか暮らしていると言う。

チピは十二歳で、トコルは十六歳。

まだまだ、子供だと言うのに、親族もおらず二人で支え合って暮らしていると聞き、胸が痛む。

もちろんこちらにも孤児院はあるのだが、大抵は十五歳までしか面倒を見ない。

平民で十六歳なら、一人前として働けると考えられているからだ。

そして兄弟のうち一人が十六歳以上なら、下の面倒も見れるだろうと言われるのだ。

「兄弟揃って計算が得意で、こちらでもスズムの手伝いをしているんです。…そうだな、トコルの姿を見ないな。体調が悪いのか?それとも、ギルドの依頼で遠くに出ているのか?」

スズムとは、スズム爺と呼ばれるギルドの会計を担っているおじいちゃんだ。

高齢だが頭が良く、ムークも大変信頼を置いている職員の一人だね。

「…兄ちゃん。病気になって…。あの、薬を買いたくて…」

「何だって!?薬…」

その時、ムークも俺も気が付いた。

ギルドにだって薬は販売している。

それなのに、俺を頼ろうとしていると言う事は…。

「まさか、後天性の魔力拒否症か?」

ムークの言葉に、顔には出さないがブワッと背筋に冷たいモノが走った。

後天性の魔力拒否症の進行は、想像以上に早いはず。

平民で、高価な薬を手に出来ない状態なら尚更だ。

だが、今俺がここで手を差し伸べるのは正解なのか…。

いや、今まで好き勝手してきて、ここで悩むのはギルらしくないな!!

「…ムーク。ギルドに依頼を出したいのだが」

「依頼ですか?」

こんな時に?

周りもそんな空気になったけれど、俺は気にしない。

「ええ。こちらにレッドドラゴンリーフがあります。とりあえず一週間分ですね」

「!!」

一週間分でも、平民の平均月収の三分の二はする。

周りは息を呑んで、俺が何を言い出すのかを待っていた。

「この薬を、一週間しっかり少年の兄の元へ届けてください。腕があり、信頼の置ける方…。そうですね、Bランク以上が好ましいでしょう。そして、しっかりと薬を摂取させ、体調の変化を欲しいのです。後天性の魔力拒否症の治験者はいないので。…金貨四枚です」

その金額に周りは驚くが、それだけ価値のある高価なモノの運搬だからね。

このまま少年が持って帰っても、悪いヤツが奪って売ってしまう可能性だってある。

それに、後天性の魔力拒否症の治験資料が手に入る機会だから、決して高くは無い。

「よろしいのですか?」

そこに、ゼラン伯爵が会話に入ってくる。

簡単に平民に手を差し伸べるのは、今後公爵として生きていく俺には、良い判断では無いのかもしれないけど。

大丈夫。

俺は俺にとって有益な事を、しっかり考えているんだから。








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